鰆(さわら)は白身魚?青魚?
旬の時期はいつ?
どんな料理にすると一番美味しいの?
春を代表する魚「鰆(さわら/Spanish mackerel)」
名前に「春」の字が入ることから春が旬と思われがちですが、実は地域や漁獲方法によって食べ頃が異なる奥深い魚です。身は上品な白身でクセがなく、焼き物から西京漬け、煮付けまで幅広く調理に使われます。
この記事では、鰆の旬の時期・特徴・地方名・目利きのコツ・おすすめ料理・栄養素・英語表記まで、調理師の視点でわかりやすく解説します。
※本記事には広告が表示されます。
鰆の旬 ~おいしい時期~
春(3月〜5月)
脂はやや少なめだが、さっぱりとした上品な味わい。西日本で人気が高い。
冬(12月〜2月)
脂がしっかりのり、濃厚な旨味。刺身・西京焼き・照り焼きに最適。
地域によって旬の見方が異なるのが鰆の特徴です。
一般的には「関西=春、関東=冬」と覚えると分かりやすいでしょう。
関西地方
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | ⑩ | ⑪ | ⑫ |
|---|
関東地方
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | ⑩ | ⑪ | ⑫ |
|---|
鰆とは ~解説~

鰆(さわら)は、体が細長く銀白色をした白身魚で、日本各地の沿岸で広く親しまれています。身はやわらかく上品な味わいを持ち、刺身・焼き物・煮物など幅広い料理に使える万能魚です。
栄養面の特徴として、鰆は高たんぱく・低脂質のヘルシーな白身魚ですが、冬に漁獲される「寒鰆」には脂がしっかりとのり、旨味が濃厚になります。また、DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸を豊富に含み、健康効果が期待される魚でもあります。
食文化においても重要な魚で、関西地方では西京味噌に漬けた「西京焼き」が有名。岡山や瀬戸内では新鮮な鰆を刺身で食べる習慣があり、京料理や懐石料理にも欠かせない存在です。さらに、春の訪れを告げる魚として縁起も良く、おせち料理に登場することもあります。
鰆は定置網や延縄漁で獲られ、瀬戸内海・日本海・太平洋沿岸などが主な産地です。ただし、身が非常にやわらかく傷みやすいため、流通や保存が難しい魚のひとつ。そのため「本当に美味しい鰆は産地で味わうのが一番」とも言われます。
- 出世魚で、40〜50cmを「サゴシ(サゴチ)」、50〜60cmを「ヤナギ(ナギ)」、60cm以上を「サワラ」と呼ぶ。
- 大きくなるほど脂がのり、価格も上がる。
- 瀬戸内海産は特に評価が高く、「鰆の値段は岡山で決まる」とも言われる。
鰆の味わい
- 身は白身魚に分類されるが、脂がのると旨味が強くなる。
- 小型は淡白、大型は脂がのってしっとりとした食感。
- 皮は柔らかく、焼き霜造りや西京漬けに適している。
- 冬の「寒鰆」は特に美味とされる。
- 産卵後(初夏)の鰆は味が落ちるので注意。
地方名
- カマチ
- トオサアラ
- サゴチ
- グッテリ
- サーラ
- サゴセ
鰆の目利き
鰆は身がやわらかく、時間が経つとすぐに劣化してしまう魚です。そのため、鮮度の見極めがとても重要です。選ぶ際には以下の点に注意しましょう。
切り身の場合
透明感のあるピンク色で、ドリップ(汁)が出ていないものが良質です。切り口が乾燥していたり、変色しているものは鮮度が落ちています。
目が澄んでいるもの
新鮮な鰆は、目が透明で輝きがあります。白く濁っていたり、くぼんでいるものは鮮度が落ちています。
体表に光沢があるもの
銀白色の体にツヤがある鰆は鮮度良好。逆に、くすんで色あせているものは避けたほうが良いです。
身に張りがあるもの
指で軽く押したとき、しっかりと弾力があるものが新鮮です。柔らかすぎるものは鮮度が落ちています。
エラの色を確認
鮮やかな赤色のエラは新鮮さの証。黒ずんでいたり茶色く変色しているものは避けましょう。

