「カマスの旬は夏?それとも秋?」
ネットで調べるとバラバラな情報が出てきて、結局いつが一番美味しいのか迷ってしまうことはありませんか?実は、カマスには大きく分けて「アカカマス(本カマス)」と「ヤマトカマス(水カマス)」の2種類があり、それぞれで美味しい時期も、適した料理も全く異なります。
板前として25年以上、数え切れないほどの魚を捌いてきた私が、現場の経験から断言できるのは、「種類に合わせた旬を知るだけで、カマス料理は劇的に美味しくなる」ということです。
この記事では、脂の乗りが最高な秋のアカカマスから、夏の涼を楽しむヤマトカマスの魅力まで、プロが実践する見分け方や下処理のコツを交えて詳しく解説します。
この記事を読み終える頃には、スーパーの鮮魚コーナーで迷うことなく、その時一番美味しいカマスを選べるようになっているはずです。
カマスの旬|種類によって全く異なる「食べ頃」
アカカマス(本カマス)

脂の乗りを味わうなら秋から冬、身のボリュームなら春
アカカマスには、実は大きな旬が2回あります。
本旬(9月〜12月)
厳しい冬に備えて皮下にたっぷりと脂を蓄える時期です。この時期の個体は、塩焼きにすると皮目から脂が弾け、アカカマス特有の濃厚な甘みが楽しめます。プロが「最高の一匹」として選ぶのは、間違いなくこの時期です。
裏旬(3月〜4月)
産卵に向けて栄養を蓄える時期で、市場にも多く出回ります。秋冬ほどの脂はありませんが、身がふっくらとしており、フライや煮付けなど、料理の幅が広がる楽しみな時期です。
特に10月に入ると、アカカマスの脂は一段と厚みを増し、板前としても「今が一番」と太鼓判を押せる状態になります。この時期に旬を迎える、秋の深まりを感じさせる他の魚介類については、こちらのページに詳しくまとめています。▶10月の旬な魚介類一覧|脂がのった秋の味覚を堪能する
ヤマトカマス(水カマス)

夏の暑い時期に、さっぱりと旨味を凝縮させて
アカカマスと入れ替わるように、6月から8月の「夏」に旬を迎えるのがヤマトカマスです。
別名「水カマス」と呼ばれる通り、アカカマスに比べると水分が多く、身質も柔らかいのが特徴。脂の濃厚さでは赤に譲りますが、夏の蒸し暑い時期に、塩をして軽く干した「干物」にすると、水分が抜けて旨味がギュッと凝縮されます。
「夏場にさっぱりと、でも噛むほどに味が出る」――そんな粋な楽しみ方ができるのが、このヤマトカマスの醍醐味です。
初夏の訪れを告げる6月のヤマトカマスは、さっぱりとした味わいで、梅雨時期の食卓に爽やかな風を運んでくれます。ヤマトカマスと同じく、6月にぜひ味わっていただきたい初夏の魚介類たちは、以下のボタンから確認いただけます。▶6月の旬な魚介類一覧|梅雨時に旨さが増す初夏の魚たち

現役和食調理師のヒント
旬のかますは身に透明感と弾力があり、火を入れるとふっくらジューシーに仕上がります。秋に出回るものは干物にも向いており、塩焼きにすると香ばしさと甘みが際立ちます。
かますとは~解説~

かます(魳・叺)は、スズキ目カマス科カマス属の海水魚で、細長い体と鋭い歯が特徴です。
日本近海には十数種が生息していますが、食用として市場に多く出回るのはアカカマス(ホンカマス)とヤマトカマスの2種です。干物としても馴染み深く、家庭の焼き魚でもおなじみの魚です。
体長は30cm前後になることが多く、獲れたての鮮魚は銀白色で美しく輝きます。
時間が経つとやや赤みを帯び、鮮度の変化が見た目にも現れます。
味の特徴
- 淡白でクセがなく、やさしい旨みがある
- 火を入れると身がふっくらと柔らかくなる
- 干物にすると旨みが凝縮し、香ばしさが増す
- 脂は控えめながら、秋の旬にはほどよく脂がのり非常に美味
塩焼き、干物、フライ、天ぷら、ムニエルなど和洋問わず幅広い料理に使える食材です。
皮目に独特の香ばしさがあり、焼き魚にすると旨味がいっそう引き立ちます。
分類・分布・英語表記
- 分類:スズキ目カマス科カマス属
- 学名
Sphyraena japonica(アカカマス)
Sphyraena pinguis(ヤマトカマス) - 分布
北海道南部〜九州南岸の沿岸部。太平洋・日本海・瀬戸内海に広く分布。 - 英語:Barracuda(バラクーダ)
※海外でいう大型の「オオカマス(Great barracuda)」とは別種ですが、英語表記は共通です。 - 漢字:魳(かます)・叺(かます)

