北海道の夏を代表する味覚「花咲蟹(はなさきがに)」は、濃厚な旨みと独特の香りが魅力の高級ガニです。タラバガニや毛ガニにも負けない味わいで、ゆでても焼いても身がしっかりとして食べ応えがあります。
本ページでは、花咲蟹の特徴・旬の時期・おいしい剥き方・英語表記までを現役和食調理師がわかりやすく解説します。北海道の漁期や産地の違い、食べる際のコツも紹介しているので、これから花咲ガニを味わいたい方や通販で購入を考えている方にも役立つ内容です。
💡濃厚な旨みを最大限に味わうコツもお伝えします。
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花咲ガニの旬 ~おいしい時期~
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花咲蟹(はなさきがに)は、北海道の根室沿岸を中心に7月中旬から9月下旬にかけて漁が行われます。漁期は地域によって多少異なりますが、根室では毎年7月10日ごろに解禁され、9月末で終了するのが一般的です。北海道庁の定める漁獲可能期間は4月1日〜7月15日までとなっていますが、実際には資源保護のため操業が制限されることが多く、本格的な旬として味わえるのは7月〜9月の夏季限定です。
この時期の花咲蟹は、身入りがよく味が濃厚。特に8月は「最盛期」と呼ばれます。
一方、春先(4〜6月)にも一部の地域で漁が行われますが、この頃の花咲蟹はまだ身の張りが弱く、旨味も少なめ。市場では「旬の走り」として扱われることが多いです。
つまり、花咲蟹のもっともおいしい旬の時期は7月〜9月。特に夏の盛りにかけては、ぷりっとした身と濃厚なカニ味噌を楽しむことができます。
(出典: 北海道庁 水産課「ハナサキガニの資源状況について」)

現役和食調理師のヒント
旬の花咲蟹を選ぶなら、流通開始直後の7月中旬〜8月上旬が最もおすすめ。茹で上げ直後であれば身が引き締まり、甘味と旨味が濃厚になります。冷凍・チルド品を使う場合は、解凍時の水分流出に注意して、弱めの冷蔵解凍が望ましいです。
花咲蟹とは ~解説~

花咲蟹(はなさきがに)は、北海道・根室沖を中心に水揚げされる高級ガニで、タラバガニ属の一種(学名:Paralithodes brevipes)です。分類上はカニではなく、ヤドカリの仲間に近い生き物です。
漁期は主に7月中旬〜9月下旬。産卵期の6〜7月を過ぎると身入りが良くなり、夏の北海道の味覚の代表格として珍重されます。
漁獲量は限られており、根室や釧路産の天然ものは希少価値が高い一方、ロシア産も多く輸入されています。
名前の由来と生息地
名前の由来は、主な産地である根室市の花咲港。
茹でると鮮やかな朱色に変わることから「花が咲いたようだ」とも言われ、「花咲蟹(はなさきがに)」の名が全国に広まりました。
生息地は北海道東部からロシア沿岸の水深30〜100m前後の岩礁・昆布帯。
昆布の多い海に棲むことから「コンブガニ」とも呼ばれます。甲羅は約15cmと小ぶりですが、脚は太く短く、殻のトゲが発達しているのが特徴です。
地元・根室では、花咲蟹を使った郷土料理「鉄砲汁(てっぽうじる)」が有名です。
殻ごと煮出した濃厚な出汁が味噌とよく合い、花咲蟹ならではの旨味を堪能できます。
味わい
味わいは、タラバガニよりも身が締まり、コクと甘みが強いのが特徴。脚の身は太くしっかりとしており、噛むほどに旨味が広がります。カニ味噌は脂分が多く、濃厚ながらもやや磯の香りが強いので、酒蒸しや鉄砲汁にすると風味が引き立ちます。

現役和食調理師のヒント
花咲蟹は全身に鋭いトゲがあり、殻も厚いため、キッチンバサミを使って殻を割ると安全で効率的です。濃厚な味わいを活かすなら、シンプルに塩ゆでや鉄砲汁にするのが一番のおすすめです。
くわしい剥き方のコツ→花咲ガニの食べ方
目利き

