一見すると地味な白身魚、でも食べてみると実力派。
**皮剥(かわはぎ)**は、肝と一緒に刺身で食べれば“冬のごちそう”に早変わり。煮付けや唐揚げでもその味は侮れません。
皮剥ってどんな魚?
旬はいつ?
肝って本当に美味しいの?
馬面剥(うまづらはぎ)との違いにも触れながら、
和食調理師として25年以上の経験をもつ筆者が、旬・味・食べ方をやさしく解説します。
※本記事には広告が表示されます。
皮剥(かわはぎ)の旬 ~身と肝の違い~
かわはぎ ~身の旬~
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | ⑩ | ⑪ | ⑫ |
|---|
かわはぎ ~肝の旬~
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | ⑩ | ⑪ | ⑫ |
|---|
身を楽しむなら、夏がおすすめ。しっかり締まった歯ごたえと淡白な旨味を味わえます。肝を味わうなら、秋〜冬。新鮮であれば生で「肝醤油」に、また鍋や煮付けにも深いコクが加わります。
季節ごとの旬の食材をもっと詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。▶ 旬の野菜・魚介【年間カレンダー】
皮剥とは ~特徴と味わい~

皮剥(かわはぎ)は、フグ目カワハギ科に属する白身魚で、主に沿岸の岩場や砂泥底に生息しています。
その名の通り、皮が硬くて剥がしやすいことから「皮剥(かわはぎ)」と呼ばれています。見た目はやや地味ですが、食材としては非常に優秀で、肝が美味しい魚として知られています。
🐟 特徴
- 背びれと腹びれが小さく、体が丸みを帯びている
- 皮は分厚く、包丁を入れると“ペリッ”と剥がれる
- 似た魚に「馬面剥(うまづらはぎ)」がいるが、顔が長くシャープな点で区別できる
- 馬面剥のほうがやや安価で流通量が多いが、味の評価は皮剥のほうが上とされることが多い
🍽 味わい
- 身はやや水分が少なく、弾力があり、上品な白身
- 淡白ながら旨味があり、刺身・煮付け・唐揚げと万能
- 冬になると肝が肥大化し、肝醤油で刺身を食べるのが定番
- 鍋や味噌汁にしても、肝のコクがだしに溶け出して絶品
皮剥と馬面剥の違い
| 項目 | 皮剥(かわはぎ) | 馬面剥(うまづらはぎ) |
|---|---|---|
| 見た目 | 丸くてずんぐり、顔が短い | スリムで顔が長い (馬のよう) |
| 味 | 身は上品な白身、肝は濃厚 | 味はやや淡白、肝も少なめ |
| 流通価格 | やや高級 | 比較的安価で入手しやすい |
| 市場での扱い | 「ホンハゲ」とも呼ばれる | 「ウマ」「バクチ」など地域名あり |

現役和食調理師のヒント
皮を剥いだときの独特な感触と、肝の旨味。
プロの現場でも「地味だけどうまい魚」として重宝されます。
皮剥の地方名
皮剥(かわはぎ)は、地域によってさまざまな呼び名で親しまれています。
中でも「馬面剥(うまづらはぎ)」との混同も多く、名称には注意が必要です。
| 地域 | 呼び名 | 備考 |
|---|---|---|
| 関東・関西 | カワハギ | 全国的に通用する一般名 |
| 九州地方 | ハゲ バクチ | 「皮を剥ぐ=ハゲ」が語源とされる |
| 山陰地方 | マルハゲ | 馬面剥と区別するための呼称(体が丸い) |
| 瀬戸内地方 | ホンハゲ | 安価な馬面剥に対し「本物のハゲ」 |
| 関西市場 | カワハギ ハゲ | 馬面剥と区別されるが混同も多い |

現役和食調理師のヒント
「ハゲ」って呼ばれるとちょっと笑っちゃいますが、市場ではちゃんと通じる名称です。
マルハゲ=かわはぎ、ケンカ相手のウマヅラハギは“ウマ”と呼ばれることも。プロの現場でも混乱することがあります。
皮剥の目利き(鮮度の見分け方)
皮剥は鮮度によって味に大きな差が出る魚です。
特に刺身や肝を楽しむなら、鮮度の高い個体を選ぶことが重要です。
✅ 鮮度の良い皮剥の見分け方
- 目が澄んでいて黒目がはっきりしている
→ 白く濁っていたり、くすんでいるものは鮮度低下のサイン - 体表にハリとぬめりがある
→ 水から揚げたばかりのようなつや感があるものが良い - 肝がしっかりしていて、色がきれい(購入時に確認できる場合)
→ 褐色がかった肝は新鮮。黄色く変色していると風味が落ちていることも - においが弱く、魚らしい香りがする
→ アンモニア臭や生臭さがあるものは避けましょう - 活け締め・神経締めされていると理想的(刺身向き)

