ココアパウダーを食パンに入れると、どんな仕上がりになるのか。今回はココアパウダーを12%配合した食パンを、ホームベーカリーで焼いてみました。
色はどこまで濃くなるのか。
苦味や渋みは出ないのか。
膨らみや食感に影響はあるのか。
お菓子寄りになるのかそれとも意外と食事パンとして成立するのか。実際に焼いてみないと分からない点を、調理師の視点で正直に検証しています。見た目・香り・食感、そしておいしいのかどうか。ココアパウダー多め配合のリアルな結果をまとめた奮闘記です。
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結論

ココアパウダーを配合した食パンは強烈な存在感のある仕上がり
焼き上がり時・カット時・トースト時と、とにかく香りは非常に強く、ココアの主張ははっきり感じられます。一方で、フタを開けた瞬間に驚くほど全体が黒く、見た目のインパクトはかなり大きめ。その影響もあって、トースト時は焼き色で判断できず、焦げそうで不安になるほどでした。
食感はココアパウダーを多く入れた影響か、ややパサつきを感じる仕上がり。ココアの量は少し多すぎた印象で、食パンとしてはバランス調整が必要だと感じました。
総合すると、香りと見た目のインパクトは抜群だが、配合としては攻めすぎ。ココア感を活かすなら、量を抑えるか、油脂や甘みとの調整が前提になる結果です。
このレシピを試した理由
ココアパウダーをしっかり多めに入れた場合、食パンはどこまで成立するのかを確かめたかったからです。少量使いのレシピはよく見かけますが、配合を増やしたときに、
- 香りはどう変わるのか
- 苦味や食感への影響はどれくらい出るのか
- 見た目や焼き上がりに問題は起きないのか
といった点は、実際に焼いてみないと分かりません。今回は調整を最小限にし、ココアパウダー12%配合というやや攻めた条件で、そのままの結果を見ることを目的にしました。
レシピと条件
レシピ|ココアパウダーを12%配合した食パン
※この原価表は、当時実際に使用していた材料価格をもとに算出しています。
現在は原材料価格が変動しているため、あくまで目安としてご覧ください。
| 材料 | 割合(%) | 分量 | 原価 |
|---|---|---|---|
| 強力粉 | 100 % | 250g | 95 円 |
| ドライイースト | 1.2 % | 3g | 16.8 円 |
| 水 | 64 % | 160 cc | 8 円 |
| 生クリーム (植物性40%) | 16 % | 40 g | 34 円 |
| 三温糖 | 12 % | 30 g | 6.6円 |
| ココアパウダー | 12 % | 30 g | 108.9円 |
| 塩 | 2 % | 5 g | 1 円 |
| バター | 6 % | 15 g | 30円 |
| ▼原価合計 | ー | ー | 300.3円 |
- 強力粉は「ソメイヨシノ」を使用
- ココアパウダーは甘さが入っていないものを使用
- ココアパウダーを12%(30g)を投入
- 甘味は三温糖を使用
- 水分量は水と生クリーム
※今回使用した材料は、製菓・製パン材料専門店「コッタ」で購入しました。
同じ材料を探したい方はこちら。▶ コッタ公式サイトを見る
条件
今回使用したホームベーカリーはPanasonic SD-BH104(廃盤モデル)
発売からかなり年数が経っていますが、現在も安定した焼き上がりで現役使用中です。
| 項目 | 環境 |
|---|---|
| 日付 | 2021.1.18 |
| 室温 | 14℃ |
| 湿度 | 66℃ |
| 天気 | 晴 |
| タイマー設定 | あり |
| ホームベーカリーの設定 | ソフトモード 焼き上がり「淡」 |
実際の焼き上がりと食感
膨らみ
ココアパウダーを12%配合していますが、極端な失敗はなく、一応は膨らみます。ただし、生地の持ち上がりはやや弱く、全体として重さを感じる仕上がりです。
焼き色
フタを開けた瞬間に驚くほど、全体が真っ黒に仕上がります。焼き上がり時・カット時・トースト時と、見た目のインパクトはかなり強め。トースト時は焼き色で判断できず、焦げそうで不安になるレベルです。
クラム
クラムは色が非常に濃く、気泡は細かすぎず粗すぎずですが、ココアパウダーの影響か、水分を奪われたような印象があります。見た目の黒さに対して、甘さはあまり感じられません。
食感
香りは焼き上がり・カット時・トースト時すべてで非常に強く、ココア感ははっきりしています。
一方で、食感はややパサつきがあり、不味くはないものの「おいしい」と言い切れる仕上がりではありません。
色が濃すぎることで、見た目からおいしくなさそうに感じてしまう点も気になりました。
総合するとココアパウダーは入れすぎで、量を減らしたほうが、香り・色・食感のバランスは良くなりそうです。
なぜこの結果になったのか(仮説)

ココアパウダーを12%配合したことで、粉量に対する非グルテン成分が増えすぎた可能性があります。その結果、生地の構造が弱くなり、膨らみが抑えられ、ややパサついた食感につながったと考えられます。
また、ココアパウダーは水分を吸いやすく、配合量が多いほど生地の水分が奪われやすくなります。これにより、見た目は濃い色になる一方でしっとり感や甘さが出にくい仕上がりになったと推測できます。
香りが非常に強く出たのは、ココア由来の揮発性成分が多く、焼成中も残りやすかったためでしょう。一方で、色が黒くなりすぎたことで、焼き色や焼成状態の判断が難しくなった点も今回の特徴です。
再現するためのポイント

- ココアパウダーは12%だと多すぎる
- 香りは十分出るため、量は減らす前提で考える。
- ココアは水分を奪いやすい素材のため、そのまま置き換えるとパサつきやすい
→ しっとり感を出したい場合は、水分・油脂の調整が必要。 - 色が非常に濃くなるため、焼き色で判断しない
- トースト時は時間を短めにし、焦げに注意する。
- 甘さは出にくい配合なので、甘さを期待しない前提で作る(甘いパンにしたい場合は砂糖や他素材の併用が必須)
- 見た目の黒さは好みが分かれるため、「おいしそうに見える色」を意識して調整するのが重要。
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現役の和食調理師/おかだ けんいち(調理歴25年以上)
和食の世界で25年以上。旬の食材や家庭でできる調理のコツを、やさしく、わかりやすくお届けしています。料理がもっと楽しく、おいしくなるきっかけになれば嬉しいです。
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