9月の献立|和食で夏の疲れを整える基本の12献立【調理師監修】
「今日の献立、また浮かばない…」9月は夏の疲れが残ったまま、季節は秋へと切り替わっていく悩ましい時期です。
私は調理師として25年、この時期は「重い味にいきなり振り切らない」ことが献立の鍵だと感じてきました。月前半は胃腸に優しく、後半は秋刀魚や戻り鰹で秋本番へ。そのまま使える、基本の12献立を、プロの設計術とあわせてご紹介します。
この記事でわかること
9月の和食献立は「月単位の強度設計」で組むとうまくいきます。月前半は胃腸に優しく、後半は秋刀魚や戻り鰹で脂を楽しむ、という考え方です。
・週3日分×4週=基本の12献立
・9月の旬食材の選び方
・9月の行事食の献立
・プロが実践する献立設計
9月の献立を和食で組む前に知っておきたい「体の状態」

夏の疲れ・弱った胃腸には「月初は優しい献立」から入る
月初は、消化への配慮に加えて、ビタミンB1や酸味・香味で食欲を呼び戻すことも意識した献立にすると良いスタートが切れます。
9月に入ってすぐの献立は、いきなり秋らしさを狙わない方がうまくいきます。理由は単純で、体はまだ8月の暑さを引きずったままだからです。
冷たいものを摂り続けた胃腸は、思っている以上に疲れていますし、食欲そのものが落ちていることも多いんですよね。月初は、消化に負担をかけにくい魚介類を軸にしつつ、ビタミンB1(豚肉など)や酸味・香味野菜(紫蘇・酢など)で食欲を呼び戻す工夫を組み合わせるのが私のやり方です。
具体的には、鰈(かれい)の煮つけのような消化に優しい魚料理と、豚しゃぶサラダに紫蘇ドレッシングを合わせるような、疲労回復と食欲増進を両立させる組み合わせです。脂の強い食材や濃い味つけはまだ主役にせず、酸味や香味で軽やかにまとめるイメージです。

正直、疲れた胃に秋の濃い味をいきなりぶつけると、箸が止まるお客さんをプロの現場でも何度も見てきました。消化への配慮と、食欲を呼び戻す工夫、この両方を意識するのが月初のコツなんですよね。
残暑から秋へ、体はまだ夏。いきなり重い味に振り切らない
体感がまだ「夏」のうちは、味つけも夏の延長でいい。カレンダー通りに急いで秋の濃い味へ切り替えないことが、この時期の献立のコツです。
「もう9月だから」と、こってりした煮込みや秋らしい濃い味つけを急に増やして、かえって箸が進まなかった経験はありませんか?「9月=秋」というカレンダー上の感覚と、実際の体調にはズレがあるんです。
残暑の厳しい年ほど、この切り替えは慎重に行うべきだと私は考えています。気温が下がりきらないうちに脂の強い魚を主菜に据えると、食欲が追いつかない献立になりがちだからです。
たとえば秋刀魚は9月に入ってすぐの時期はまだ脂がそこまで乗っていないことが多く、塩焼きでさっぱり食べるのに向いています。蒲焼きのような濃い味つけは、下旬以降、脂の乗りを見ながら判断する方が失敗しません。

私自身、毎年「そろそろ秋の献立を」と気合を入れすぎて、家族に「まだ早いよ」と言われることがあります(笑)。体の声のほうが、カレンダーより正直なんですよね。
台風・長雨シーズンは日持ちする根菜・乾物が頼りになる
台風・長雨シーズンは、根菜と乾物を「保険」として常備しておくと安心です。生鮮食材だけに頼らない献立が、この時期は特に効いてきます。
9月はもうひとつ、気候面での注意点があります。台風や長雨で買い物に行きづらい日が増えることです。
こうした時期は、生鮮食材だけに頼った献立だと、天候次第で買い出し計画が崩れてしまいます。里芋や大根、人参といった根菜、それに乾物(干し椎茸・切り干し大根・高野豆腐など)を常備しておくと、荒天の日でも献立に困りません。
根菜は多めに購入して煮っころがしや筑前煮にしておけば、2〜3日は献立の主菜・副菜として使い回せます。乾物は水で戻すだけで一品になるので、買い出しに行けない日の最終手段としても優秀です。