現役和食調理師のヒント
身が柔らかいため、開きにして焼くと型崩れせずふっくら仕上がります。
鮮度の良いかますは、皮目に軽く塩を振って焼くだけで十分な旨味を引き出せます。
プロが教える「アカ」と「ヤマト」の決定的な違い
パッと見はそっくりな両者ですが、実は「ひれの位置」と「鱗(うろこ)の手触り」を見るだけで、誰でも簡単に見分けることができます。
【最重要】背びれと腹びれの位置をチェック
これが最も間違いのない、科学的にも確実な見分け方です。カマスを横から見て、背中にあるヒレ(背びれ)と、お腹にあるヒレ(腹びれ)の位置関係を確認してください。
- アカカマス(本カマス): 腹びれよりも「後ろ」に背びれが付いています。
- ヤマトカマス(水カマス): 腹びれと「ほぼ同じ位置」から背びれが生えています。
鱗(うろこ)の大きさと手触り
実際に触れる場合は、鱗の感触が全く違います。
- アカカマス:
鱗が大きく、剥がれやすいのが特徴です。触ると少し「ざらり」とした大きな粒感があります。 - ヤマトカマス
鱗が非常に細かく、肌に密着しています。手触りは滑らかですが、全体的に青みがかった銀色に見えます。
全体の色味と「顔つき」
- アカカマス
全体的にわずかに黄色〜赤みがかった金色を帯びており、高級感のある色艶をしています。 - ヤマトカマス
全体的に青みが強い銀色。アカカマスに比べると、少し身が細く「水っぽい」印象を受けることが多いです。
一目でわかる見分け方比較表
| 判別ポイント | アカカマス(本カマス) | ヤマトカマス(水カマス) |
| 背びれの位置 | 腹びれより後ろ | 腹びれとほぼ同じ |
| 鱗(うろこ) | 大きくて剥がれやすい | 細かくて密着している |
| 体色 | 金色〜赤みがかった銀 | 青みがかった銀 |
| 別名 | 本カマス | 水カマス |

現役和食調理師のヒント
ヤマトカマスは脂が少ないため、唐揚げや南蛮漬けにすると身の旨みが引き立ちます。脂ののったアカカマスは、塩焼きや干物で香ばしく仕上げるのが定番です。
新鮮なかますの選び方

かますは身がやわらかく傷みやすい魚のため、鮮度の見極めがとても大切です。時間が経つと体表の銀色が鈍くなり、赤みが強く出るのが特徴です。以下のポイントを押さえて選ぶと、焼いても揚げてもふっくら美味しく仕上がります。
鮮度の良いかますの見分け方
| チェック項目 | 良い例 | 注意点・避けたい状態 |
|---|---|---|
| 目 | 透明で澄んでいる 黒目がくっきりしている | 濁っているものは鮮度が落ちている証拠 |
| 体表 | 銀色に光沢がある ぬめりが少ない | 鱗がはがれやすい・ぬめりが強いものは古い |
| 身の弾力 | 指で押すとすぐに戻る弾力がある | 柔らかすぎる、へこみが戻らないものは避ける |
| エラ | 鮮やかな赤色 | 黒ずんでいたり、変色しているものは鮮度が低い |
| におい | 海水のような自然な香り | 生臭さや酸味のある臭いは避ける |
流通形態による見極めポイント
| 形態 | チェックすべき点 | コメント |
|---|---|---|
| 鮮魚 | 光沢・透明な目・赤いエラ | 時間経過で赤みが強く出るため、購入後はすぐ調理 |
| 開き・干物 | 表面に白く乾いた部分がない・脂が均一 | 脂の照りと香りが強いものほど新しい |
| 冷凍品 | 霜が少なく、ドリップ(汁)跡がない | 再冷凍されたものは食感が落ちる |