現役和食調理師のヒント
皮剥は目と皮で判断。目が澄んでいて、皮がピンと張っていればOKです。鮮度が落ちると肝の風味も一気に落ちるので、刺身や肝醤油を楽しみたい方は要チェック。
皮剥と相性の良い食材
皮剥はクセのない白身と濃厚な肝をあわせて楽しむ魚です。
刺身、煮付け、唐揚げなど、調理法によって合う食材も変わりますが、香りや酸味を加えると味が引き立ちます。
| 食材 | 組み合わせの理由・使い方例 |
|---|---|
| ポン酢 | 肝の濃厚さと相性抜群。刺身にかけたり、肝和えに。 |
| もみじおろし | ポン酢と合わせて刺身に添えると、さっぱり感が増す。 |
| 長ねぎ | 煮付けや味噌汁の薬味に。身の淡白さを引き立てる。 |
| 大根 | 煮付けの具材として好相性。魚の旨味を吸って美味。 |
| 柚子 | 刺身や煮付けに香りづけ。冬の旬を感じる組み合わせ。 |

現役和食調理師のヒント
肝醤油だけで食べるのも絶品ですが、ポン酢+もみじおろしの組み合わせは万人ウケする黄金バランス。
煮付けにするなら、大根と一緒にじっくり炊くと料亭の味になりますよ。
皮剥に合う調理法
| 調理法 | おすすめ度 | 理由 |
|---|---|---|
| 刺身 | ◎ | 肝醤油と合わせて絶品。冬場の肝が最も美味しい。 |
| 煮付け | ◎ | 淡白な白身に甘辛だれがよく染み込み、身崩れもしにくい。 |
| 唐揚げ | ○ | 小型の個体や中骨ごと揚げると香ばしく、骨まで楽しめる。 |
| 味噌汁 | ○ | 肝の旨味がだしに溶け出し、濃厚な一杯に。 |
| 塩焼き | △ | 旨味が抜けやすく、焼き過ぎると身が硬くなりやすい。 |
| 蒸し物 | △ | 身が固くなりがちで繊細な風味が失われやすい。 |

現役和食調理師のヒント
やっぱり「肝+刺身」か「煮付け」が鉄板。どちらも素材の持ち味がストレートに伝わります。小ぶりなものなら、唐揚げにしても外はカリッと、中はふっくら。居酒屋でも密かな人気メニューです
かわはぎの栄養素~食品成分表~
かわはぎ(生)
可食部100g当たり
| 栄養素 | 値 | 単位 |
|---|---|---|
| 廃棄率 | 0 | % |
| エネルギー | 77 | ㎉ |
| 水分 | 79.9 | g |
| タンパク質 | 18.8 | g |
| 脂質 | 0.4 | g |
| 食物繊維(総量) | – | g |
| 炭水化物 | – | g |
| ナトリウム | 110 | ㎎ |
| カリウム | 380 | ㎎ |
| カルシウム | 13 | ㎎ |
| マグネシウム | 28 | ㎎ |
| リン | 240 | ㎎ |
| 鉄 | 0.2 | ㎎ |
| 亜鉛 | 0.4 | ㎎ |
| 銅 | 0.03 | ㎎ |
| マンガン | 0.02 | ㎎ |
| ヨウ素 | 33 | ㎍ |
| セレン | 35 | ㎍ |
| クロム | – | ㎍ |
| モリブデン | – | ㎍ |
| ビタミンA(レチノール) | 2 | ㎍ |
| ビタミンA(β-カロテン) | – | ㎍ |
| ビタミンD | 43.0 | ㎍ |
| ビタミンE(トコフェロールα) | 0.6 | ㎎ |
| ビタミンK | – | ㎍ |
| ビタミンB1 | 0.02 | ㎎ |
| ビタミンB2 | 0.07 | ㎎ |
| ナイアシン | 3.0 | ㎎ |
| ビタミンB6 | 0.45 | ㎎ |
| ビタミンB12 | 1.3 | ㎍ |
| 葉酸 | 6 | ㎍ |
| パントテン酸 | 0.17 | ㎎ |
| ビオチン | 0.9 | ㎍ |
| ビタミンC | – | ㎎ |
かわはぎは77kcal・たんぱく質18.8g・脂質0.4gとヘルシーで、ビタミンD 43.0µgが際立つ白身魚。淡白な身は肝醤油や柑橘と合わせると旨みが引き立ちます。
▶ 栄養の全体像を知りたい方はこちら
五大栄養素・ビタミン・ミネラルをまとめたページへ
かわはぎの英語・漢字表記

- 漢字表記:皮剥(かわはぎ)
- 英語表記:Thread-sail filefish
- 発音記号:[ˈθrɛdˌseɪl ˈfaɪlˌfɪʃ]
- カタカナ表記:スレッドセイル・ファイルフィッシュ
英語では「filefish」と言えばカワハギ科全般を指しますが、「thread-sail」はその中でも細長い背びれを持つ種類を強調しています。
関連記事
鰰 はたはた(sailfin sandfish)
羽太 はた(Sevenband grouper)
あんこうとは?旬の時期・味・部位の特徴