現場でも、台風で仕入れが止まると根菜と乾物に本当に助けられます。生ものに頼りきらない献立は、家庭でも同じように効いてくれるはずです。
9月の旬の食材と、調理師の選び方・使い方
9月の旬の魚|秋刀魚は前半も下旬も塩焼き、脂の乗りで満足感が変わる
秋刀魚は前半も下旬も塩焼きが基本。ただし脂の乗り方がまったく違うので、同じ調理法でも満足感は別物になります。
秋刀魚は、前半も下旬も塩焼きが一番だと私は考えています。ここではもう一歩踏み込んで、店頭での選び方まで解説します。
秋刀魚の脂の乗りは、見た目でかなり判断できます。私が店頭でチェックしているポイントは次の3つです。
- 目が澄んでいて、濁っていないもの
- 腹がふっくらと張っていて、へこんでいないもの
- 口先がほんのり黄色みを帯びているもの(脂が乗ってきているサイン)
前半はまだ脂が軽いので、すだちや大根おろしを添えて、さっぱりと食べるのに向いています。下旬になって脂がしっかり乗ってくると、同じ塩焼きでも身から溢れる脂の甘みそのものがごちそうになります。無理に濃いタレで飾る必要がないくらい、素材の力だけで満足できるようになるんですよね。

脂の乗った秋刀魚に濃いタレを合わせると、実はくどく感じることもあります。シンプルな塩焼きの方が、脂の質の良さがちゃんと伝わるものなんですよね。
9月の旬野菜|なす・きのこ・里芋をプロはこう扱う

なすは揚げ浸しで油っぽさを回避、きのこは加熱控えめ&だしも薄めに、里芋は下茹でしてぬめりを軽く落とす。この3つのひと手間で、9月の野菜はぐっと美味しく仕上がります。
9月の主役級の野菜といえば、なす・きのこ・里芋の3つです。それぞれに扱い方の癖があるので、順番に見ていきましょう。
なすは油との相性が抜群な野菜ですが、素揚げや炒め物ばかりだと同じ週の献立で油っぽさが重なりがちです。揚げ浸しにして冷やしておけば、油を使いつつも後味はさっぱりとまとまります。
きのこ(しめじ・えのき・エリンギなど)は、加熱しすぎると香りも食感も損なわれてしまいます。うま味がもともと強い食材なので、だしはむしろ控えめにして、きのこ自体の風味を主役にするくらいがちょうどいいんです。
里芋は下茹でしてぬめりを軽く落としてから煮ると、味の含みが格段に良くなります。ぬめりを全部取ろうとしなくて大丈夫です。煮っころがしにするなら、この一手間だけ覚えておいてください。

きのこは意外と「だしを効かせすぎ」な家庭が多い印象です。うま味の主張が強い食材ほど、脇役に徹してもらうくらいがちょうどいいんですよね。
白身魚・豆腐から入り、戻り鰹は月後半に|脂の「強度設計」

9月の献立は「白身魚・豆腐→秋刀魚の軽い脂→戻り鰹・脂の乗った秋刀魚」という右肩上がりの脂の強度設計が背骨。
先ほど「月初は白身魚や豆腐から」とお伝えしましたが、これは9月まるごとの献立を貫く「強度設計」の入り口にすぎません。ここで全体像を整理しておきます。
月初は鰈や鯵といった脂の少ない白身魚、豆腐を中心に。中旬にかけて秋刀魚の塩焼きのような軽い脂を織り交ぜ、月後半で戻り鰹や、脂がしっかり乗った秋刀魚の塩焼きといった脂の強い食材に移っていく。この右肩上がりの流れが、9月の献立の背骨だと私は考えています。
戻り鰹(かつおが北から南下する時期に獲れる、脂がしっかり乗った個体)は、うまみも脂も濃厚な分、月初にいきなり出すと胃がもたれやすい食材です。月後半、体が少しずつ秋モードに慣れてきた頃に主菜として登場させると、ちょうど「待ってました」という満足感につながります。

