鱚(きす)の旬と味わい|上品な白身魚の特徴・食べ方・英語表記を調理師が解説

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「鱚(きす)」ってどんな魚?
名前はかわいいけれど、味は? 旬はいつ? と気になる方

鱚は淡白で上品な味わいが魅力の白身魚
天ぷらや塩焼きはもちろん、洋食にも合う“繊細さが光る万能魚”です。

このページでは、鱚(きす)の旬・味・特徴・栄養・英語表記まで、
現役の和食調理師がやさしく解説します。

「天ぷらだけじゃもったいない」と思える、きすの新しい食べ方が見つかります

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鱚(きす)の旬とおいしい時期

鱚(きす)は一年を通して水揚げがありますが、最もおいしい旬は初夏から夏(5〜8月)です。
この時期は産卵前で脂がのり、身がやわらかく旨味が強くなります。水温が上がると浅瀬に近づくため、釣りでも人気のシーズンです。

一方、冬から春(12〜3月)は身が締まり、天ぷらやフライなど加熱調理に向きます。地域によって旬のずれがあり、関東では6〜8月、九州では4〜6月ごろが食べ頃とされています。

きす

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現役和食調理師のヒント

キスは脂質が非常に少ない「淡白な白身魚」ですが、初夏〜夏にかけては程よく脂が入り、天然ものの風味が際立ちます。

鱚(きす)とは?~特徴・味わい・生息域~

鱚 きす(Sand borer)

鱚(きす)はスズキ目キス科に属する白身魚で、標準和名はシロギス(白鱚)
日本各地の砂浜や浅瀬に広く生息し、「砂浜の女王」とも呼ばれるほど、姿・味ともに上品な魚です。透き通るような白身と、淡白でやさしい旨味が魅力です。


特徴

項目内容
分類スズキ目キス科シロギス属
体長一般的に15〜25cm前後。最大30cmを超える個体も存在。
形態細長い体で、先の尖った口をもち、砂中の小動物を捕食。
生息域日本沿岸の砂地や浅瀬に多く、特に太平洋側で豊富。
漁法・人気投げ釣りの代表魚として人気が高く、初夏にかけて漁獲の最盛期を迎える。
価格水揚げが多く、比較的手頃な価格で入手できる。

三重県|おさかな図鑑:シロギス


味・食感の特徴

身は透明感のある白身で、脂肪分が少なく淡白ながら旨味が強い。
刺身ではほんのり甘みがあり、天ぷらやフライではふっくら柔らか
火を通しても硬くならず、繊細な食感を保つのが特徴。
骨が細く、扱いやすいため家庭料理にも向く魚です。

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鱚は味にクセがないからこそ“技術で差が出る魚”です。刺身なら切りつけの厚さで、天ぷらなら衣の薄さで味が変わる。和食の奥深さを感じさせてくれる一本です。

鱚(きす)の目利き(鮮度の見分け方)

鱚(きす)は鮮度の落ちが早い魚です。
時間が経つと身がやわらかくなり、特有の生臭さが出やすくなるため、
購入時は「見た目・弾力・匂い」の3点をしっかりチェックしましょう。


チェックポイント良い状態避けたい状態
透明感があり、黒目がくっきりしている濁って白っぽく乾いている
指で押すと弾力があり、すぐに戻るやわらかく、押すと戻らない
体色銀白色でツヤがあり、光を反射しているくすんで黄ばんでいる
鱗・皮鱗がしっかり付き、皮がピンと張っている鱗が取れやすく、皮がたるんでいる
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刺身や天ぷらに使うなら【身がしっかりしているか】が一番大切。
小さい魚ほど劣化が早いので、朝獲れ・当日パックが狙い目です。

鱚(きす)の保存方法|冷蔵・冷凍のコツ

鱚(きす)は鮮度が命の白身魚。できるだけ購入したその日のうちに調理するのが理想です。
すぐに使えない場合は、状態に合わせて正しく保存しましょう。


冷蔵保存(1〜2日以内)

短期間で使う予定がある場合は冷蔵保存でOK。
次の手順で鮮度を保てます。

  1. 頭と内臓を取り除き、軽く洗って水気をよく拭き取る。
  2. 身をキッチンペーパーで包み、ドリップ(血や水分)を吸収させる。
  3. ラップで包み、チルド室または冷蔵庫の奥(2〜4℃)で保存。

🔸おすすめ用途:刺身・天ぷら・塩焼きなど(加熱・生食どちらも可能)

