しょうゆは日本の食卓に欠かせない調味料ですが、「こいくち」と「うすくち」の違いを正確に説明できる人は意外と少ないかもしれません。実はこの2つ、味の濃さではなく“色と塩分の違い”がポイントです。
この記事では、調理師の視点から使い分けのコツをわかりやすく解説します。
結論:しょうゆは「色」で使い分ける

結論から言うと、料理の仕上がり色を基準に選ぶのが正解です。
たとえば、出汁の色を淡くしたい、素材の色を残したい、または素材そのものの味を引き立てたい場合は「うすくち醤油」を選びます。
ただし注意点が2つあります。
- 塩分濃度はうすくちの方が高い(約18〜19%)
こいくちは約16%前後。見た目が薄いからといって多く入れると、塩分過多になりやすい点に注意。 - うすくちは香り・コク・旨味が控えめ
発酵期間が短く、熟成が浅いため、味にまろやかさを求める料理にはやや不向きです。
ちなみに筆者(調理師)は料理の色を整えるためにこいくちと混ぜて使うことがあります。
塩分を調整しながら、自分の思う「おいしそうな色」に近づけるためです。
こいくち醤油とうすくち醤油の違い

| 項目 | こいくち醤油 | うすくち醤油 |
|---|---|---|
| 生産量 | 約80% | 約12% |
| カロリー(100g) | 約60 kcal | 約77 kcal |
| 塩分濃度 | 約16% | 約18〜19% |
| 色 | 18番未満(濃い) | 22番以上(淡い) |
| 無塩可溶性固形分 | 16%以上 | 14%以上 |
| 全窒素分 | 1.50%以上 | 1.15%以上 |
| 香り | 標準(しっかり) | 控えめ |
| コク | 標準 | あっさり |
| 旨味 | 標準 | 控えめ |
| 熟成期間 | 長い | 短い |
| 合う出汁 | かつおだし | 昆布だし |

現役和食調理師のヒント
全窒素分が多いほど「旨味」が強く、無塩可溶性固形分が多いほど「甘み・深み」があります。
こいくち醤油の特徴と使い方

こいくちは、全国で最も流通している“基本のしょうゆ”です。「しょうゆ」とだけ書かれている場合、基本的にこの濃口を指します。香りやコク、旨味のバランスがよく、万能調味料としてどんな料理にも合います。
使用例:
- すき焼き
- 照り焼き
- そばつゆ
- あら炊き
- 親子丼
- たれ類全般

現役和食調理師のヒント
料理の“基本色”をつくるのが濃口。迷ったらまず濃口から始めてみると、失敗が少なくなります。
うすくち醤油の特徴と使い方

見た目は淡く上品ですが、塩分はやや高め。
香りやコクを抑え、素材の風味や色を活かすのが特徴です。
関西地方を中心に使われることが多く、“出汁文化”とともに発展したしょうゆでもあります。
使用例:
- 吸い物
- 茶碗蒸し
- 炊き込みご飯
- 白身魚の煮付け
- 若竹煮・菜の花の煮びたし
- うどんだし

現役和食調理師のヒント
「うすくち=味が薄い」ではなく、“引き算のしょうゆ”。出汁や素材を主役にしたい時に使うと料理が格段に上品になります。
うすくち醤油とこいくち醤油の使い分け方
使い分けのポイントは「見た目・味・塩分バランス」の3つ。
| 判断基準 | おすすめ |
|---|---|
| 見た目を薄く仕上げたい | うすくち醤油 |
| コク・香ばしさを出したい | こいくち醤油 |
| 塩分を抑えたい | こいくち醤油 (使用量が多くても塩分が低め) |
| だし中心の料理 | うすくち醤油 |
| 肉・魚の味付け | こいくち醤油 |

現役和食調理師のヒント
代用時の注意。うすくちを同量で代用すると塩辛くなりやすいので、分量を8割程度に減らすのがコツです。
まとめ:しょうゆは「色」と「塩」で選ぶ
- 料理の基本はこいくち、上品な仕上がりにしたい時はうすくち
- うすくちは塩分が高く、旨味は控えめ
- 混ぜて使うことで、見た目と味のバランスを調整できる
- 出汁との相性:こいくちはかつおだし、うすくちは昆布だし
しょうゆの選び方を変えるだけで、料理の仕上がりがぐっと変わります。
色・香り・味、この三つのバランスを意識することが“和食の美しさ”をつくる第一歩です。
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