この「右肩上がり」を意識するようになってから、月末に戻り鰹を出したときの家族の反応が全然違うんですよね。タイミングだけで満足度が変わるのを実感します。
生姜・みょうが・大葉|薬味で食欲を戻す

生姜・みょうが・大葉は、香りで食欲を刺激してくれる頼れる脇役。戻り鰹のたたきや冷奴、素麺に添えるだけで、献立全体の印象が軽くなります。
季節の変わり目で食欲が今ひとつのときは、薬味に頼るのが手っ取り早い解決策です。生姜・みょうが・大葉は、香りの成分が食欲を刺激してくれるので、こういう時期こそ積極的に使いたい脇役なんですよね。
特に戻り鰹のたたきには、これら3つの薬味をたっぷり添えるのが定番です。脂の強さを薬味の香りと酸味(ポン酢など)が受け止めてくれるので、後味が重くなりすぎません。
冷奴や素麺の薬味として少量添えるだけでも、献立全体の印象が軽くなります。

薬味は「ちょっと多いかな」ってくらい添えると案外ちょうどいい、というのが現場での実感です。脇役だからこそ、ケチらないのがコツですね。
【調理師の設計術】9月の和食献立を組む4つの軸
ここまでは月単位の「強度設計」の話でしたが、ここからは1回の献立、1週間の献立を組むときの実践的なコツを4つ紹介します。プロが無意識にやっていることを、言葉にして整理してみました。
味の重複を避ける(主菜が醤油なら副菜は味噌・塩に)

献立が単調に感じる最大の原因は、実は品数の少なさではなく「調味料の重複」です。主菜が醤油ベースの煮魚なら、副菜は味噌汁ではなく塩仕立ての汁物にする、というだけで食卓の印象がぐっと変わります。
理由はシンプルで、同じ調味料が続くと舌がその味に慣れてしまい、品数があっても単調に感じてしまうからです。私は献立を組むとき、まず主菜の味の系統(醤油・味噌・塩・酢)を決めてから、副菜と汁物を別の系統に振り分けるようにしています。
たとえば秋刀魚の塩焼き(塩)が主菜なら、副菜は里芋の煮っころがし(醤油・みりん)、汁物は豆腐と青菜の味噌汁、といった具合です。同じ週の中でも、焼き物ばかりが続かないよう調理法も含めて散らすと、なお良くなります。
味の系統を1品ずつ変える。これだけで、品数を増やさなくても献立の満足度は上がります。
火入れの緩急と作業動線(炒め物の隣は煮る副菜)
献立を組むときは、味だけでなく「火の使い方」も同時に考える必要があります。強火でバタバタ動く炒め物の隣に、また別の炒め物を持ってくると、キッチンが一気に忙しくなるからです。
私が現場で意識しているのは、主菜が強火・短時間の調理(炒め物・揚げ物)なら、副菜は弱火でじっくり煮るものを合わせる、という組み合わせです。副菜を煮ている間に主菜の下ごしらえや盛り付けができるので、キッチンの中の動きに無駄がなくなります。
たとえばなすの揚げ浸し(揚げてから漬け込むので手離れが良い)を副菜にしておけば、主菜の秋刀魚を焼いている間に漬け込みが進みます。逆に主菜も副菜も「焼きながら目を離せない」料理だと、どちらかが焦げるリスクが高まるんですよね。
味の設計と同じくらい、火加減の設計も献立を楽にする隠れた技術です。
だしの使い回しで仕込みを最小化する
家庭で献立を毎日考える上で一番の負担は、実は「だしを引く手間」だったりします。ここは仕込みを賢く圧縮できるポイントです。
主菜の煮汁と汁物のだしを、同じ出汁ベースから取り分けてしまえば、だしを引く回数そのものを減らせます。たとえば里芋の煮っころがし用に鰹だしを多めに引いておき、その一部を汁物の吸い地に回す、という段取りです。
これをやると、献立全体の味に一本の芯が通るというおまけもあります。バラバラのだしで作るより、むしろ味がまとまりやすいんです。
だしは「1回引いて使い切る」のではなく「多めに引いて振り分ける」。この発想の転換だけで、平日の献立はかなり楽になります。
秋は茶色くなりがち。彩り野菜を意識して差し込む
9月の食材は、なす・きのこ・里芋・秋刀魚の蒲焼きと、放っておくと茶色や焦げ茶色の料理ばかりになりがちです。味は美味しくても、食卓の見た目が単調になってしまうんですよね。
見た目の単調さは、実は食欲にも影響します。彩りが乏しい食卓は、無意識のうちに「重たい」「代わり映えしない」という印象を与えてしまうからです。
対策は難しくありません。オクラやパプリカ、いんげんといった緑や赤の野菜を、副菜や汁の実として1品差し込むだけで十分です。茶色い主菜の隣に、彩り野菜を使った小鉢を1品添える。それだけで食卓全体が華やぎます。
味の設計ができたら、最後に彩りを見直す。この一手間が、家庭の献立とプロの献立の差になります。
そのまま使える|9月の和食献立12選(週別・基本形)
ここからは、実際にそのまま使える基本の12献立です。1ヶ月分すべてを網羅するのではなく、週ごとの基本形を3日分ずつに絞りました。というのも、プロの現場でも1ヶ月を28通りのバラバラな献立で回すことはまずなく、軸になる数パターンに旬の食材を入れ替えて運用するのが実際のやり方だからです。ここまでお伝えした「強度設計」と「4つの軸」を反映しているので、そのまま真似していただいて大丈夫です。
第1週|夏の疲れをリセットする優しい献立

