「あんこうって、どんな魚?」
見た目は少しグロテスクですが、あんこうは冬の定番鍋にも登場する旨味たっぷりの深海魚です。
特に「あん肝」は海のフォアグラとも呼ばれるほど濃厚な味わいで、お酒との相性も抜群。
このページでは、あんこうの旬や味の特徴、食べられる部位、あん肝の読み方や英語表記まで、調理師の視点からやさしく解説します。
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鮟鱇の旬 ~おいしい時期~
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季節ごとの旬の食材をもっと詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。▶ 旬の野菜・魚介【年間カレンダー】
あんこうは水深100m以上の深海に生息し、晩秋〜初春(11月~3月頃)が旬とされています。中でも12月〜2月は、肝(アンキモ)が肥大し、その濃厚な味わいがピークになるため、最も美味しい時期です

現役和食調理師のヒント
冬場の流通量も多くなるため、鮮度の高いものを見極めやすく、価格の変動も少ないのもポイント。
鮟鱇(あんこう)とは ~解説~

あんこう(鮟鱇)は、深海に生息する見た目が特徴的な魚で、日本では冬の鍋料理や肝料理で親しまれています。主に太平洋沿岸、特に茨城県沖や東北地方、北陸などの深海で多く水揚げされます。
- 西のフグ、東のアンコウと称される
- 流通しているのは「キアンコウ」(ホンアンコウ)と「クツアンコウ」(アンコウ)
- オスは小さく、メスは大きい。メスの方がおいしいといわれる
特徴
- 体は平たく、頭が大きく、口は広く裂けている独特の姿。
- 体表にウロコがなく、ぬめりがある。
- 深海(100m以上)に生息し、獰猛な捕食者。
- 雌は大きく成長し(50~60cm)、食用になるのはほぼ雌のみ。
可食部は“七つ道具”
あんこうは、捨てるところがない魚として知られ、特に下処理された「七つ道具(七つの部位)」すべてが料理に使われます。
| 部位 | 特徴・使い方 |
|---|---|
| 肝(あん肝) | 最も珍重される部位。濃厚な味わいで「海のフォアグラ」とも |
| 水袋(胃) | 歯ごたえがあり、鍋に入れると旨味が出る |
| ぬの(卵巣) | 冬場に成熟し、鍋に加えると濃厚で美味 |
| えら | ゼラチン質が多く、ぷるぷる食感 |
| 皮 | コラーゲンが豊富で、湯引きや酢の物に最適 |
| 身 | 淡白でクセがなく、鍋や唐揚げ向き |
| ヒレ | 動きがありゼラチン質。鍋のアクセントに使われる |

現役和食調理師のヒント
あんこうはぬめりが強く、さばくのが難しいため、つるし切り(吊るして捌く方法)が有名。市場ではすでに下処理された状態で流通することが多く、七つ道具が揃ったセットとして購入できるものもあります。
地方名
- クツアンコウ
- アゴ
- アンコ
- アンゴウ
- ミズアンコウ
- ハタアンコウ
- エドアンコウ
鮟鱇の目利き(鮮度の見分け方)
あんこうは見た目が独特な魚ですが、鮮度の良し悪しによって味が大きく変わる魚でもあります。特に鍋や肝料理に使う場合は、鮮度の良い個体を選ぶことが美味しさの決め手です。
鮮度の良いあんこうを見分けるポイント
| チェックポイント | 見分け方 |
|---|---|
| 身の弾力 | 身に張りがあり、指で押してもすぐに戻る |
| 色 | 全体的に赤みが強く、濁りのない色をしている(黒ずみがない) |
| におい | 海の香りがあり、生臭さが少ない |
| 肝 | 白っぽく濁っておらず、赤みを帯びてツヤがあるものが◎ |
| 加工済みの場合 | 七つ道具が揃っていて、水っぽくないものを選ぶとよい |

現役和食調理師のヒント
市場やスーパーで購入する場合は、「あんこう鍋セット」や「鮟鱇パック」として七つ道具が揃った状態で売られていることが多いです。肝が白く乾燥していたり、水分が出ていたりするものは避けましょう。
鮟鱇と相性の良い食材
あんこうは淡白な白身と濃厚な肝のコントラストが魅力。特に冬の鍋料理やあん肝料理で、その味わいを引き立てる食材と一緒に使うとより一層美味しくなります。
| 食材 | 組み合わせの理由・使い方例 |
|---|---|
| 白菜 | 鍋の定番。淡白なあんこうの身とよく合い、出汁を吸って美味 |
| 長ねぎ | 肝の濃厚な味を引き立てる香味野菜として重宝される |
| みそ | あん肝と合わせて肝味噌鍋やソースに。コクと旨味が倍増 |
| ポン酢 | あん肝や湯引き皮の酢の物に。さっぱりとした風味をプラス |
| 日本酒 | 酒蒸しや鍋に使うことで、臭みを消して旨味を引き出す |
| こんにゃく | 鍋の具として食感の変化が楽しめる。肝との相性も良い |

