「豚もも肉を使ったら、パサパサで硬くなってしまった…」
——そんな経験はありませんか?
豚もも肉は、脂肪分が少なく高タンパクでヘルシーな赤身肉です。あっさりとした味わいで、冷しゃぶや炒め物など、健康を意識した献立作りに重宝する部位ですが、脂肪が少ない分、加熱しすぎるとパサついてしまいやすいという弱点もあります。
この記事では、和食調理師として25年以上の経験をもつ筆者が、豚もも肉の部位としての特徴、内モモ・外モモ・しんたまの違い、パサつかせずに美味しく仕上げる調理のコツ、栄養素までをわかりやすく解説します。脂っこいお肉が苦手な方や、ヘルシー志向の方はぜひ参考にしてください。
豚もも肉とは ~部位の解説~

豚もも肉は、豚のお尻から後ろ足にかけての部位です。豚一頭の中でも大きな割合を占める部位で、赤身が多く脂肪が少ないのが特徴。英語では “Ham” と呼ばれ、これは実は本場・欧米での「ハム」の語源にもなっています(詳しくは後述します)。
モモ肉の分類
モモ肉は、大きく次の3つに分けられます。
| 部位 | 特徴 |
|---|---|
| 内モモ (うちモモ) | きめが細かく、脂肪が少なく柔らかい |
| しんたま | モモの前側。内モモよりやや脂身がある柔らかい赤身 |
| 外モモ (そとモモ) | お尻に近い部分。内モモよりきめが粗く、歯ごたえがある |
スーパーなどでは「内モモ」「外モモ」の2つに大きく分けて売られていることが多く、しんたまは内モモに近いものとして扱われることもあります。出典:日本ハム株式会社|豚モモ肉のおいしさを知ろう、プレコフーズ|豚肉の部位:モモ

内モモは色が薄く柔らかいのでローストやたたきに、外モモは筋膜に覆われて色が濃くやや硬いので煮込みや細切れ・ミンチに向いています。パック売りのモモ肉を選ぶときは、色が薄く均一なものを選ぶと、内モモに近い柔らかい肉である可能性が高いです。
豚もも肉の特徴まとめ

肉質・味わいの特徴
豚もも肉は赤身の塊で脂肪が非常に少なく、高たんぱく・低脂肪。あっさりとした味わいで、脂っこさが苦手な方にも食べやすいのが最大の魅力です。赤色が薄い部位の方が柔らかいといわれ、内モモはその代表格です。
1頭からどれくらい取れる?
モモ肉は豚一頭の中でも特に大きな部位で、歩留まり(取れる量)が多いのが特徴です。そのため、ヒレやロースといった希少部位と比べると価格が手頃で、家計にやさしい部位としても人気があります。「コスパの良いヘルシー赤身肉」というのが、モモ肉の立ち位置です。

脂肪が少ない分、豚もも肉は「安くてヘルシー」という長所がある一方、加熱しすぎるとパサつきやすいという弱点があります。次の章で紹介する調理のコツを押さえれば、この弱点はしっかりカバーできます。
豚もも肉に向いている料理とおすすめの調理法