月初は、胃腸に負担をかけない献立で揃えます。味の系統もあえて散らしてあるので、そのまま組み合わせて使ってください。
Day1
- 主菜:鰈(かれい)の煮つけ(醤油系)
- 副菜:パプリカの酢漬け
- 汁物:すまし汁(昆布と鰹の合わせだし)
Day2
- 主菜:豚しゃぶサラダ(冷しゃぶ、紫蘇ドレッシング)
- 副菜:里芋の煮っころがし(前日のだしを取り分けて仕込みを圧縮)
- 汁物:あさりの味噌汁
Day3
- 主菜:鮭のホイル焼き(野菜と一緒に蒸し焼き)
- 副菜:ブロッコリーサラダ
- 汁物:なめこ汁
第2週|秋の食材を少しずつ|きのこ・なすを取り入れる

胃腸が落ち着いてきたら、なす・きのこを少しずつ増やしていきます。まだ主菜を重くしすぎないのがポイントです。
Day1
- 主菜:さばの味噌煮(味噌系)
- 副菜:なすの揚げ浸し(冷たい副菜にして油っぽさを重ねない)
- 汁物:きのこと豆腐のすまし汁(彩りにみつばを添える)
Day2
- 主菜:鶏の照り焼き(醤油だれ)
- 副菜:きのこの和え物(ポン酢で酸味を効かせる)
- 汁物:根菜たっぷりの味噌汁
Day3
- 主菜:なすと豚肉の味噌炒め(強火の炒め物)
- 副菜:かぼちゃの含め煮(弱火でじっくり、彩りも黄色を追加)
- 汁物:すまし汁
炒め物の日は副菜を煮物にする、という火入れの緩急をこの週から意識してみてください。
第3週|お月見・重陽の節句|行事を取り入れた献立

