いかなご(玉筋魚)とは?成魚との違いや旬・佃煮などの食べ方を解説

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春先になるとスーパーに並ぶ「いかなご」は、兵庫県などで親しまれている魚で、特に佃煮(くぎ煮)として有名です。実はこの「いかなご」、成魚と幼魚では呼び名や用途が異なり、それぞれ違った楽しみ方があります。このページでは、いかなごの旬や特徴、食べ方、そして成魚との違いまで、調理師の視点でわかりやすく解説します。

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玉筋魚の旬~おいしい時期~

いかなご

▶ 旬の野菜・魚介【年間カレンダー】

いかなごの旬は、春先です。
とくに兵庫県・瀬戸内海沿岸では、3月ごろに出回る新子(しんこ)=稚魚が春の味覚として親しまれています。

名称旬の時期特徴
新子(しんこ)
※稚魚
2月下旬〜3月中旬主に佃煮(くぎ煮)や釘煮として用いられる
成魚(フルセ)3月中旬〜4月上旬焼き物や干物用に。脂がのって骨がしっかり

「いかなご=春の風物詩」と言われる理由

兵庫県を中心に、「いかなごのくぎ煮」が炊き始められると、春の訪れを感じる家庭も多いほど、地域に根ざした食文化になっています。新子は水揚げからすぐに鮮度が落ちるため、この時期にしか味わえない貴重な食材です。

いかなごとは ~解説・特徴~

いかなご(玉筋魚)は、スズキ目イカナゴ科の小魚で、最大で全長15〜20cmほどになる細長い体形の魚です。地域によっては「かなぎ」「こうなご」「メロウド」とも呼ばれます。


幼魚と成魚で呼び名が変わる

いかなごは成長段階によって呼び名と用途が異なります。

呼び名成長段階主な用途
新子稚魚(体長5〜10cm)佃煮(くぎ煮)
釜揚げ
天ぷらなど
フルセ成魚(10cm以上)焼き物
唐揚げ
干物など

味・食感の特徴

  • 新子:やわらかくてクセがなく、甘辛い味付けと相性抜群
  • 成魚:身がしっかりしており、加熱調理に向く歯ごたえ

とくに新子の佃煮は、「春の風物詩」として家庭料理に根付いている代表的な食べ方です。

現役和食調理師のイラスト|25年以上の経験から料理のヒントを伝えます

現役和食調理師のヒント

いかなごは鮮度が命。水揚げされたその日に調理できるなら、シンプルに釜揚げや生姜煮にしても美味しいですよ。成魚は下処理をすれば骨ごと食べられ、カルシウム補給にもおすすめです。

地方名・呼び名の違い

「いかなご」は地域や成長段階によって、さまざまな呼び名があります。とくに関西や瀬戸内地方では、春の家庭料理として親しまれている魚です。

地域呼び名備考
兵庫
大阪
瀬戸内
いかなご
しんこ
稚魚(くぎ煮など)を「しんこ」と呼ぶ
神奈川
静岡
こうなご主に釜揚げ・しらすと同様に流通
東北地方メロウド成魚の干物や煮付けとして親しまれる
富山かなぎ地元の特産として販売される
英語名Japanese sand lance輸出時などに使われる名称
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現役和食調理師のヒント

「しんこ(新子)」という名前で売られている時期は、まさに佃煮の炊きどき。地元ではくぎ煮を炊く香りが広がる時期でもあり、春の訪れを感じる魚ですね。

いかなごの目利き(鮮度の見分け方)

いかなごは非常に傷みやすい魚のため、鮮度が味に大きく影響します。とくに新子(しんこ)の時期は、状態の良いものを選ぶことが美味しさのポイントです。

チェックポイント鮮度の良い特徴
色ツヤ透明感のある銀白色で、全体につやがある
目の色黒目がはっきりしていて、濁りがない
体の張り身がやわらかすぎず、ピンとした弾力がある
匂い生臭さがなく、海の香りがする程度
形崩れパック詰めの場合、潰れていない・折れていないものが理想
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現役和食調理師のヒント

新子はとにかく足が早い(傷みやすい)ため、購入後はできるだけ当日中に調理を。くぎ煮など保存食にするなら、下処理せずすぐに煮始めるのがベストです。

いかなごと相性の良い食材

いかなごは甘辛い味付けやだしの旨味とよく合う魚です。特に春の料理として、季節の食材との組み合わせが人気です。

食材組み合わせの理由・使い方例
生姜くぎ煮の定番。臭み消しと香り付けに欠かせない存在
実山椒佃煮に加えると、ピリッとしたアクセントと風味が加わる
醤油・砂糖煮物の基本調味料。甘辛く煮ると保存もききやすい
青ねぎ成魚を焼いた際の薬味に。香味がさわやかに仕上がる
梅干し成魚の煮付けに加えると、さっぱりとした味わいに
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現役和食調理師のヒント

特に「くぎ煮」は砂糖・醤油・生姜の黄金バランスがポイント。実山椒を加えると、上品で大人向けの味に仕上がります。冷めても美味しいのでお弁当にもおすすめですよ。

いかなごに合う調理法

いかなごは成長段階(新子・成魚)によって適した調理法が異なるのが特徴です。下記におすすめ度と理由をまとめました。

新子(しんこ)におすすめの調理法

調理法おすすめ度理由
佃煮(くぎ煮)甘辛い味付けがよく染み、春の定番料理
釜揚げやわらかく、しらすのようにご飯や和え物に最適
天ぷら小さいながらもサクっと揚がり風味豊か
酢の物身が小さく崩れやすいため、上級者向け
焼き物×小さすぎて焼きにくく、乾燥しやすい

成魚(フルセ)におすすめの調理法

調理法おすすめ度理由
唐揚げ骨ごと食べられ、食感と旨みが強い
焼き物素焼きや味噌焼きにすると香ばしく仕上がる
干物保存性が高く、旨味が凝縮される
煮物身がしっかりしているため煮崩れしにくいがやや骨が気になる
刺身×鮮度の問題と小骨が多いため不向き
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現役和食調理師のヒント

くぎ煮は煮すぎに注意!泡が大きくなってきたら火を止めるタイミングです。成魚を唐揚げにすると、骨ごと食べられてカルシウム補給にもおすすめです。

いかなごの栄養素(食品成分表)

いかなご(生)
可食部100g当たり

栄養素単位
廃棄率0%
エネルギー111
水分74.2g
タンパク質17.2g
脂質5.5g
食物繊維(総量)g
炭水化物0.1g
ナトリウム190
カリウム390
カルシウム500
マグネシウム39
リン530
2.5
亜鉛3.9
0.08
マンガン0.49
ヨウ素
セレン
クロム
モリブデン
ビタミンA(レチノール)200
ビタミンA(β-カロテン)
ビタミンD21.0
ビタミンE(トコフェロールα)0.8
ビタミンK
ビタミンB10.19
ビタミンB20.81
ナイアシン4.6
ビタミンB60.15
ビタミンB1211.0
葉酸29
パントテン酸0.77
ビオチン
ビタミンC1
参照「「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」」

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英語・漢字表記

表記内容
漢字表記玉筋魚(いかなご)
英語表記Japanese sand lance
発音記号[ˈdʒæpəniːz sænd ˌlæns]
(ジャパニーズ・サンド・ランス)
学名Ammodytes personatus
主な別名新子(しんこ:稚魚)
フルセ(成魚)
こうなご(関東名)
メロウド(東北名)

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この記事を書いた人
現役の和食調理師/おかだ けんいち(調理歴25年以上)

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