冷しゃぶ・しゃぶしゃぶでの使い方
豚もも肉は赤身が多く脂肪分が少ないため、あっさりとヘルシーに食べられるのが最大の特徴です。薄切りにしてさっと茹でる「冷しゃぶ」にすると、お肉本来のしっかりとした旨味を味わえます。レタスや水菜などの野菜をたっぷり敷いて、ポン酢でいただくのがおすすめです。
調理師として献立を考える際、モモ肉の冷しゃぶは重宝します。脂の乗った魚料理などボリュームのあるおかずと合わせたいとき、バラ肉だと重たく感じることがありますが、モモ肉なら胃もたれせず、さっぱりと最後まで美味しくいただけます。
とんかつ・ソテーでの使い方
ヒレやロースほど脂はのっていませんが、モモ肉でとんかつにすると、あっさりとした赤身の旨味を楽しめます。カロリーを抑えたいときにおすすめの選択肢です。
煮込み・加工品での使い方
外モモは筋があり歯ごたえがあるため、煮込み料理に向いています。じっくり煮ることで硬さが気にならなくなり、旨味がスープに溶け出します。また、モモ肉は「ハム」の原料としても代表的な部位で、骨付きのままハムに加工した「ボンレスハム」はモモ肉ならではの製法です。
パサつかせずに柔らかく仕上げるコツ
脂肪が少ないモモ肉は、加熱しすぎるとパサつきやすいのが弱点です。以下のポイントを押さえると、しっとり仕上げられます。
- 繊維を断つように切る
— 肉の繊維に対して直角に包丁を入れると、噛み切りやすくなり食感がやわらかく感じられます。 - 筋切りをする
— 赤身と脂肪の境目に切り込みを入れておくと、加熱時に肉が縮んで硬くなるのを防げます。 - 片栗粉や小麦粉でコーティングする
— 表面に薄く粉をまぶしてから焼くと、肉汁の流出を防ぎ、しっとり仕上がります。 - 塩麹やヨーグルトに漬け込む
— 酵素の働きでたんぱく質がやわらかくなり、パサつきを防げます。 - 高温で短時間、または低温でじっくり
— 厚切りは高温で表面を素早く焼き固める、ブロックは低温調理でじっくり火を入れるのが基本です。

モモ肉を美味しく仕上げる一番のコツは「火を通しすぎないこと」です。特に薄切り肉は、色が変わったらすぐに取り出すくらいの感覚で十分。余熱でも火は入るので、「まだ生かな?」と思うタイミングで火を止めるのがプロのやり方です。
豚もも肉が手に入らないときの代用部位

豚もも肉が手に入らない場合は、以下の部位で代用できます。
- ヒレ — モモよりもさらに脂肪が少なく柔らかい部位。よりヘルシーに仕上げたいときにおすすめですが、価格はモモより高めです。
- 肩ロース — モモよりも脂がのっていて旨味が強い部位。あっさりさより満足感を重視したいときに向いています。
用途によって、「ヘルシーさを重視するならヒレ」「コクや旨味を重視するなら肩ロース」と使い分けると失敗しません。
豚もも肉と他の部位との違い
| 部位 | 脂肪量 | 肉質 | 価格帯 | 向いている料理 |
|---|---|---|---|---|
| モモ | 少ない | 赤身中心 きめ細かい〜やや粗い | 手頃 | 冷しゃぶ ハム 煮込み |
| ヒレ | 非常に少ない | 最も柔らかい | やや高め | ヒレカツ ソテー |
| 肩ロース | 中〜やや多め | 赤身に適度な脂、噛み応えあり | 中程度 | チャーシュー カレー しょうが焼き |