9月後半には十五夜・重陽の節句と、行事が続きます。行事食の詳しい由来や作り方は後の章でまとめて解説するので、ここでは献立の流れだけ押さえておきます。
Day1(重陽の節句)
- 主菜:栗ご飯
- 副菜:なすの煮びたし(茄子料理、無病息災を願う風習にちなんで)
- 行事:菊酒(菊の花びらを日本酒に浮かべたもの)
Day2(敬老の日)
- 主食:赤飯
- 主菜:海老と茸・季節野菜の天ぷら盛り合わせ
- 汁物:すまし汁
Day3(十五夜)
- 主菜:月見うどん(温かいだしに卵を落として)
- 副菜:里芋の煮っころがし
- 行事:月見団子(詳細は後述)
行事が続く週は、普段の献立を少し軽めにしておくと、行事の日の一品が引き立ちます。
ちなみに、この里芋のような「主役級」の食材ほど、スーパーでは意外と当たり外れがあります。気になる方は、記事の後半で紹介している坂ノ途中もチェックしてみてください。
初回限定:お野菜の定期宅配【坂ノ途中】第4週|脂を楽しむ|秋刀魚の塩焼き・戻り鰹で秋本番へ

いよいよ月後半、脂の乗った食材を主役に据える週です。ここまで段階を踏んできたからこそ、この重さが「ちょうどいい」と感じられるはずです。
Day1
- 主菜:秋刀魚の塩焼き
- 副菜:冬瓜の含め煮(だし塩、あっさりと魚に合わせる)
- 汁物:しじみ汁
Day2
- 主菜:戻り鰹のたたき(生姜・みょうが・大葉をたっぷりと)
- 副菜:きのこバター
- 汁物:豚汁(具沢山で栄養補給も兼ねる)
Day3
- 主菜:肉豆腐
- 副菜:小松菜のお浸し(だし塩、彩り緑でさっぱりと)
- 汁物:豆腐とあおさの味噌汁
月初の優しい味から、この週の脂の乗った献立まで。振り返ってみると、無理なく「秋の献立」にたどり着けているはずです。この12献立を基本形として、他の日は同じ考え方で旬の食材を入れ替えていけば、9月全体の献立にも自然と対応できます。
ちなみに、この12献立で使った里芋・なす・秋刀魚といった旬の食材、実はスーパーでの目利きが地味に難しかったりします。「ちゃんとした旬野菜を使いたい」という方には、坂ノ途中のお試しセットも選択肢の一つです。
9月の行事食|お月見・重陽の節句・秋のお彼岸の献立
先ほどの週別カレンダーで少し触れた行事について、ここでは由来と実際の作り方まで踏み込んで解説します。
十五夜・お月見の献立(里芋・団子で「芋名月」)

中秋の名月(十五夜)は、旧暦にもとづく行事のため、毎年日付が変わります。しかも必ずしも満月の日と一致するとは限らず、実際の満月とは数日ズレることも珍しくありません。その年の十五夜がいつかは、カレンダーなどで毎年確認しておくと安心です。
十五夜は別名「芋名月」とも呼ばれます。これは、稲作より前から行われていた里芋の収穫祭が由来とされ、月見団子より先に里芋をお供えする風習があったためです。
月見団子は、白玉粉と豆腐を1対1で混ぜて茹でると、時間が経っても硬くなりにくく、家庭でも作りやすいのでおすすめです。十五個お供えするのが正式とされていますが、家庭で楽しむだけなら数は気にしなくて大丈夫です。
献立としては、里芋の煮っころがしを主菜級に、軽めの秋刀魚の塩焼きと月見団子を添える。これだけで、十分に行事感のある食卓になります。

私が献立を組むときも、この由来にちなんで里芋の煮っころがしを主役級に据えることが多いですね。脇役にしておくにはもったいない一品なんですよ。
重陽の節句の料理(菊を使った長寿を願う一品)

重陽の節句は毎年9月9日で、五節句の中でも認知度が低めですが、菊の花を用いて長寿を願う行事です。中国から伝わった思想で、奇数(陽)が重なる日を節目とする考え方が由来とされています。
行事食は主に3つあります。ひとつは菊酒(食用菊の花びらを日本酒に浮かべたもの)で、菊の香りとともに邪気を払うとされてきました。お酒を飲まない家庭では、食用菊(観賞用の菊とは別に、苦味の少ない品種が食用として流通しています)を酢の物にしても、同じように香りを楽しめます。
もうひとつが栗ご飯です。重陽の節句は別名「栗の節句」とも呼ばれ、この時期から出回り始める栗を使った炊き込みご飯を合わせるのが定番になっています。
そしてもうひとつ、意外と知られていないのが茄子です。「重陽の節句になすを食べると中風(脳卒中)にならない」という言い伝えがあり、なすの煮びたしなどを添える地域もあります。
菊酒(または菊の酢の物)・栗ご飯・なすの一品、この3つがあれば重陽の節句らしい献立が整います。難しく考えすぎなくて大丈夫です。

