【調理師が解説】日本三大和牛とは?近江牛・神戸牛・松阪牛の特徴と違い

日本三大和牛とは?|調理師が解説する和牛の特徴と違い(鉄板焼きの牛肉の写真) 食文化コラム
三大和牛(近江牛・神戸牛・松阪牛)は、日本を代表する高級ブランド牛です。
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「日本三大和牛」とは、近江牛・神戸牛・松阪牛を指す言葉として広く知られていますが、実は公式な定義はなく、どの三銘柄を指すかは地域や業界によって異なります。
それぞれが「日本三大和牛」を名乗る理由は、長い歴史と厳しい品質基準、そして多くのファンを持つブランド力にあります。

この記事では、和食の現場で25年以上調理してきた調理師が、

  • 三大和牛の成り立ちと違い
  • 各ブランドの特徴や味わい
  • 和牛の定義と選び方のポイント

日本三大和牛(近江牛・神戸牛・松阪牛)は「どれが一番おいしい?」「何が違う?」という疑問が多いテーマです。本記事では、現役和食調理師として25年以上和牛を扱ってきた視点から、それぞれの特徴・味の違い・選び方をわかりやすく解説します。

日本三大和牛とは?

黒毛和牛の写真|日本三大和牛の共通点(黒毛和種)
三大和牛はいずれも黒毛和種。肉質がきめ細かく、脂の甘みが特徴です。

「日本三大和牛」とは、日本を代表する高級ブランド牛を指す言葉で、
「日本三大銘柄牛」
「三大銘牛」
「三大ブランド牛」

とも呼ばれます。
実は、この三大和牛に明確な定義や公式な決まりは存在しません
どの三銘柄を「三大」とするかは、地域やメディア、業界団体によって異なります。
しかし、一般的には「近江牛(滋賀県)」「神戸牛(兵庫県)」「松阪牛(三重県)」が
日本三大和牛として広く知られています。

和牛の定義と4つの品種

「和牛」とは、単に「日本産の牛肉」という意味ではありません。
正式には、以下の4品種およびその交雑種を指します

品種名特徴
黒毛和種霜降りが入りやすく、やわらかく甘みのある脂が特徴。日本の和牛の約9割を占める。
褐毛和種赤身が多くヘルシーで、あっさりした味わい。主に熊本県・高知県などで飼育。
無角和種角がなく、肉質はきめ細かい。山口県を中心に少数飼育。
日本短角種北東北中心に飼育。赤身主体で旨味が強く、放牧に適した品種。

三大和牛はいずれも、これらのうち最も流通量が多い黒毛和種を使用しています。

日本三大和牛の種類と特徴

近江牛・神戸牛・松阪牛の肉塊|日本三大和牛の種類と特徴
それぞれに異なる基準と特徴があり、風味や香りにも個性があります。

近江牛(おうみぎゅう)|滋賀県

日本最古のブランド和牛とされ、約400年以上の歴史を誇ります。
琵琶湖を中心とした豊かな自然環境と、きれいな水・良質な飼料で育てられた牛は、
きめ細かい霜降りとろけるような口どけが特徴です。

  • 品種:黒毛和種
  • 対象:滋賀県内で肥育された雌牛または去勢牛
  • 肉質:脂が甘く、風味が豊か
  • おすすめ料理:しゃぶしゃぶ、すき焼き、ステーキ

神戸牛(こうべぎゅう)|兵庫県

兵庫県内で生まれ育った但馬牛(たじまうし)の中から、
厳格な基準を満たしたものだけが「神戸ビーフ」として認定されます。
世界的にも評価が高く、輸出量も多い高級ブランドです。

  • 品種:黒毛和種(但馬牛)
  • 基準:BMS値6以上、枝肉重量270〜499.9kg(雌)、300〜499.9kg(去勢)など
  • 肉質:サシが細かく、柔らかくジューシー
  • おすすめ料理:ステーキ、ローストビーフ

松阪牛(まつさかうし)|三重県

「肉の芸術品」と称されるほど、霜降りの美しさと味わいのバランスが絶妙。
一頭一頭、長期間にわたり丁寧に肥育されることで、深い旨味と上品な香りを持ちます。

  • 品種:黒毛和種(未経産の雌牛)
  • 特徴:きめ細やかな霜降り、脂の甘さとコク
  • 肉質:柔らかく、脂が上品でくどくない
  • おすすめ料理:すき焼き、網焼き

三大和牛の共通点と違い

神戸ビーフの盛り合わせ|三大和牛の違いと味わいの比較
神戸ビーフはきめ細かい霜降りと口どけの良さが特徴。ブランドごとに個性が光ります。

共通点

三大和牛(近江牛・神戸牛・松阪牛)には、いくつかの明確な共通点があります。

  • いずれも「黒毛和種」
    日本の和牛4品種の中でも、最も肉質がきめ細かく、霜降りが入りやすい「黒毛和種」が使用されています。
  • 厳しい生産基準と徹底した飼育管理
    血統・飼育期間・飼料の管理などが徹底されており、ブランドごとに独自の認定制度が設けられています。
  • 豊かな自然と水に恵まれた地域で肥育
    いずれも名水や自然豊かな土地で育ち、ストレスの少ない環境で飼養されていることが高品質の理由です。
  • 脂の質が良く、口どけがなめらか
     黒毛和種特有の脂肪(オレイン酸)が多く、甘み・風味・融点の低さが共通しています。
現役和食調理師のイラスト|25年以上の経験から料理のヒントを伝えます

現役和食調理師のヒント

三大和牛はいずれも「脂の甘み」「赤身の旨味」「香り」が高いレベルで融合しています。
部位ごとの使い分け次第で、料理の完成度が大きく変わります。

違い

それぞれの和牛は、産地の気候・飼料・肥育方針・認定基準によって、個性が異なります。

項目近江牛(滋賀)神戸牛(兵庫)松阪牛(三重)
性別条件雌=未経産
雄=去勢
未経産雌
去勢のみ
未経産雌のみ
月齢条件雌:30か月以上
雄:29か月以上
月齢の“規定”より格付け・重量が重視(※実務では28か月以上・平均32か月程度で出荷の目安)“出荷月齢の明記はなし”。ただし特産松阪牛は平均42か月と長期肥育
枝肉重量明記なし雌:270–499.9kg
去勢:300-499.9kg
明記なし
出典近江牛の定義と認証神戸肉流通推進協議会松阪牛の定義

調理師のコメント

三大和牛はいずれも「黒毛和種」に分類され、きめ細やかな肉質と上品な脂が特徴です。
しかし、育つ地域・肥育期間・性別・飼料の違いによって、風味や脂の融け方、香りがまったく異なります。

たとえば、松阪牛は未経産の雌牛限定で、長期間じっくりと育てられるため、脂の甘みとコクが際立ちます。一方、神戸牛はBMS6以上の格付け基準があり、上品なサシと口どけの良さが際立ちます。近江牛は月齢や飼料管理が厳格で、繊細な赤身と軽やかな脂がバランス良く調和しています。

どれも「霜降り=おいしい」だけでは語れない個性があり、料理に合わせて選ぶことが大切です。
すき焼きやしゃぶしゃぶには脂がきめ細かい神戸牛、ローストビーフには赤身のうま味が強い近江牛など、用途に合わせた選び方で、和牛の魅力を最大限に楽しめます。

和牛の魅力を最大限に楽しむには、部位やブランドごとの特徴を理解したうえで選ぶことが大切です。調理師の視点から厳選した、失敗しない肉通販の選び方を知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
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この記事を書いた人
現役の和食調理師/おかだ けんいち(調理歴25年以上)

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