ポストコーヒーの豆は「浅煎り=酸っぱい」という固定観念を裏切る月がある。2023年7月はまさにその典型で、夏でも軽すぎない“甘さの深み”を持った3種類が届いた月だった。
ブルンジの紅茶系フレーバー、キャラメルや黒糖が重なる甘さ、そしてルワンダのクレメンタインの爽やかさ。方向性は違っても「夏でもしっかり美味しい浅煎り」という軸で共通している。
この記事では、30か月継続してきた調理師の視点で、届いた3種類を冷静にレビューし、どんな人に合うか、どんな淹れ方が向くかまで具体的にまとめている。「この月の豆ってどうだった?」を一発で把握したい人向けのレビュー。
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今月届いた豆のラインナップ

チャイナ ドンカ
ホンジュラス ラ・フォルトゥーナ
サマーブレンド 2023 スウィーティ
※ 詳細レビューは後述
個別レビュー
チャイナ ドンカ

焙煎度:中煎り
産地:中国
フレーバー&香り
メロン・オレンジ・白ぶどうのような柔らかい甘さに、自然を思わせるウッディな香り。
後味に烏龍茶のニュアンスがあり、黒糖のような甘みがほんのり残る落ち着いたアロマ。
味の方向性
甘み・酸味・苦味のバランスが非常に良く、“中国茶系のすっきり感”が中心。ホットでもアイスでも崩れない飲みやすさがあり、後口はさっぱり。軽すぎず、コクもほどよく感じられるタイプ。
この豆が合う人
お茶のようなニュアンスのコーヒーが好き
甘さ・酸味・苦味のバランスを重視する
アイスでも飲みたい
スイーツ(ロールケーキなど)と合わせたい
ホンジュラス ラ・フォルトゥーナ

焙煎度:浅煎り
産地:ホンジュラス
フレーバー&香り
パイナップルやヨーグルトのような清涼感のある酸味が中心。花のアロマとハチミツの甘さが長く続き、全体的にフローラルでジューシー。発酵由来の“ほのかな乳酸系の爽やかさ”も特徴。
味の方向性
清涼感の強いフルーティータイプ。酸味は爽やかで嫌味が少なく、甘みとコクがしっかりあるためジューシー。温度が下がると甘さが伸び、果実感がより明確。酸味好きには“ややライト”だが、飲みやすさは非常に高い。
この豆が合う人
フレッシュなフルーツ酸味が好き
ヨーグルト系の爽やかさが好み
苦味控えめ・飲みやすい浅煎りが好き
ジューシー系を求める
フルーツと合わせて飲みたい
サマーブレンド 2023 スウィーティ

焙煎度:中煎り
産地:エチオピア
フレーバー&香り
ブルーベリージャムのような濃縮感ある甘い香り。シロップのようなとろみのある口当たりに、アーモンドクリームの華やかな甘さが重なる。エチオピアのフルーティーさ × インドの香ばしい甘さが共存した“甘さ特化型のポストコーヒーサマーブレンド”。
味の方向性
ライトローストらしい明るい酸味を軸に、軽やかで甘みのあるすっきりとした飲み口。ホットでも冷めても味が崩れず、アイス・急冷・水出しのどれでも成立する万能型。フルーティーで軽快、後味はスイート寄りで飲みやすい。
この豆が合う人
明るく軽めの“夏向けコーヒー”が好き
フルーティーで甘い浅煎りが好き
アイス・水出しでも美味しい豆を探している
焼き菓子と合わせたい
ほんのり香ばしさと果実感のバランスが好み
今月のまとめ
今月は「夏の飲みやすさ × 個性のある甘さ」がテーマとして共通していた。3種とも方向性は異なるが、軽さだけで終わらない“甘さの深み”がしっかり感じられるラインナップだった。
ブルンジ ウムトゥンバ
レーズンやアプリコットを思わせる果実感と紅茶のような風味が印象的。
ブルンジ カランボ
飲み心地はティーライクで夏向きだが、合わせる食べ物の幅が広く、食中にも使える万能性があった。
ルワンダ ニャルシザ ロット.2
酸味が丸く、冷めても味が崩れない安定感が際立つ一杯。
総じて、「夏でも甘さを楽しめる浅煎り」という統一感のある組み合わせ。酸味だけで押さず、どのコーヒーも“夏に飲みやすくて、でもしっかり美味しい”というバランスが取れている。
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現役の和食調理師/おかだ けんいち(調理歴25年以上)
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