2024年7月のポストコーヒーは、3種類すべてが深煎りベースでありながら、重さやかたさがなく「苦味の個性」で遊ばせるラインナップでした。
ビターチョコとスパイスの余韻が残る メキシコ、
キャラメルや洋酒を思わせる発酵由来の甘さが際立つ ブラジル、
烏龍茶やウッディな香りが広がる“お茶系の深煎り”という異端の 中国。
方向性はまったく違いますが、共通しているのは「しっかり苦いのに後味が軽い」「アイスでも抜群に飲みやすい」 という点。この記事では、30か月継続してきた調理師の視点から、7月の3種類の味の違いを 最短で理解できるように比較・整理 しています。▶ ポストコーヒーをやめなかった理由はこちら
※本記事には広告が表示されます。
今月届いた豆のラインナップ

メキシコ エルピラール ダーク
ブラジル シッチョ マラカツ
中国 ドンカ ダーク
※ 詳細レビューは後述
個別レビュー
メキシコ エルピラール ダーク

焙煎度:深煎り
産地:メキシコ
フレーバー&香り
ビターチョコレートのような深い香りを中心に、カルダモン・クローブ・ジンジャーを思わせるスパイスのニュアンスがふわりと残る。ほのかにオレンジピールのような柑橘の香りが混ざり、後半にはミントのような清涼感を感じる瞬間もある、重さだけで終わらない多層的な香り。
味の方向性
しっかりとしたビターな苦味とダークチョコのコクが主軸だが、後味は意外なほどクリーンで飲みやすい。酸味はほとんどなく、スパイス系の余韻が苦味を引き締めてすっきりとしたダークローストに仕上がっている。アイスにすると苦味とコクの輪郭がより整い、重たさが出ないのが特徴。
この豆が合う人
深煎りの“しっかりした苦味”が好きな人
チョコレートと合わせてコーヒーを楽しみたい人
酸味の弱いダークローストを探している人
苦味が強いのに後味はクリーンで軽い豆を求める人
スパイス系(ジンジャー・カルダモン・クローブ)の余韻が好きな人
アイスコーヒーでも重すぎずバランスよく飲みたい人
ブラジル シッチョ マラカツ

焙煎度:深煎り
産地:ブラジル
フレーバー&香り
キャラメルの甘い香りに、洋酒を思わせるリッチで少し怪しげな香りが重なる。挽いた瞬間はチョコレートが前に出て、抽出するとナッツの香ばしさがふわりと続く。嫌気性発酵特有の独特の発酵香はあるが、強すぎず“個性として心地よいレベル”にまとまっている。
味の方向性
深煎りらしいしっかりした苦味とコクが中心だが、酸味は控えめで、後味は意外なほどすっきり。キャラメルやカカオの甘さがゆっくりと残り、ほんのり洋酒のような丸みがある。発酵由来の複雑さが加わり、「まろやか+個性+飲みやすさ」の3つが同居した味わい。ラテにも相性が良い。
この豆が合う人
深煎りの苦味とコクが好きだが、後味は軽くあってほしい人
チョコレート・焼き菓子と合わせるコーヒーを探している人
嫌気性発酵の“クセ”を試してみたいが、強すぎるのは苦手な人
フルーティーさと深煎りのコクが両立した味が好きな人
ラテにもストレートにも使える万能なブラジルを求める人
一度飲むと“また飲みたくなる”タイプの記憶に残る味を試したい人
中国 ドンカ ダーク

焙煎度:深煎り
産地:中国
フレーバー&香り
深煎りの香ばしさの中に、烏龍茶のようなすっきりとした茶葉の香りが混じり、アーモンドを思わせるナッティーな甘香ばしさが続く。杉や檜のようなウッディな香りが余韻として残り、どこかアーシーで“土の温かみ”のある香り立ち。袋を開けた瞬間の香りに惹かれるタイプ。
味の方向性
口に入れた瞬間は深煎りらしいしっかりした苦味とコクが来るが、苦味はすっと引いて後味は驚くほどクリーン。烏龍茶やハーブを思わせるお茶系のニュアンスが余韻に残り、甘酸っぱさがコクの一部としてわずかに感じられる。“重くない深煎り”で、アイスにするとキレが一層際立つ。
この豆が合う人
深煎りの苦味とコクが好きだが、後味は軽い方がいい人
烏龍茶やウッディな香りなど、個性的な風味を楽しみたい人
普通の深煎りに飽きて“ちょっと冒険したい”人
深煎りでもアイスでスッキリ飲みたい人
アーモンド系のナッティーな香りが好きな人
焼き菓子やミルクとも合わせたい人
今月のまとめ
7月は、「深煎りなのに重くない」「苦味を楽しむ」「個性で選ぶ」という3軸が揃ったラインナップ。どれも“ただのダークロースト”ではなく、苦味+α のキャラクターが明確に存在する。強い個性を持ちながら、アイスでも飲みやすいという共通点がある月。
■ メキシコ(エルピラール ダーク)
ビターチョコ × スパイスの余韻。重厚だが後味はクリーン。
→ 今月いちばん“落ち着く深煎り”。
■ ブラジル(シッチョ マラカツ)
キャラメル・洋酒・カカオ。発酵の個性が“ちょうどよい”ブラジル。
→ 今月いちばん“クセのある甘さが楽しい”豆。
■中国(ドンカ ダーク)
烏龍茶・ウッディ・アーシー。深煎りなのに異常にスッキリ。
→ 今月いちばん“コーヒーの概念を外してくる個性派”。
◆ 総評:7月は「深煎りの進化形」がテーマ
- スパイス×ビターで安定感 → メキシコ
- 発酵由来の甘さとコク → ブラジル
- お茶・ウッディ・アーシーの冒険型 → 中国
深煎り好きにも、浅煎り派の “たまに深煎り飲みたい” にも刺さる異色のセット。
▶ 2024年6月のレビューを見る(前月)
▶ 2024年11月のレビューを見る(翌月)
── 他のレビューも読む ──
▶ ポストコーヒー|月別レビュー一覧ページはこちら
あわせて読みたい

現役の和食調理師/おかだ けんいち(調理歴25年以上)
和食の世界で25年以上。旬の食材や家庭でできる調理のコツを、やさしく、わかりやすくお届けしています。料理がもっと楽しく、おいしくなるきっかけになれば嬉しいです。
▶ プロフィールを見る