【舞茸が黒くなる理由】加熱すると色素が出るのはなぜ?安全性や対処法も解説

生の舞茸をざるに盛った写真|そのままでも褐変反応を起こすポリフェノールを含む TOP
舞茸は加熱によってポリフェノールが酸化し、煮汁が黒くなることがあります

舞茸を鍋や味噌汁に入れると、スープが黒っぽくなって驚いたことはありませんか?

「これって腐ってる?」
「食べても大丈夫?」

と不安になる方も多いですが、実はこれは舞茸に含まれる色素や酵素による自然な反応です。むしろ栄養が溶け出したサインでもあります。
本記事では、舞茸の煮汁が黒くなる理由と安全性、黒くなりにくくする調理のコツをわかりやすく解説します。

舞茸を加熱すると汁が黒くなるのはなぜ?

舞茸を煮込んだときに、汁が黒っぽく変色して「これ大丈夫?」と不安になる方は多いものです。しかし、この現象は舞茸特有の自然な反応であり、傷んでいるわけではありません。

黒い色の正体は「ポリフェノール」

舞茸にはポリフェノールという色素成分が含まれています。加熱によって細胞が壊れると、このポリフェノールが煮汁へ溶け出し、黒っぽい色になります。これは、なすやごぼうが煮汁を変色させるのと似た仕組みです。

酵素(チロシナーゼ)の働きで酸化する

舞茸には「チロシナーゼ」という酵素が含まれており、ポリフェノールが空気や熱に反応することで酸化が進み、褐色〜黒色に変化します。このときに生成されるのは、メラニンのような黒い色素です。

刻む・冷凍するほど黒くなりやすい

舞茸を細かく切ったり冷凍したりすると細胞が壊れやすくなり、色素が流出しやすくなるため、煮汁がより黒く見えることがあります。長時間煮込む鍋料理や味噌汁でも同様です。

黒くなった舞茸は食べても大丈夫?

舞茸の吸い物の煮汁が黒くなった様子|酵素反応による自然な変色
煮汁が黒くなるのは自然な酵素反応であり、腐敗ではありません

煮汁が黒くなった舞茸を見て「腐っているのでは?」「体に悪くない?」と心配になる方もいます。しかし、この変色は自然な酸化反応によるものであり、基本的には問題なく食べることができます。

色が黒い=傷んでいるとは限らない
黒くなる原因は、舞茸に含まれるポリフェノールや酵素による褐変反応です。新鮮な舞茸でも起こるため、変色だけで劣化を判断することはできません。

腐敗時の特徴は「色」ではなく「におい・ぬめり」
以下のような状態の場合は、食べるのを避けましょう。

食べられる黒変食べないほうがよい状態
煮汁が黒っぽくなる強い酸っぱいにおい/アンモニア臭
加熱後に黒くなる生の状態で黒ずみ・ぬめりがある
舞茸の表面はきれい糸を引く・ベタつく

黒くなるだけであれば安全ですが、異臭や粘りがある場合は要注意です。

黒い汁には栄養も含まれている
舞茸には「β-グルカン」や「MXフラクション」などの健康成分が含まれており、煮汁の中にも溶け出します。黒い色素はポリフェノールの一種であり、むしろ抗酸化作用を持つ成分として知られています。👉そのため、鍋や味噌汁では「汁ごと食べる」調理法が理想的です。


舞茸が黒くなりやすい条件

舞茸の煮汁が黒くなるのは自然な現象ですが、調理方法や状態によって色の出方には違いがあります。以下のような条件がそろうと、黒さが強く出やすくなります。

細かく刻む・手で裂きすぎる
舞茸を細かく切ったり、強く裂いたりすると細胞壁が壊れやすくなります。その結果、ポリフェノールや酵素が外に出やすくなり、褐変反応が進みます。
※大きめに裂くか、軽く手でほぐす程度にすると色の出方は穏やかになります。

冷凍した舞茸を加熱する
舞茸を冷凍すると細胞が壊れやすくなります。解凍後に加熱すると、ポリフェノールが一気に流れ出し、汁が黒くなりやすくなります。※冷凍舞茸はうま味が増すと言われる一方、煮汁の変色は強く出ることがあります。

長時間煮込む料理
鍋料理やスープなどで長く加熱すると、色素や栄養がどんどん煮汁に溶け出し、黒みが強くなります。「最初に炒める」「仕上げに加える」などの工夫で変色をやや抑えることが可能です。

④空気に触れる機会が多い調理
包丁で切る・水洗いを長くする・空気にさらす時間が長いなどの工程があると、ポリフェノールの酸化が促進されます。

現役和食調理師のイラスト|25年以上の経験から料理のヒントを伝えます

現役和食調理師のヒント

このような条件が重なると、舞茸の黒変現象が顕著になりますが、安全性には問題ありません。


舞茸が黒くならないようにする方法

舞茸と糸こんにゃくの和え物|炒めてから調理することで黒変を抑えることも可能
炒めてから調理すると色素が出にくく、見た目もきれいに仕上がります

黒くなる現象は自然なものですが、料理によっては見た目が気になる場合もあります。色をできるだけ抑えたいときには、以下の方法が有効です。

酸(酢・レモン汁)を加える
舞茸に含まれる「チロシナーゼ酵素」は酸性環境では働きにくくなります。
煮汁に少量の酢やレモン汁を加えて調理すると、酸化反応が進みにくくなり、色が出にくくなります。

先に油で炒める
酵素は高温になると失活するため、鍋に入れる前に軽く油で炒めてから煮込むと、酸化反応が進みにくくなります。また、炒めることで香りや風味が引き立ちます。
✅ 炒めもの → スープという順番も効果的。

加熱時間を短くする
舞茸を長時間煮込むと、ポリフェノールが多く溶け出し、黒くなりやすくなります。仕上げに加える、さっと煮るなどの方法で色の出方をある程度抑えることができます。

大きめに裂いて使う
細かく刻まず、大きく手で裂く程度にして使うことで細胞の破壊を抑え、色素の流出を少なくできます。

現役和食調理師のイラスト|25年以上の経験から料理のヒントを伝えます

現役和食調理師のヒント

舞茸が黒くなっても問題はなく、むしろ栄養が溶け出しているサインと考えることもできます。見た目が気になる料理以外では、無理に抑える必要はありません。


まとめ|黒くなる現象は正常、汁ごと食べるのがおすすめ

舞茸を加熱したときに煮汁が黒くなるのは「ポリフェノール」や「チロシナーゼ酵素」が熱や酸素と反応して起こる自然な現象です。新鮮な舞茸でも起こるため、変色だけで傷みと判断する必要はありません。

また、黒い煮汁には「β-グルカン」や「ポリフェノール」などの栄養も溶け込んでおり、汁ごと食べることで健康的な効果も期待できます。

見た目が気になる場合は、油で炒めてから調理する・酢やレモン汁を加える・長時間加熱を避けるなどで、ある程度黒変を抑えることも可能です。

✅ 舞茸の黒い煮汁=「自然な褐変反応」
✅ 腐敗ではなく、安全に食べられる
✅ 栄養が溶け出しているため、汁ごと食べるのがおすすめ

安心して舞茸料理を楽しんでくださいね。

調理師プロフィール画像
この記事を書いた人
現役の和食調理師/おかだ けんいち(調理歴25年以上)

プロフィールを見る
タイトルとURLをコピーしました