【調理師監修】鰻(うなぎ)の種類と旬|部位・栄養・調理法も解説

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夏の風物詩として親しまれる「うなぎ」は、栄養価が高く、昔から滋養強壮の食材として重宝されてきました。特に「土用の丑の日」には、蒲焼きや白焼きで食べる習慣が根付いています。近年では天然と養殖の違いや、種類ごとの味わい、調理法の工夫にも注目が集まっています。

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現役和食調理師のイラスト|25年以上の経験から料理のヒントを伝えます

現役和食調理師のヒント

うなぎは調理前の下処理と焼き加減が味の決め手。頭(かみ)から尾(しも)まで脂ののり方が違うので、部位ごとの特徴を知ると、もっと美味しく食べられますよ。

うなぎの旬 ~おいしい時期~

天然うなぎ

養殖うなぎ

季節ごとの旬の食材をもっと詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。▶ 旬の野菜・魚介【年間カレンダー】

天然うなぎの旬:10〜12月

天然うなぎは春〜夏に漁が始まり、冬眠に備えて脂肪を蓄えるため、10月頃から脂が乗り始め12月頃に最も旨味が充実する時期になります。
寒くなる時期は体がエネルギーを貯め込むため、身が引き締まりつつ旨味が深まる、食通が狙う「本当の旬」です。

養殖うなぎの旬:6〜8月頃が需要ピーク

一方で、養殖うなぎ自体には明確な旬はなく一年を通して味や品質が安定して提供されるのが特徴です。養殖業者は夏の需要に合わせて育成スケジュールを整えるため、6〜8月頃に出荷が最も多く、市場では〝旬〟と認識されがちです

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天然のうなぎは、10月から12月にかけて脂がしっかりと乗るため、秋の“秋うなぎ”、初冬の“下りうなぎ”として特に評価されています

鰻とは ~特徴と味わい~

旬の魚介類|うなぎ
うなぎ

鰻(うなぎ)はどんな魚?

鰻はウナギ科に属する細長い体の淡水魚で、見た目は蛇のように細長く、全身がぬるぬるとした粘液で覆われているのが特徴です。川や湖、沼などの淡水で育ちますが、産卵はフィリピン東方の「マリアナ海嶺」近海という海水域で行われる「回遊魚」でもあります。

日本で主に食べられているのは「ニホンウナギ(Anguilla japonica)」という種類で、天然ものと養殖ものがあります。


味・食感の特徴

食感:柔らかくふっくらとした身。骨が細かくやわらかいため、口に残りにくい。
味わい:香ばしい脂とタレの甘辛さが調和する「蒲焼き」が代表的。白焼きでは繊細な旨みと上品な脂を感じられる。

  • 日本はウナギの消費率世界一
  • 国産だけでは足りず、輸入に頼る
  • 主に台湾、中国、オーストラリアから輸入されている
  • 海で生まれ、ある程度の大きさまで育ち、それから河川などに入り込んで数年間を過ごす
  • 養殖物は静岡、三重、愛知で90%を占める
  • うなぎの血液には、「イクシオトキシン」が含まれている
    ※イクシオトキシン=目に入ると結膜炎になり、口に入れると下痢、吐き気などの症状を引き起こす。イクシオトキシンはタンパク質なので60℃以上で5分間加熱すると毒性を失います。

鰻の種類

種類特徴
ニホンウナギ日本の代表的な食用うなぎ。天然ものは希少。脂のりがよく繊細な味。
ヨーロッパウナギ輸入品の一部に使用。味は似るがやや身がしまる傾向あり。
ビカーラ種(ビカーラウナギ)東南アジアなどで養殖される。価格が安く、近年多く流通。

※流通しているうなぎの約99%以上は養殖もの。その大半がニホンウナギを人工的に育てたものです。


天然と養殖の違い

項目天然うなぎ養殖うなぎ
脂のり季節によって変動。冬に向けて脂がのる。年間通じて安定して脂がのるよう管理されている。
味わい野性味があり、濃厚で個体差があるクセがなく、安定した味わい
価格非常に高価。流通量はごくわずか。比較的安価で手に入りやすい
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蒲焼きや白焼きにした際の「ふっくら感」を出すには、下処理と蒸しの技術が重要です。特に関東では「蒸し」を入れるのが特徴で、関西は「地焼き」で香ばしさを生かします。

かみしも・廃棄率とは?~うなぎの部位と可食部について~

「かみしも」とは?
「かみしも(上・下)」とは、うなぎの頭側(かみ)と尾側(しも)を意味する言葉で、1本のうなぎを部位で分けたときの呼び名です。特に飲食業界や卸売市場などでよく使われます。

部位特徴
かみ(上)頭に近く、骨が太め。脂が多く、食べごたえがある。
しも(下)尾に近く、身が締まっている。脂はやや少なめ。
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「かみ」は蒲焼きでコクのある味わいが好まれ、「しも」は白焼きや細かく刻んでひつまぶしに向いています。部位によって使い分けると、料理全体のバランスが整いますよ。

うなぎの「廃棄率」とは?

