【プロが検証】ホームベーカリーでパンが膨らまない3つの原因。イーストの「鮮度」と「水温」を見直そう

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朝、焼きたてのパンの香りで目覚めるはずが……。 ホームベーカリーの蓋を開けた瞬間、そこに鎮座していたのはふっくらしたパンではなく、

「カチカチの岩のような塊」

だった。そんな絶望的なホームベーカリーの経験、ありませんか?

「分量はレシピ通りだったはず」
「ホームベーカリーが故障したのかな?」
「やっぱり私にはホームベーカリーが向いていないのかも……」

そう自分を責める必要はありません。調理師歴25年の経験から断言しますが、ホームベーカリーでパンが膨らまない原因の9割は、あなたの腕が悪いわけでも、ホームベーカリーが壊れているわけでもありません。

ホームベーカリーでのパン作りは「料理」というよりも「科学実験」に近いものです。 特にホームベーカリー任せにする場合、ほんの少しの「条件のズレ」が、成功と失敗を分ける決定的な差になります。

この記事では、多くの人が見落としがちな「ホームベーカリーでパンが膨らまない3つの科学的な原因」について、プロの視点で解説します。

  1. イースト菌の「鮮度」(菌は生きていますか?)
  2. 仕込み水の「温度」(イーストが活動できる環境ですか?)
  3. 計量の「精度」(0.1g単位の誤差が命取り?)

この3つを見直すだけで、明日からは必ず、ホームベーカリーでお店のような「ふわふわの食パン」が焼けるようになります。 まずは、キッチンの棚にある「あの材料」のチェックから始めましょう。

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イースト菌は「生きて」いますか?

開封後の常温保存はNG
パンが膨らむ仕組みをご存知でしょうか? それは、小麦粉に含まれる糖分をエサにして、イースト菌が「炭酸ガス」を出し、そのガスがグルテンの膜に閉じ込められて風船のように膨らむからです。

つまり、イースト菌は「生き物」なのです。

もし、あなたがホームベーカリーで使ったドライイーストが、すでに死んでしまっていたら……? 当然、ガスは発生せず、膨らまないパンが出来上がります。これが「ホームベーカリーで岩のようなパン」ができる最大の原因です。

お得な「大袋」の落とし穴

スーパーの製菓コーナーに行くと、ドライイーストのお徳用の大袋(50gや100g入り)が安く売られています。「どうせ何度も焼くから」「ホームベーカリーだから」と、こちらを選んでしまいがちです。

しかし、ここに膨らまない原因があります。

  • 開封した瞬間から劣化が始まる
    イーストは湿気と酸素が大敵です。
  • 常温保存はNG
    ドライイーストをキッチンの棚や引き出しに、輪ゴムで止めて数ヶ月放置していませんか? その環境では、菌はどんどん死滅していきます。

プロの厨房でも、大袋のドライイーストは開封後すぐに密閉容器に移し、冷蔵(または冷凍)保存して使い切ります。それくらいデリケートな食材なのです。家庭でホームベーカリーを利用する場合も同じく、冷凍(冷蔵)保存して膨らまない原因を解消してください。

冷凍・冷蔵するときの罠
ドライイーストは湿気も大敵です。冷凍冷蔵で保存している時は一回分をホームベーカリーに投入したら、すぐに冷凍冷蔵へ戻すようにしてください。季節により結露して、水分を含んでしまいます

【解決策】家庭用なら「個包装(3gタイプ)」

ホームベーカリーで「たまにしか焼かない」「週末だけ焼く」というご家庭であれば、ドライイーストは絶対に「個包装タイプ」をおすすめします。

割高に感じるかもしれませんが、計算してみてください。 もし、ホームベーカリーで古いイーストを使ってパンが膨らまなかったら、強力粉250g、バター、砂糖、ミルク、そして4時間の電気代……ホームベーカリーに入れた材料すべてが無駄になります。

ドライイーストの数十円の差を惜しんで、ホームベーカリーに入れた数百円の材料を捨てるのは、あまりに悲しいことです。

ドライイースト個包装タイプなら、常に「開封したて」の元気なイースト菌を使えます。これだけで、パンが膨らまないというリスクは激減します。もし今、使いかけの古いイーストが棚にあるなら、思い切って処分し、新しい個包装タイプに買い替えてみてください。驚くほど膨らみが変わりますよ。

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仕込み水の温度は「適温」ですか?