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冷蔵で長く置くと、身がやわらかくなり臭みが出やすいため、翌日までに使い切るのが理想です。


冷凍保存

すぐに食べない場合は冷凍で保存します。酸化・冷凍焼けを防ぐには、空気を遮断して水分を残さないのがポイント。

  1. 頭・内臓・エラを除き、キッチンペーパーで水分をしっかり拭く。
  2. 1尾ずつラップで包み、フリーザーバッグに入れて空気を抜く
  3. -18℃以下で保存(家庭用冷凍庫で約3週間が目安)。
  4. 解凍は冷蔵庫でゆっくり自然解凍。急速解凍は身崩れや臭みの原因になります。

🔸おすすめ用途:フライ・煮付け・天ぷら用(加熱調理向き)

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刺身で食べたいなら、冷凍は避けて冷蔵で当日調理するのがベスト。
冷凍すると食感がやや落ちますが、衣をつけて揚げる料理には十分使えます。

鱚と相性の良い食材

鱚(きす)はクセのない淡白な白身魚のため、香りや酸味のある食材と組み合わせると味が引き立ちます。素材の持つ甘みを活かすなら、シンプルな塩・柑橘・味噌などがおすすめです。

食材組み合わせの理由・使い方例
大葉揚げ物や天ぷらに巻くと香りが引き立つ。さっぱり感をプラス
梅肉酢じめや和え物にすると、酸味と塩味で夏向きの味わいに
味噌漬け焼きや西京焼きに。旨味と甘みが淡白な身に合う
レモン
すだち
天ぷらや塩焼きに添えて、脂をさっぱり中和
白ごま南蛮漬けや和え物に風味とコクをプラスできる
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揚げ物にするなら「大葉×きす」の組み合わせは定番中の定番。また、刺身にするなら梅肉やすだちなどの酸味系が好相性

鱚(きす)に合う調理法

淡白でクセのない「きす」は、揚げても焼いても煮ても美味しい万能型の白身魚
中でも、素材の良さを引き出す「衣・火入れ・香り」の扱いで差が出ます。

調理法理由
天ぷら外はカリッと中はふんわり。素材の旨味を一番活かせる調理法
一夜干し身が締まり、旨味が凝縮。焼くだけで香ばしくご飯にぴったり
刺身
(薄造り)
新鮮な天然物に限るが、甘みがあり上品。梅肉や酢でさらに美味しく
塩焼き素朴な味付けで身の甘さが引き立つ。すだちや大根おろしと好相性
煮付け煮崩れしやすく淡白な味が調味料に負けやすい。やさしい味付けなら可
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現役和食調理師のヒント

鱚は“火を入れすぎない”ことが一番のポイント。特に天ぷらでは高温短時間(約170〜175℃で1分半)で揚げると、身がふっくらして旨味を逃しません。

鱚(きす)の栄養素(日本食品標準成分表)

きす
可食部100g当たり

栄養素天ぷら単位
廃棄率255%
エネルギー23473
水分57.580.8g
タンパク質18.418.5g
脂質15.20.2g
食物繊維(総量)0..7g
炭水化物7.8g
ナトリウム110100
カリウム330340
カルシウム9027
マグネシウム3129
リン210180
0.20.1
亜鉛0.50.4
0.030.02
マンガン0.080.01
ヨウ素2221
セレン3337
クロム1
モリブデン
ビタミンA(レチノール)21
ビタミンA(β-カロテン)14
ビタミンD0.60.7
ビタミンE(トコフェロールα)3.20.4
ビタミンK18
ビタミンB10.090.09
ビタミンB20.060.03
ナイアシン2.42.7
ビタミンB60.150.22
ビタミンB122.02.2
葉酸911
パントテン酸0.300.18
ビオチン2.22.3
ビタミンC11
参照「「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」」

▶ 栄養の全体像を知りたい方はこちら
五大栄養素・ビタミン・ミネラルをまとめたページへ
→ たんぱく質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラルなど、健康に必要な栄養素35種類を、分類ごとにわかりやすく解説しています。

鱚(きす)の英語・漢字表記

表記内容
漢字表記鱚(きす)
英語表記Sand borer
Japanese whiting
学名Sillago japonica
発音記号sænd ˈbɔːrər
ˈdʒæpəniz ˈwaɪtɪŋ
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海外では “sand borer” より “Japanese whiting” のほうが通じやすい印象があります。
でもどちらにしても、【「kiss」ではないので要注意!】です(笑)

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この記事を書いた人
現役の和食調理師/おかだ けんいち(調理歴25年以上)

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