「ごはんは左、みそ汁は右」と言われますが、これは今でも基本の和食マナーです。
左に主食(ごはん)右に汁物(みそ汁)を置くのが正式な配膳とされています。
ただし、現代の食卓や弁当では必ずしもこの並びではない場合もあります。
たとえばスーパーの弁当ではごはんが右にあることも多く、理由は「ラベルの配置」や「見た目のバランス」。また、左利きの方にとっては逆のほうが食べやすいという事情もあります。
この記事では、
✅ なぜ「ごはん左・みそ汁右」が基本なのか
✅ 現代ではなぜ逆の並びが増えているのか
✅ 食卓で大切にしたい考え方
現役和食調理師が歴史と文化の視点からやさしく解説します。
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「ごはんは左、みそ汁は右」は本当?

「ごはんは左、みそ汁は右」は、和食の正式な配膳マナーとして今も基本とされています。
主食であるごはんを左に、汁物を右に置くのが「本膳料理」や「一汁三菜」の伝統的な並べ方です。
この配置には以下のような理由があります。
「左は上座(かみざ)」とされる
右利きの人が食べやすい位置であること
文化的・実用的な意味が込められています。
しかし、近年では弁当や家庭の食卓で「ごはんが右」「みそ汁が左」という配置も多く見られます。見た目のバランスやラベル位置、調理や盛り付けの都合など、現代の生活スタイルに合わせた変化もあるのです。
つまり、
✅ 正式な和食マナーでは「ごはん左・みそ汁右」が基本
✅生活シーンによっては例外もOK
というのが今の日本の食卓事情です。
次の章では、なぜこの位置が「正しい」とされてきたのか、和食の基本マナーと歴史的な背景をくわしく見ていきましょう。

現役和食調理師のヒント
配膳には必ず「理由」があります。正しい位置を知ることは、和食文化を大切にする第一歩です。
和食の基本マナー|なぜ「ごはん左・みそ汁右」なのか
和食の正式な配膳では、ごはんは左、みそ汁は右が基本です。
これは単なる慣習ではなく、礼法(れいほう)と実用性の両面から決められた、長い歴史を持つマナーです。
主食(ごはん)は左側に置く理由
- ごはんは「命の源」とされ、もっとも尊い主食。
- 左は古来より「上座(かみざ)」とされ、尊いものを左に置く慣習がありました。
- 仏教の作法や茶道、精進料理などでも、左に主食を置く形が基本です。
汁物(みそ汁)は右側に置く理由
- ごはんを食べながら右手でお椀を取りやすい位置に置くため。
- 多くの人が右利きであるため、自然な動作で食事ができるように配慮された配置です。
- 一汁三菜(いちじゅうさんさい)の形式でも、右手前に汁物、左手前に主食、奥におかずを並べるのが正式。
つまり、「ごはん左・みそ汁右」は、
✅ 文化的な意味(尊いものを左へ)
✅ 実用的な意味(食べやすさ・美しい所作)
の両方を兼ね備えた、理にかなった配膳なのです。

現役和食調理師のヒント
「形」だけをまねするのではなく、なぜそう置くのかを知ることで、食卓に心がこもります。配膳は“おもてなし”の第一歩です。
歴史から見る配膳の意味

「ごはんは左、みそ汁は右」という並びは、実は江戸時代の食事作法にも通じる、長い歴史を持つ伝統です。当時の食事は、木製の膳(お膳)の上に器を並べる「本膳料理」が基本。膳の上での配置は明確に決められており、ごはんは左、汁物は右が正式な形でした。
一汁一菜の時代
江戸時代の庶民の食卓の基本は以下の通り
まずごはんを手に取り、汁物で温まり、漬物で口を整える
——そんな自然な流れを生む並びでした。
- 左手前:ごはん
- 右手前:汁物(みそ汁)
- 中央:漬物
一汁三菜の形式
やがて武家や上流階級を中心に、「一汁三菜(いちじゅうさんさい)」という形式が広がります。
主食・汁物に加え、三つのおかず(主菜・副菜・副々菜)を組み合わせる献立です。
この場合の配置は以下の通り
- 手前左:ごはん(主食)
- 手前右:汁物(みそ汁)
- 奥右:主菜(最も重要なおかず)
- 奥左:副菜
- 奥中央:副々菜

現役和食調理師のヒント
配膳の形には「美しさ」と「理」があります。昔ながらの並びは、食事の流れや手の動きを考えた、完成された配置です。
現代の食卓ではどうなっている?