指の感覚は当てになりません
イースト菌の鮮度が良くても、その活動環境(=温度)が悪ければパンは膨らみません。

イースト菌が最も活発に働く温度は30℃前後と言われています。 これより低いと活動せず(発酵不足)、高すぎると死滅してしまいます(過発酵)。

ホームベーカリーで食パンを焼くときに多くの方がやってしまうのが、「ぬるま湯(人肌)」というレシピの言葉を鵜呑みにすることです。

「指の感覚」ほど当てにならないものはない

「人肌くらいのぬるま湯」とは、具体的に何度でしょうか? 35℃? 40℃? それともお風呂くらいの42℃?

人間の指の感覚は、その日の気温や体調によって大きくズレます。 冬場に冷え切った手で触れば、40℃のお湯でも「熱い」と感じるかもしれません。逆に夏場なら、30℃でも「ぬるい」と感じるでしょう。

この「感覚のズレ」が、ホームベーカリーでのパン作りでは膨らまない原因の一つになります。

  • 温度が高すぎる場合
    イースト菌が一気にガスを出して力尽きます。一度、膨らんだ後にしぼんでしまい、キメの粗い、酸味のあるパンになります(過発酵)。
  • 温度が低すぎる場合
    イースト菌が目を覚ましません。いつまで経っても膨らまない、ボソボソとした重たいパンになります(発酵不足)。

ホームベーカリーならではの「落とし穴」

さらにホームベーカリー特有の事情があります。それは「こねる時の摩擦熱」です。機械が回転して生地をこねている間、パンケースの中の温度はどんどん上昇します。

  • 【夏場】の対策
    室温も機械(ホームベーカリー)も熱いため、5℃前後の「冷水」を使うのが正解です。ぬるま湯を入れると過発酵で失敗します。
  • 【冬場】の対策
    室温も機械(ホームベーカリー)も冷えているため、30℃前後の「ぬるま湯」を使って、イーストを助けてあげる必要があります。
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現役和食調理師のヒント

とはいえ、今販売されているホームベーカリーは失敗が少なくなるように設計されています。水の温度はそこまで気にすることはありません。

【解決策】2,000円の投資で「温度計」を買う

では、ホームベーカリーではどうすればいいのか? 答えはシンプルです。 「温度計」を使ってください。

プロの調理現場では、指の感覚で「だいたい30℃」などと判断することは絶対にありません。必ず温度計を挿して確認します。今は、食材に触れずに一瞬で測れる「赤外線温度計」や、揚げ物にも使える「スティック温度計」が安く手に入ります。

「今日は室温が低いから、水温を35℃に上げよう」
「今日は暑いから、冷蔵庫の水をそのまま使おう」

このように、数字で管理できるようになれば、季節に関係なく、いつでも安定してホームベーカリーで美味しいパンが焼けるようになります。
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計量が「アバウト」になっていませんか?

1g単位の量りでは誤差が出ます
最後の原因は、意外な盲点である「計量」です。料理(特におかず作り)では、「塩少々」「醤油ひと回し」といった目分量が許されます。しかし、ホームベーカリーでのパン作りは違います。 パン作りは化学反応であり、「数字がすべて」です。

特に重要なのが、「イースト」と「塩」のバランスです。

イーストはパンを膨らませる(アクセル)。はイーストの過剰な働きを抑え、生地を引き締める(ブレーキ)。

この2つのバランスが崩れると、ホームベーカリーでのパンは暴走するか、エンストします。

「3g」と表示されていても、実は「2.5g」かもしれない

多くのご家庭にあるデジタルスケール(キッチンスケール)は、「1g単位」で表示されるものがほとんどではないでしょうか?実は、この「1g単位」の量りには、±0.5g程度の誤差(表示の切り捨て・四捨五入)が含まれています。