花咲蟹(はなさきがに)は殻が厚くトゲが多いカニで、見た目では鮮度や身入りの良し悪しが分かりにくいのが特徴です。購入時は以下のポイントをチェックしましょう。
鮮度の良い花咲蟹の見分け方
| チェックポイント | 見分け方・理由 |
|---|---|
| 重み | 手に持ったときにずっしりと重みを感じる個体は、身がしっかり詰まっています。軽いものは脱皮直後や水分が抜けた個体の可能性があります。 |
| 殻の硬さ | 甲羅が硬く、トゲの先までしっかりしているものが◎。柔らかいものは脱皮直後で、身入りが悪いことが多いです。 |
| 甲羅の色 | 茹で済みの場合は全体に鮮やかな朱赤色で、黒ずみがないものを選びましょう。茹でムラがあるものは加熱や保存状態に注意が必要です。 |
| 脚の付け根 | 黒ずみや乾燥が見られるものは避けるのが無難。冷凍焼けや鮮度低下のサインです。 |
| 脚の状態 | 脚が欠けていない個体は輸送中の扱いが丁寧で、身も崩れにくい傾向があります。 |
花咲蟹は漁獲後すぐに浜ゆでされるケースが多く、冷凍品も一般的です。冷凍の場合は解凍時にドリップ(旨み成分を含む水分)が多く出ないものを選ぶと良いでしょう。
通販で購入する際は「浜ゆで・急速冷凍」「冷凍焼け防止包装」などの表示を確認すると安心です。
花咲蟹と相性の良い食材

| 食材 | 相性の理由 |
|---|---|
| 大根 | 花咲蟹の濃厚な出汁を吸いやすく、味噌汁や鍋に最適。鉄砲汁の定番具材。 |
| 長ねぎ | 磯の香りをやわらげ、甘みを引き出す。焼きガニや鍋物に好相性。 |
| 味噌 | 花咲蟹の強い旨味と香りをまとめる調味料。鉄砲汁や味噌バター炒めに。 |
| しょうが | 生臭さを消し、蟹の甘みを引き立てる。茹で蟹のつけだれや汁物に。 |
| バター | 北海道らしい組み合わせ。コクと甘みが加わり、焼きガニ・甲羅焼きに◎。 |
| わかめ | 同じ昆布帯の風味が重なり、磯の香りが自然にまとまる。汁物に最適。 |
| 豆腐 | 出汁を吸って上品な味に仕上がる。蟹鍋や味噌汁の具としておすすめ。 |
| じゃがいも | 甘みとほくほく感が花咲蟹の塩味とマッチ。北海道の家庭料理にも。 |
| レモン | 濃厚な身のあと味をさっぱりと仕上げる。茹で蟹・サラダに。 |
花咲蟹に合う調理法

| 調理法 | 特徴・ポイント |
|---|---|
| 茹でる | 浜ゆでが定番。塩分1.5〜2%の湯で茹でると身が締まり、甘みが際立つ。 |
| 煮る | 出汁に蟹の旨味が溶け出し、味噌や野菜と好相性。磯の香りが強い花咲蟹に最適。 |
| 焼く | 香ばしい香りと蟹味噌のコクが楽しめる。炭火やグリルで軽く炙るのがおすすめ。 |
| 蒸す | 身がふっくら仕上がり、旨味を逃がさない。日本酒を少量加えると香りが立つ。 |
| 炒める | 味噌やバターと合わせると濃厚な一品に。中華風・和風どちらでも合う。 |
| 汁物 | 殻ごと煮出すことで深い旨味が出る。濃い味噌や根菜と合わせて。 |

現役和食調理師のヒント
花咲蟹は火を通しすぎると身が硬くなりやすいため、再加熱する際は短時間で仕上げるのがコツです。鉄砲汁や味噌汁に使う場合も、最後に蟹を加えて軽く温める程度で十分旨味が出ます。
花咲蟹の栄養素 (食品成分表)
現在、花咲蟹(はなさきがに)は文部科学省「日本食品標準成分表(八訂・増補2023)」に個別データが掲載されていません。そのため、本ページでは数値データの掲載を控えています。
ただし、花咲蟹はタラバガニ属に分類されることから、一般的なカニ類と同様に高たんぱく・低脂質・低カロリーの食材です。ビタミンB12・亜鉛・タウリンなどを多く含み、疲労回復や貧血予防に役立つとされています。
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花咲カニの英語表記

| 項目 | 表記・内容 |
|---|---|
| 標準和名 | 花咲蟹(はなさきがに) |
| 英語名 | Hanasaki crab Spiny king crab |
| 学名(ラテン名) | Paralithodes brevipes |
| ローマ字表記 | Hanasaki-gani |
| 発音記号(IPA) | /hɑːnɑːsɑːki kræb/ (ハーナサーキ・クラブ) |

現役和食調理師のヒント
海外では “spiny king crab” と表現しても具体種が伝わらないことがあるため、“Hanasaki crab (spiny king crab)” のように併記すると正確に伝わります。
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