現役和食調理師のヒント
「身の張り」と「血合いの色」をしっかり見るのがおすすめです。切り身を選ぶときは、パックの中にドリップ(赤い汁)が出ていないものを選ぶようにしましょう
鰆と相性の良い食材
鰆は淡泊でクセが少ない白身魚のため、さまざまな食材と組み合わせやすいのが特徴です。特に旬を迎える春の野菜や香味野菜、柑橘類との相性が良く、季節感のある料理に仕上がります。定番の西京焼きに使われる味噌や木の芽など、和の食材と合わせることで、鰆の旨みをさらに引き立てることができます。
| 食材例 | 相性の理由・調理ポイント |
|---|---|
| 木の芽 三つ葉 生姜 ねぎ | 鰆の上品な旨味を引き立て、香りを添える。木の芽は西京焼きや味噌仕立てに◎ |
| 柚子 すだち かぼす レモン | 爽やかな酸味で脂ののった寒鰆もさっぱりと仕上がる |
| 白味噌 酒粕 醤油 味噌 | 淡白な身にコクと甘みを与え、旨味を引き立てる。西京焼きは代表的 |
| 菜の花 筍 大根 | 季節感を添え、淡白な鰆の味を引き立てる。春野菜との組み合わせは定番 |
| わかめ 昆布 | 煮物や汁物に合わせると旨味が増し、風味が広がる |
鰆に合う調理法(表)
| 調理法 | 特徴・ポイント |
|---|---|
| 塩焼き | シンプルに焼き上げ、淡泊な旨味を引き立てる。柑橘を添えるとより爽やか |
| 西京焼き | 白味噌に漬け込み、旨味と甘みをプラス。京都を代表する鰆料理 |
| 照り焼き | 醤油とみりんの甘辛味でご飯に合う一品に |
| 酒蒸し 昆布蒸し | ふっくら仕上がり、旨味が凝縮。高齢者や子どもにも食べやすい |
| 吸い物 潮汁 | 上品なだしをとり、淡白な鰆の風味を活かす |
| 煮付け | 脂ののった冬鰆を生姜と共に煮付けると絶品 |
| 刺身 焼霜造り | 新鮮な鰆は皮を炙って香ばしさを出す。旬の脂を堪能できる |

現役和食調理師のヒント
鰆はクセがなく上品な白身なので、塩焼きや西京焼きのように「シンプルに焼く」調理法が一番おすすめです。
鰆の栄養素 (食品成分表)
さわら
可食部100g当たり
| 栄養素 | 焼き | 生 | 単位 |
|---|---|---|---|
| 廃棄率 | 0 | 0 | % |
| エネルギー | 184 | 161 | ㎉ |
| 水分 | 63.8 | 68.6 | g |
| タンパク質 | 23.6 | 20.1 | g |
| 脂質 | 10.8 | 9.7 | g |
| 食物繊維(総量) | – | – | g |
| 炭水化物 | 0.1 | 0.1 | g |
| ナトリウム | 90 | 65 | ㎎ |
| カリウム | 610 | 490 | ㎎ |
| カルシウム | 22 | 13 | ㎎ |
| マグネシウム | 36 | 32 | ㎎ |
| リン | 310 | 220 | ㎎ |
| 鉄 | 0.9 | 0.8 | ㎎ |
| 亜鉛 | 1.1 | 1.0 | ㎎ |
| 銅 | 0.05 | 0.03 | ㎎ |
| マンガン | 0.01 | 0.01 | ㎎ |
| ヨウ素 | – | – | ㎍ |
| セレン | – | – | ㎍ |
| クロム | – | – | ㎍ |
| モリブデン | – | – | ㎍ |
| ビタミンA(レチノール) | 16 | 12 | ㎍ |
| ビタミンA(β-カロテン) | – | – | ㎍ |
| ビタミンD | 12.0 | 7.0 | ㎍ |
| ビタミンE(トコフェロールα) | 1.1 | 0.3 | ㎎ |
| ビタミンK | – | – | ㎍ |
| ビタミンB1 | 0.09 | 0.09 | ㎎ |
| ビタミンB2 | 0.34 | 0.35 | ㎎ |
| ナイアシン | 12.0 | 9.5 | ㎎ |
| ビタミンB6 | 0.29 | 0.40 | ㎎ |
| ビタミンB12 | 5.3 | 5.3 | ㎍ |
| 葉酸 | 8 | 8 | ㎍ |
| パントテン酸 | 1.12 | 1.16 | ㎎ |
| ビオチン | – | – | ㎍ |
| ビタミンC | – | – | ㎎ |
| 栄養素 | 含有量(焼き) | ひとこと評価 |
|---|---|---|
| ビタミンD | 12.0 µg | 魚類でも高水準。骨・免疫サポートに◎ |
| ナイアシン | 12.0 mg | エネルギー代謝を支える水溶性ビタミンが豊富。 |
| カリウム | 610 mg | 体内の水分・塩分バランス調整に。魚の中でも多め。 |
| リン | 310 mg | 骨・歯の形成に関わるミネラル。魚介類らしく高め。 |
| たんぱく質 | 23.6 g | 良質なたんぱく源。主菜として優秀。 |
▶ 栄養の全体像を知りたい方はこちら
五大栄養素・ビタミン・ミネラルをまとめたページへ
鰆の英語表記

「Spanish mackerel(スパニッシュ・マカレル)」は一般的にサワラを含むサバ科の一群を指します。日本で「鰆」と呼ばれる種類は Japanese Spanish mackerel(ジャパニーズ・スパニッシュ・マカレル)とも表記されます。
関連記事
喜知次 きちじ(Kichiji rockfish)
公魚 わかさぎ(Japanese pond smelt)
鯖 さば(Mackerel)