例えば、ホームベーカリーのレシピで「ドライイースト 3g」とあったとします。 1g単位の量りで「3g」と表示された時、実際の重さは「2.5g」かもしれないし、「3.4g」かもしれません。

たった0.9gの差? と思うかもしれません。しかし、元の量が3gですから、これは「約30%もの誤差」になります。

ホームベーカリーの分量で30%も分量が違えば、化学反応の結果が変わるのは当然です。

「ホームベーカリーのレシピ通りにやったのに膨らまない」
「毎回、パンの膨らみ方が違う」

という悩みは、実は量りの精度不足が原因であることが非常に多いのです。

【解決策】パン作りをするなら「0.1g単位(微量計)」

プロの厨房や、失敗しないホームベーカリーでのパン作りをしている人は、必ず「0.1g単位」で量れるスケール(微量モード付き)を使っています。

「2.9g」と「3.0g」の違いが見える世界になれば、失敗の原因は驚くほど減ります。

  • 塩の量を正確にする: 過発酵を防ぎ、味がぼやけない。
  • イーストを正確にする: 毎回同じタイミングで発酵が完了する。

このスケールは、決して高いものではありません。しかし、2,000円〜3,000円程度で、一生モノの「正確さ」が手に入ります。 ホームベーカリーでのパン作りだけでなく、お菓子作りや、コーヒー豆の計量、スパイスの調合など、料理好きなら持っていて絶対に損はありません。

▼最小表示0.1g単位で量れるスケール▼

【救済措置】失敗した「硬いパン」を美味しく食べるプロの知恵

もし、今回の記事を読む前に焼いてしまい、ホームベーカリーでカチカチのパンが手元にある場合……。 絶対に捨てないでください。

ホームベーカリーで膨らまなかったパンは、密度が高く、水分が抜けている状態です。 実はこれ、「カリカリ食感の料理」にするには最高の素材なのです。

プロの調理師が実践する、3つのリメイク術を紹介します。

薄くスライスして「ラスク」にする

これが一番のオススメです。 ホームベーカリーで膨らまなかったパンは目が詰まっているため、普通の食パンで作るより「ガリッ」とハードな食感になり、お店売りのような本格的なラスクになります。

  • 作り方
    5mmほどの薄切りにし、バターとグラニュー糖を塗って、150℃のオーブンで20分ほど乾燥焼きにするだけ。

2. サイコロ状に揚げて「クルトン」にする

スープやサラダのトッピングに欠かせないクルトン。市販品は高いですが、ホームベーカリーの失敗パンなら大量に作れます。

  • 作り方: 1cm角に切り、多めのオリーブオイルで揚げ焼きにします。
  • 活用法: メインブログで紹介している「かぼちゃのポタージュ」や「シーザーサラダ」に散らせば、カフェのような仕上がりになります。

フードプロセッサーで砕いて「生パン粉」にする

硬いパンを細かく砕けば、きめの細かい特製パン粉になります。 ホームベーカリーの失敗パンは市販の乾燥パン粉より風味が強く、ハンバーグのつなぎや、フライの衣に使うと絶品です。


まとめ

パン作りは「化学」です。条件さえ整えば失敗しません
最後に、もう一度ポイントを整理します。 ホームベーカリーでパンが膨らまない原因は、あなたの才能がないからではありません。

  1. イースト菌の鮮度: 開封後の常温放置はNG。「個包装」が最強。
  2. 仕込み水の温度: 指の感覚はNG。「温度計」で適温(30℃)を守る。
  3. 計量の精度: 1g単位のアバウト計量はNG。「0.1g単位」で正確に測る。

この3つの「化学条件」さえ整えれば、ホームベーカリーのスイッチ一つで驚くほど美味しいパンが焼けます。道具を揃えて、原因を取り除いたら、ぜひもう一度チャレンジしてみてください。

あなたのパン作りが、明日から楽しいものに変わることを願っています。

調理師プロフィール画像
この記事を書いた人
現役の和食調理師/おかだ けんいち(調理歴25年以上)
和食の世界で25年以上。旬の食材や家庭でできる調理のコツを、やさしく、わかりやすくお届けしています。料理がもっと楽しく、おいしくなるきっかけになれば嬉しいです。
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