菱の実（ひしのみ）とは？旬・食べ方・英語表記まで徹底解説

「菱の実（ひしのみ）」は、秋の水辺で収穫される珍しい実で、栗のようなホクホクとした食感と香ばしさから「水栗」とも呼ばれます。
英語では “Water caltrop（ウォーター・カルトロップ）” といい、その独特な形から“まきびし”を意味する「caltrop」に由来しています。

本記事では、菱の実の旬の時期・下ごしらえ・食べ方・栄養・英語表記までを、現役和食調理師がやさしく解説。秋の味覚として楽しむだけでなく、海外での呼び名や文化的な背景も一緒に学べる内容になっています。

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菱の実の旬 ～おいしい時期～

ひしのみ

菱の実とは ～解説～

菱の実（ひしのみ）は、ヒシ科ヒシ属の一年草「ヒシ（Trapa japonica）」の果実です。
日本各地の湖や沼などの水面に葉を広げ、水中で実をつけます。かつては全国の水辺でよく見られましたが、現在では 福岡県・佐賀県・滋賀県 など、一部地域を中心に収穫されています。

夏に白い花を咲かせ、秋が深まる頃には実が黒く硬くなって食べ頃を迎えます。その形が「まきびし（撒菱）」に似ていることから、戦国時代には忍者が敵の追手を防ぐ道具として利用したとも伝えられています。

殻は非常に硬く、中には白くてやわらかい果肉が詰まっています。デンプンを約50％以上含み、ゆでたり蒸したりすると栗のようなほくほく感があり、香りは控えめでクセがなく、レンコンと栗を合わせたような食感が特徴です。

中華料理で使われる「クワイ（慈姑）」にも近く、日本では塩ゆでや煮物、甘露煮などにして秋の味覚として楽しまれています。

下ごしらえ

菱の実は外殻が非常に硬く、内部に軽いえぐみ（あく）があります。
ゆでる前のあく抜きと加熱処理が大切なポイントです。

下処理の手順

1️⃣ 水にさらす（あく抜き）
　殻つきのまま軽く洗い、たっぷりの水に2時間～1日ほど浸けておきます。
　これでえぐみが抜け、茹で上がりがやわらかくなります。

2️⃣ 塩を加えてゆでる
　鍋に菱の実を入れ、水から火にかけます。
　塩は水量の2～3％（1Lの水に対して約20〜30g）が目安です。
　沸騰したら弱火にし、15〜25分ほど、好みの硬さになるまで茹でます。

3️⃣ 粗熱をとって皮をむく
　茹で上がったら湯を切り、少し冷ましてからナイフやペンチで殻を割り、
　中の白い実を取り出します。
　※冷やしすぎると殻が硬くなり、剥きにくくなります。

現役和食調理師のヒント

再加熱する場合は、少し硬めに茹でておくと形が崩れにくくなります。
冷凍保存する際は、茹でてから皮をむき、小分けにすると便利です。

主な品種群

• オニビシ
• ヒメビシ
• トウビシ

菱の実を使った料理

菱の実は、ほくほくとした食感とやさしい甘みが特徴で、ゆでたり蒸したりして食べるのが一般的です。シンプルに塩ゆでするだけでも栗のような風味が楽しめますが、一手間加えることでさまざまな料理に応用できます。

菱の実の栄養素 （食品成分表）

菱の実は炭水化物が多く、でんぷん質が全体の約50％を占めます。エネルギー源として優れており、昔は保存食や兵糧としても利用されていました。

また、たんぱく質・カリウム・鉄・亜鉛 などのミネラルも含み、特にカリウムは体内の塩分バランスを整えるはたらきがあるとされています。食物繊維も適度に含まれており、栗やレンコンに近い栄養バランスです。

ひし　（生）
可食部100ｇ当たり

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菱の実の英語・漢字表記

菱の実の英語名は “Water caltrop（ウォーター・カルトロップ）” です。
「caltrop」とは古代ヨーロッパで使われた“まきびし”を意味し、トゲのある独特の形がそれに似ていることから、この名がつきました。
また、地域によっては “Water chestnut（ウォーター・チェスナット）” や“Buffalo nut（バッファロー・ナット）” と呼ばれることもあります。

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この記事を書いた人
現役の和食調理師／おかだ けんいち（調理歴25年以上）

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