うちでは菊酒は香りづけ程度に少量浮かべるだけで十分だと思っています。栗ご飯となすさえあれば、行事感は十分に出せますよ。
秋のお彼岸の献立(おはぎと精進の考え方)

秋分の日は毎年9月23日ごろで、その前後3日間を合わせた1週間が秋のお彼岸にあたります。秋分の日は国立天文台の算出にもとづいて前年に正式決定されるため、正確な日付はその年のカレンダーで確認しておくと安心です。
お彼岸といえばおはぎですが、春の「ぼたもち」と呼び名が違うだけで、実はほぼ同じ食べ物です。春に咲く牡丹(ぼたん)と秋に咲く萩(はぎ)、それぞれの花の時期にちなんで呼び名を使い分けているとされています。
お彼岸の献立は、本来は精進料理(肉・魚を使わず、野菜や豆類・穀物を中心に調える料理)の考え方にもとづくものです。とはいえ、現代の家庭で厳密に守る必要はなく、里芋やきのこ、根菜を主役にした煮物を1品加えるだけでも、お彼岸らしさは十分に出せます。
おはぎを1品用意し、普段の献立に精進の考え方を軽く取り入れる。この程度の意識で、無理なく行事を楽しめます。

うちでも、おはぎと根菜の煮物をもう1品足すくらいで十分だと思っています。精進料理を厳密に再現しようとしなくて大丈夫です。
献立は決まった。あとは「良い旬野菜をどう揃えるか」
スーパーの旬野菜選びで、家庭がつまずきやすい点

スーパーの旬野菜は、産地表示があっても栽培方法や鮮度までは分かりにくいのが実情。「なんとなく良さそうなもの」を選ぶしかないのが、家庭の正直な課題です。
献立が決まっても、実際に使う野菜の質がバラバラだと、仕上がりの満足度は変わってきます。ここで多くの家庭がつまずくのが、スーパーでの旬野菜選びなんですよね。
スーパーに並ぶ野菜は、大量流通に合わせて熟度や大きさを揃えるため、早採りされたものが混ざっていることも珍しくありません。産地表示はあっても、どんな栽培方法か、どれくらい鮮度が良いかまでは、パッケージからはなかなか読み取れないのが実情です。
私たちプロは市場や仕入れ先で実際に手に取って目利きできますが、家庭の買い物では毎回そこまでの手間をかけるのは現実的ではありません。特になすやきのこのように「香り」や「みずみずしさ」が味を左右する野菜ほど、この差が出やすいと感じています。

実際、プロでも「これは外れだったな」と感じる野菜に当たることがあります。家庭ならなおさら、運任せになってしまうのは仕方ないんですよね。
「ちゃんとした旬野菜」を手間なく使いたい人の選択肢|坂ノ途中

坂ノ途中は、新規就農者など環境負荷の小さい生産者から仕入れる野菜宅配サービス。時短よりも「ちゃんとした旬野菜を使いたい」というこだわり派に向いています。
こうした課題への一つの解決策が、野菜宅配サービス「坂ノ途中」です。新規就農者や、環境負荷の小さい農業に取り組む生産者と提携し、旬の野菜を定期的に届けるサービスで、大量流通ではなく個々の生産者の顔が見える仕入れをしている点が特徴です。
私自身、実際に旬野菜セットを取り寄せて使ってみたことがあります(実食レポートはこちらの記事に詳しくまとめています)。届く野菜の品目や量はその時々で変わるため、逆に「何を作ろうか」という発想が広がりやすいのが、使ってみて意外と良かった点でした。