現役和食調理師のヒント
「肝味噌仕立てのあんこう鍋」は、みそと肝をよく混ぜて煮込むことで、濃厚な旨味が全体に広がります。締めにうどんや雑炊を入れると、出汁の旨味を余さず味わえますよ。
鮟鱇に合う調理法(あんこうの七つ道具を活かす)
あんこうは、部位ごとに食感や味が異なるため、鍋だけでなく様々な調理法に向いている魚です。特に肝(あん肝)は酒蒸しやポン酢和えでも人気があります。
| 調理法 | おすすめ度 | 理由 |
|---|---|---|
| 鍋料理(肝入り) | ◎ | 七つ道具すべてが活かせる。肝で味噌仕立てにすると絶品 |
| 酒蒸し(肝) | ◎ | 肝の旨味と日本酒がよく合い、臭みも消える |
| 唐揚げ(身) | ○ | 淡白な身に下味をつけて揚げると食感と風味が引き立つ |
| 酢の物(皮) | ○ | コラーゲン豊富な皮を湯引きしてポン酢でさっぱり |
| あん肝ポン酢 | ◎ | 茹でた肝を冷やしてポン酢と和える定番の酒肴 |
| 味噌煮 | ○ | 肝や卵巣と一緒に煮ると、ご飯にも合う甘辛味に |
| 炊き込みご飯 | △ | あまり一般的ではないが、肝や煮汁を使えば旨味は濃厚 |

現役和食調理師のヒント
あんこうは**下処理(ぬめり取り・臭み抜き)が重要な魚です。家庭で調理する場合は、下処理済みの鍋用パックを選ぶと失敗が少なく、七つ道具もすべて活用できます。
鮟鱇の栄養素(食品成分表)
あんこう(生)
可食部100g当たり
| 栄養素 | 生 | 単位 |
|---|---|---|
| 廃棄率 | 0 | % |
| エネルギー | 54 | ㎉ |
| 水分 | 85.4 | g |
| タンパク質 | 13.0 | g |
| 脂質 | 0.2 | g |
| 食物繊維(総量) | – | g |
| 炭水化物 | 0.3 | g |
| ナトリウム | 130 | ㎎ |
| カリウム | 210 | ㎎ |
| カルシウム | 8 | ㎎ |
| マグネシウム | 19 | ㎎ |
| リン | 140 | ㎎ |
| 鉄 | 0.2 | ㎎ |
| 亜鉛 | 0.6 | ㎎ |
| 銅 | 0.04 | ㎎ |
| マンガン | – | ㎎ |
| ヨウ素 | – | ㎍ |
| セレン | – | ㎍ |
| クロム | – | ㎍ |
| モリブデン | – | ㎍ |
| ビタミンA(レチノール) | 13 | ㎍ |
| ビタミンA(β-カロテン) | – | ㎍ |
| ビタミンD | 1.0 | ㎍ |
| ビタミンE(トコフェロールα) | 0.7 | ㎎ |
| ビタミンK | – | ㎍ |
| ビタミンB1 | 0.04 | ㎎ |
| ビタミンB2 | 0.16 | ㎎ |
| ナイアシン | 1.7 | ㎎ |
| ビタミンB6 | 0.11 | ㎎ |
| ビタミンB12 | 1.2 | ㎍ |
| 葉酸 | 5 | ㎍ |
| パントテン酸 | 0.21 | ㎎ |
| ビオチン | – | ㎍ |
| ビタミンC | 1 | ㎎ |
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鮟鱇の英語・漢字表記

| 表記 | 内容 |
|---|---|
| 漢字 | 鮟鱇 |
| ひらがな | あんこう |
| 英語表記 | anglerfish(アングラーフィッシュ) |
| 英語別名 | monkfish(モンクフィッシュ) |
| 鮟鱇の肝 | monkfish liver ankimo |
あん肝は寿司店や和食店では “ankimo” としてそのまま通じることが増えています。
海外では「Japanese foie gras(日本のフォアグラ)」と紹介されることもあります。
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