ヘルシーさなら「ヒレ>モモ」、コクや旨味なら「肩ロース>モモ」という位置づけです。モモ肉は、この2つのちょうど中間で「ヘルシーさと使いやすさのバランスが良い部位」といえます。
豚もも肉の栄養素~食品成分表~
【大型種】(豚)モモ 皮下脂肪なし
| 栄養素 | ゆで | 焼き | 単位 |
|---|---|---|---|
| 廃棄率 | 0 | 0 | % |
| エネルギー | 185 | 186 | ㎉ |
| 水分 | 61.8 | 60.4 | g |
| タンパク質 | 28.9 | 30.2 | g |
| 脂質 | 8.1 | 7.6 | g |
| 食物繊維(総量) | – | – | g |
| 炭水化物 | 0.3 | 0.3 | g |
| ナトリウム | 27 | 58 | ㎎ |
| カリウム | 200 | 450 | ㎎ |
| カルシウム | 5 | 5 | ㎎ |
| マグネシウム | 24 | 33 | ㎎ |
| リン | 190 | 270 | ㎎ |
| 鉄 | 0.9 | 1.0 | ㎎ |
| 亜鉛 | 3.0 | 3.1 | ㎎ |
| 銅 | 0.12 | 0.11 | ㎎ |
| マンガン | 0.01 | 0.02 | ㎎ |
| ヨウ素 | – | – | ㎍ |
| セレン | 34 | 31 | ㎍ |
| クロム | – | 1 | ㎍ |
| モリブデン | 1 | 1 | ㎍ |
| ビタミンA(レチノール) | 1 | 1 | ㎍ |
| ビタミンA(β-カロテン) | – | – | ㎍ |
| ビタミンD | 0.1 | 0.1 | ㎍ |
| ビタミンE(トコフェロールα) | – | – | ㎎ |
| ビタミンK | 3 | 3 | ㎍ |
| ビタミンB1 | 0.82 | 1.19 | ㎎ |
| ビタミンB2 | 0.23 | 0.28 | ㎎ |
| ナイアシン | 5.8 | 9.4 | ㎎ |
| ビタミンB6 | 0.38 | 0.43 | ㎎ |
| ビタミンB12 | 0.4 | 0.5 | ㎍ |
| 葉酸 | 2 | 1 | ㎍ |
| パントテン酸 | 0.74 | 1.07 | ㎎ |
| ビオチン | 3.4 | 3.8 | ㎍ |
| ビタミンC | 1 | 1 | ㎎ |
栄養素の特徴
豚もも肉は高たんぱく・低脂質が最大の特徴です。100gあたりの脂質はゆでで8.1g、焼きで7.6gと、豚肉の部位の中でもヒレに次いで低いレベルです。一方でたんぱく質は28〜30g程度としっかり摂れるため、筋肉づくりやダイエット中の食事にも向いています。
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豚もも肉の英語・漢字表記まとめ
| 表記 | 内容 |
|---|---|
| 漢字表記 | 豚もも肉 |
| 英語表記(一般) | Ham(ハム) Pork Leg(ポークレッグ) |
| 英語表記(部位別) | Inside(内モモ) Outside(外モモ) Knuckle(しんたま) |
豚もも肉は英語で “Ham” と呼ばれます。実は、本場・欧米で「ハム」というと、伝統的にはこのモモ肉を骨付きのまま加工した保存食を指していました。日本でよく見る「ロースハム」はロース肉を使った日本独自の製法で、大正時代にドイツ人技師が伝えたものが広まったとされています。「ボンレスハム」の「ボンレス」は “Boneless”(骨なし)の意味で、骨付きのモモ肉のハムから骨を抜いたものを指します。

「ハム=モモ肉が本場の定義」という豆知識は、意外と知られていません。スーパーでハムを選ぶときに「これはロースハムかな、ボンレスハムかな」と原料部位を意識すると、また違った視点で買い物が楽しめますよ。
まとめ
豚もも肉は、豚一頭の中でも大きな割合を占める、脂肪が少なく高たんぱくな赤身肉です。内モモ・しんたま・外モモに分かれ、内モモは柔らかくロースト向き、外モモはやや硬めで煮込みに向いています。
脂肪が少ない分パサつきやすいのが弱点ですが、繊維を断つ切り方や筋切り、粉のコーティング、塩麹漬けなどのひと手間で、しっとり美味しく仕上げられます。ヘルシー志向の方や、コスパの良い赤身肉を探している方は、ぜひモモ肉を活用してみてください。
脂肪分が少なく、高タンパクでヘルシーな赤身肉である「豚モモ肉」。あっさりと食べられるため、冷しゃぶやさっぱりとした炒め物など、胃に優しく健康を意識した献立作りに重宝する部位です。
この記事では、プロの調理師が豚モモ肉の持つ特徴や、赤身の旨味を活かすための適合料理、栄養素について徹底解説します。脂っこいお肉が苦手な方や、ヘルシー志向の方はぜひ献立の参考にしてください。
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現役の和食調理師/おかだ けんいち(調理歴25年以上)
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