現代の食卓では、ごはんが右・みそ汁が左という並びを見かけることも珍しくありません。
一見、和食のマナーに反しているように感じますが、実はこれには時代や生活スタイルの変化が大きく関係しています。
家庭の食卓
家庭では食卓が「膳」から「テーブル」へと変わり、食器の種類や形、並べ方も自由になりました。和食・洋食・中華が一度に並ぶことも多く、厳密な配膳よりも見た目や使いやすさを優先する傾向が強くなっています。
外食・弁当
レストランやスーパーのお弁当ではごはんが右に配置されることも多くあります。
理由は・・・
- 商品ラベルやシールを右上に貼るため、右側にごはんを配置するとスペースが取りやすい
- 見た目のバランスや彩りを重視し、おかずを左側に集めた方が華やかに見える
- 盛り付けや製造ラインの都合上、左右逆のほうが作業しやすい
つまり、現代の弁当では、食文化よりもデザインや効率が優先されるケースが増えているのです。
洋食文化との融合
さらに、洋食では左右の配置に明確な決まりがないため、「パン・スープ・メイン」が自由に並ぶスタイルが主流。その影響で、和食でも“正しい位置”への意識が薄れつつあるとも言えます。
結論として、現代では
✅ 「ごはん左・みそ汁右」が基本であることに変わりはないが
✅ 見た目・利便性・デザイン性を優先する場面も多い
というのが実情です。

現役和食調理師のヒント
食卓の形が変わっても、「感謝して食べる心」があれば、多少の配置の違いは問題ありません。
大切なのは、「食べやすさ」と「思いやり」です。
「みそ汁が軽視されている?」と言われるワケ

現代の食卓では「みそ汁をつけない」「スープで代用する」「汁物は省略」という家庭も増えています。かつての日本では、ごはんとみそ汁がそろって“食事”と呼ばれていましたが、今では主食とおかずだけというスタイルも珍しくありません。
時短・簡便化の影響
共働きや一人暮らしの増加により、
「すぐ食べられる」「洗い物が少ない」ことを優先する食生活が主流に。
その結果、汁物を作らない・省くという選択が自然に増えました。
洋食化・多様化
パンやパスタ中心の食事が増え、和食の献立が少なくなることで、みそ汁を用意する習慣そのものが減少。また、コンビニ弁当や外食では汁物が別売りになるなど、“なくても成立する食事”が一般化しています。
本来のみそ汁の役割
みそ汁は、ただの“汁”ではなく、
1.体を温める
2.栄養バランスを整える
3.ごはんをおいしく食べるための「脇役」
といった食卓全体の調和を保つ重要な存在です。
そのため「みそ汁がある=整った食事」という考え方は、今でも和食の基本として大切にされています。

現役和食調理師のヒント
みそ汁は料理の“格”を上げる存在。一椀加えるだけで、食事がぐっと豊かになります。
現役和食調理師の結論
「ごはんは左、みそ汁は右」という配膳は、昔から受け継がれてきた和食の基本マナーです。
左に主食(ごはん)、右に汁物(みそ汁)を置くのは文化的な意味と、食べやすさを考えた理にかなった配置といえます。
しかし、現代では食卓の形やライフスタイルが多様化し、弁当や家庭ではごはんが右に置かれることもあります。それは決して間違いではなく、時代に合わせた工夫や合理性のあらわれです。
大切なのは、「正解を守ること」よりも、食べる人を思いやり、感謝の気持ちをもって食卓を整えること。ごはんとみそ汁が並ぶ食卓には、日本の心が息づいています。

現役和食調理師のヒント
形にこだわるより、「おいしく、心を込めていただく」ことが一番のマナー。ごはんを左にみそ汁を右に置くだけで食事が少し丁寧になります。
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