うなぎは調理前に「背開き(関東)」「腹開き(関西)」で捌かれ、頭・内臓・骨・尾の一部などを取り除いて調理します。このときの「食べられない部分」が多く、**廃棄率は約40〜50%**といわれています。

状態可食部割合備考
丸ごと1尾(生)約50〜60%蒲焼き・白焼き用に加工すると半分近くが廃棄される
開き済・白焼き済約80〜90%市販品は廃棄部分が除かれているため食べやすい

うなぎの保存方法

うなぎは状態によって保存方法が大きく異なります。以下を参考に、最適な方法で保存しましょう。

状態冷蔵保存冷凍保存備考
生のうなぎ
(開き)
×
(非推奨)

(ラップ+保存袋で)
鮮度落ちが早く、家庭での生保存は困難
市販の蒲焼き
(真空パック)

(未開封で3〜5日)

(1ヶ月程度)
開封後は早めに食べきるか、冷凍保存
蒲焼き
(調理後)

(ラップして2日以内)

(冷ましてから1食分ずつ小分け)
再加熱は電子レンジよりもフライパンがおすすめ
白焼き
(調理後)

(2日以内)

(小分け冷凍で1ヶ月)
解凍後は軽く炙ると風味が復活
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現役和食調理師のヒント

真空パック以外の蒲焼きは、購入当日に食べきるのが理想。どうしても保存する場合は、冷ましてからラップ+保存容器+冷凍がベストです。解凍時は自然解凍後にフライパンで軽く炙ると、香ばしさとふっくら感が戻ります。

うなぎと相性の良い食材

うなぎは脂がのった濃厚な味わいのため、さっぱり感を加える食材や香味野菜との相性が抜群です。以下に、定番から調理師目線の組み合わせまでご紹介します。

食材組み合わせの理由・使い方例
山椒独特の香りと辛味が脂を引き締め、味を引き立てる。うな重や蒲焼きに添えて。
きゅうり酢の物にして、うなぎの脂をさっぱり中和。夏の副菜に最適。
卵(卵焼き)う巻き(うなぎ入り卵焼き)で甘さとコクのバランスがとれる。お弁当にも人気。
青じそ香りがさわやかで、脂っこさを抑える。細切りにしてちらし寿司などに活用。
ごぼう土の香りと歯ごたえで、うなぎの旨味と好相性。柳川鍋や煮物でよく使われる。
梅干し酸味が口をさっぱりさせる。薬味や添え物としておすすめ。
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うなぎは脂が強い分、酸味・辛味・香りのある食材でバランスをとるのがコツ。副菜に酢の物や吸い物を合わせると、献立として完成度がグッと上がります。

うなぎに合う調理法

調理法おすすめ度理由
蒲焼き甘辛いタレと脂の旨味が絶妙にマッチ。定番中の定番。ご飯との相性も抜群。
白焼きタレを使わず塩だけで焼くことで、うなぎ本来の風味と脂の旨みが引き立つ。
蒸し焼き関東風の調理法。ふっくらと仕上がり、やさしい口当たりに。
う巻き
(卵焼き)
卵の甘みと柔らかさがうなぎと好相性。お弁当や酒の肴にも人気。
鍋料理
(柳川風)
ごぼうと煮ると香り豊かで滋味深いが、うなぎの脂が強く、やや重たくなることも。
揚げ物×脂の多いうなぎは揚げるとくどくなりやすく、旨味も逃げやすい。一般的ではない。
刺身×寄生虫リスクがあるため、生食には適さない(※加熱調理が前提の食材です)。
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うなぎは「焼き」が命。特に蒲焼きは、タレの焼き入れを何度も繰り返すことで香ばしさとコクが生まれます。
白焼きはわさび醤油や柚子胡椒など、薬味との組み合わせで楽しむのもおすすめです。

鰻の栄養素 (食品成分表)

うなぎ(焼き)
可食部100g当たり

栄養素かば焼白焼単位
廃棄率00%
エネルギー285300
水分50.552.1g
タンパク質23.020.7g
脂質21.025.8g
食物繊維(総量)g
炭水化物3.10.1g
ナトリウム510100
カリウム300300
カルシウム150140
マグネシウム1518
リン300280
0.81.0
亜鉛2.71.9
0.070.04
マンガン0.04
ヨウ素77
セレン42
クロム2
モリブデン2
ビタミンA(レチノール)15001500
ビタミンA(β-カロテン)
ビタミンD19.017.0
ビタミンE(トコフェロールα)4.95.3
ビタミンK
ビタミンB10.750.55
ビタミンB20.740.45
ナイアシン4.13.5
ビタミンB60.090.09
ビタミンB122.22.7
葉酸1316
パントテン酸1.291.16
ビオチン10.0
ビタミンC
参照「「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」」

鰻はA・D・Eが特に豊富で、B1・カルシウムも優秀。
塩分を抑えたいなら白焼、タレの旨味重視ならかば焼。食べる量と頻度を調整し、野菜や酢の物を添えて栄養バランス・塩分をコントロールするのがおすすめです。

▶ 栄養の全体像を知りたい方はこちら
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うなぎの英語・漢字表記

表記内容
漢字
ひらがなうなぎ
英語表記eel
学名Anguilla japonica
発音記号[íːl](イール)

英語では「grilled eel(グリルしたうなぎ)」や「eel fillet(うなぎの切り身)」と表現されます。日本の「蒲焼き」は海外でも “Unagi kabayaki” として紹介されることがあります。

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この記事を書いた人
現役の和食調理師/おかだ けんいち(調理歴25年以上)

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