「お箸といえば木製」というイメージ、ありますよね。
でも、なぜ多くのお箸が木で作られているのでしょうか?
実は、木のお箸には“理にかなった理由”がいくつもあります。
今回は、調理師の視点から「木製箸が選ばれる理由」と「プラスチック箸との違い」をわかりやすく解説します。
木のお箸が多い3つの理由

① 熱が伝わりにくく、料理を持ちやすい
木の大きな特長は、熱伝導率の低さです。
熱々の料理をつかんでも、指先に熱が伝わりにくいため、安心して扱えます。たとえば味噌汁や鍋料理。金属製やプラスチック製のお箸だと、すぐに熱が伝わって持ちづらくなります。
木は天然の断熱材のような働きをするため、温かい料理にも冷たい料理にも対応できる万能素材です。
調理現場でも、熱々の天ぷらを引き上げるときや、焼き魚を裏返すときなど、「熱を感じすぎない」木箸の特性がとても重宝します。まさに、手の延長として扱える道具といえるでしょう。
② 軽くて手になじむ
木のお箸はプラスチックや金属に比べて圧倒的に軽く、長時間使っても疲れません。しかも、表面にわずかな摩擦があるため、食材をしっかりつかめるのが特長です。
豆類や麺類のようなつるつるした食材でも扱いやすく、繊細な動作が求められる和食にぴったり。
また、木の繊維が細かく手になじむので、「すべらない安心感」があります。調理師は味の仕上がりだけでなく、手元の感覚も大切にします。そのため、握った瞬間に安定感がある木箸を好む職人が多いのです。
③ 木の香りや風合いが食卓に自然となじむ
木製のお箸には、人工素材にはない“ぬくもり”があります。
木の香り、やさしい色味、自然な質感──。
それらが食卓全体を柔らかい雰囲気に変えてくれます。
漆塗りや竹箸など木の種類や加工方法によって見た目や手触りもさまざま。たとえば、檜や杉は香りが強く、けやきは重厚感があります。お気に入りの木箸を選ぶことは、「自分の食のスタイル」を持つことでもあります。
また、陶器や漆器との相性が良いのも木の魅力です。器を傷つけにくく、音も柔らか。
“食事中の心地よさ”という点でも、木箸が最も優れているといえるでしょう。
プラスチック箸との違い

見た目は似ていても、使い心地は別物
プラスチック箸は、軽くて洗いやすく、価格も手頃。
しかし、滑りやすく、熱に弱いという弱点があります。特に熱々の麺類や鍋料理では、箸先が柔らかくなったり、変形することもあります。
一方、木箸は使うほど手になじみ、味わいが増していくのが魅力。丁寧に洗って乾かすことで、数年単位で長持ちします。つまり、木箸は“育てる道具”でもあるのです。
使い分けのポイント
木製箸は「家庭の食卓・来客時」におすすめ。
プラスチック箸は「弁当や外食・洗浄回数が多い場面」に向いています。
どちらも一長一短がありますが、料理を丁寧に味わうなら、やはり“木の箸”が理想です。
調理師の視点から見た「木箸の良さ」
プロの現場でも、木の菜箸は欠かせません。
焼き物用、揚げ物用、盛り付け用など、料理の工程ごとに箸を使い分けています。
金属製のトングでは感じ取れない、微妙な火加減や食材の弾力を手の感覚で判断できるからです。
木箸はまさに、「人の感覚を最大限に活かす道具」。
食材の声を“手で聴く”ための、職人の相棒ともいえます。
🌿 木箸のお手入れと長持ちのコツ
木製箸は、水に長く浸けず、使ったらすぐに洗って乾かすのが基本。定期的に植物油を薄く塗っておくと、ひび割れを防ぎ、ツヤが長持ちします。使い込むほどに手になじみ、自然な光沢が出てきます。それもまた、木箸の魅力の一部です。
まとめ|木箸は理にかなった道具

木のお箸が多いのは、単に“昔ながら”だからではありません。熱を伝えにくく、軽く、扱いやすく、見た目にもあたたかい。さらに、使う人の手の感覚や料理との一体感を引き出すという、理にかなった道具です。
調理師にとって木箸は、料理を完成させるための「感覚の延長線」。食卓に並ぶその一本にも、文化と技の積み重ねが息づいています。
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