献立を組む力があっても、そこに使う野菜の質にこだわりたくなるのが料理人の性なんですよね。時短よりも「ちゃんとした旬野菜を使いたい」という方に向いている選択肢だと思います。
まずはお試しセットで、9月の献立に旬野菜を取り入れてみる
いきなり定期便を始めるのはハードルが高い、という方には、お試しセットから始めるのが現実的です。実際に届く野菜を見てから、続けるかどうかを判断できます。
【坂ノ途中】旬野菜のお試しセットを見てみる
この記事の献立に、坂ノ途中の旬野菜を組み合わせるかどうかは、もちろん読者の皆さんの判断で構いません。ただ、9月の献立を「ちゃんとした野菜」で作りたいという方には、試してみる価値のある選択肢だとお伝えしておきます。

個人的には、まず1回試してみて「思ったより良かった」か「やっぱりいつもの八百屋さんでいいや」か、判断してもらえたらそれで十分だと思っています。
よくある質問
- Q良い旬野菜を選ぶコツはありますか?
- A
正直に言うと、栽培方法や収穫からの日数まで店頭で見分けるのは、プロでも簡単ではありません。産地表示や見た目である程度は判断できますが、確実性を求めるなら、生産者の顔が見える野菜宅配サービスを使うのも一つの方法です。坂ノ途中:お野菜・定期宅配
- Q9月の献立は洋食・中華を混ぜてもいい?
- A
もちろん問題ありません。この記事では和食中心の献立を軸にしていますが、毎日和食だけにこだわる必要はないんです。
たとえば行事食のない平日に、なすやきのこを使った洋風のパスタや中華炒めを挟むのも良いバランスの取り方だと思います。ただ、月初の「胃腸に優しい」時期だけは、油を多く使う洋食・中華は控えめにしておくのが無難です。
- Q一週間分だけ知りたい。どこを見ればいい?
- A
先ほどの週別カレンダーのうち、今の時期に近い週を1つだけ参考にしていただければ十分です。月初なら第1週、月末に近ければ第4週、という具合に選んでください。
行事の有無で選びたい場合は、第3週に十五夜・重陽の節句の献立をまとめてあります。
- Q9月に献立で気をつける食材の傷みは?
- A
9月は残暑が続くため、生ものや和え物を常温に長く置かないことが一つの目安になります。特に酢の物や和え物は、作ってから時間を置きすぎず、早めに食べきる方が安心です。
冷蔵庫での保存も、詰め込みすぎると庫内の温度が下がりにくくなるので、根菜や乾物をうまく組み合わせて生鮮食材の在庫を減らすのも一つの工夫です。心配な場合は、消費期限・賞味期限の表示や、農林水産省・厚生労働省が公開している食品の取り扱いに関する情報もあわせて確認してみてください。
- Q献立を毎日考えるのが大変。楽にするコツは?
- A
一番効くのは、この記事で紹介した「だしの使い回し」です。1回で多めにだしを引いて、主菜と汁物に振り分けるだけで、日々の仕込みの手間はかなり減ります。
もう一つは、週単位で「優しい味→濃い味」という強度の流れだけ決めておき、細かい品目はその時々の旬野菜に合わせて入れ替えることです。骨組みさえ決まっていれば、毎日ゼロから考える必要がなくなります。
まとめ
9月の献立は、月初は優しく、月末にかけて脂を楽しむ「強度設計」で組むとうまくいきます。味の重複回避・だしの使い回し・彩りの3つを意識するだけで、日々の仕込みもぐっと楽になるはずです。あとは、良い旬野菜をどう揃えるか。坂ノ途中のお試しセットも、選択肢の一つとして覗いてみてください。
現役の和食調理師/おかだ けんいち(調理歴25年以上)
和食の世界で25年以上。旬の食材や家庭でできる調理のコツを、やさしく、わかりやすくお届けしています。料理がもっと楽しく、おいしくなるきっかけになれば嬉しいです。
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