現役和食調理師のヒント
店頭で迷ったときは、まず「目と体の光沢」を最重視しましょう。光沢のある個体は身の水分バランスが保たれており、焼いてもふっくらと仕上がります。
かますの保存方法
かますは身がやわらかく、脂が酸化しやすい魚のため、購入後はなるべく早く調理するのが基本です。やむを得ず保存する場合は、状態に合わせて正しい方法を選びましょう。
生のかますの保存方法
| 保存方法 | ポイント |
|---|---|
| 冷蔵保存 | 内臓と血合いを取り除き、キッチンペーパーで水気をしっかり拭き取る。ラップで包み、密閉容器またはチャック付き袋に入れて野菜室よりも冷たい場所(チルド帯・約2℃)で保存。 |
| 冷凍保存 | 水分を丁寧に拭き取り、1切れずつラップで包む。フリーザーバッグに入れ、空気をしっかり抜いて保存。金属トレーにのせて急速冷凍すると、身崩れやドリップを防げる。 |
干物の保存方法
| 保存方法 | 備考 |
|---|---|
| 冷蔵保存 (真空パック) | 未開封なら比較的日持ちします。開封後は2〜3日以内に消費。 |
| 冷凍保存 | 1枚ずつラップで包み、フリーザーバッグに入れて密閉。焼く前に冷蔵庫で半日ほど自然解凍すると、ふっくら焼き上がる。 |

現役和食調理師のヒント
干物を冷凍保存する際は、空気をできるだけ抜くことが大切です。
解凍は常温ではなく冷蔵庫でゆっくり。身が縮まず、脂の旨みがそのまま残ります。
かますと相性の良い食材・食べ合わせ

かますはクセが少なく淡白な白身魚です。素材の味を引き立てる調味料や食材との組み合わせがポイントになります。シンプルに仕上げても、薬味や酸味、香ばしさを加えることで、奥行きのある一品になります。
相性の良い食材・組み合わせ例
| 組み合わせ | 特徴・ポイント |
|---|---|
| 塩 柚子 すだち | シンプルな塩焼きに柑橘を添えて、香りと酸味で引き立てる |
| 生姜 ネギ | 唐揚げや煮付けに。薬味で臭みを抑え、食欲増進にも効果的 |
| 梅肉 大葉 | 天ぷらやフライの薬味に。さっぱりとした後味に |
| 味噌 酒粕 | 焼き味噌漬けや西京焼き風にすると旨みが引き立つ |
| ごぼう ピーマン なす | 南蛮漬けや揚げ浸しに最適。野菜の甘みとよく合う |

現役和食調理師のヒント
カマスは皮に独特の香ばしさがあるので、焼き魚にするなら皮目をパリッと仕上げるのがコツ。グリルやフライパンでしっかり焼きつけると、香りの良さが格段にアップします。
カマスのポテンシャルを引き出す!板前推奨の調理法
カマスは「火を通すと一気に香りが立つ」のが最大の特徴です。種類に合わせた最適な火入れをご紹介します。
塩焼き:アカカマスの王道
アカカマス(本カマス)を手に入れたら、まずは迷わず塩焼き
カマスは皮に独特の旨味と香りがあります。焼く前に強めに塩を振り、皮目をパリッと焼き上げることで、中から溢れ出す濃厚な脂の甘みを閉じ込めます。
炙り刺身:皮目の脂を堪能する
鮮度の良いアカカマスであれば、ぜひ試していただきたいのが「炙り」
皮を残したままサッとバーナーやコンロで炙り、すぐに氷水で締めます。皮が焦げることで生まれる香ばしさと、溶け出した脂のコクが合わさり、普通の刺身では味わえない深みが出ます。
干物:ヤマトカマスの旨味を凝縮
水分が多いヤマトカマス(水カマス)を最も美味しく食べる方法は干物
軽く塩をして数時間から一晩干すことで、余分な水分が抜けて旨味がギュッと凝縮されます。焼いた時の身のホロホロとした食感は、ヤマトカマスならではの贅沢です。
フライ・南蛮漬け:夏のさっぱりとした一皿
ヤマトカマスの淡泊で上品な白身は、油との相性も抜群
サクッと揚げたフライや、玉ねぎ・人参と一緒に甘酢に漬けた南蛮漬けは、夏の暑い時期でも食が進む逸品です。小ぶりなものは骨まで食べられるよう二度揚げするのも板前流です。
調理法別:アカ・ヤマトの使い分けまとめ
| 調理法 | おすすめの種類 | 期待できる美味しさ |
| 塩焼き | アカカマス | 皮の香ばしさと滴る脂 |
| 炙り刺身 | アカカマス | とろける脂の甘みと香り |
| 干物 | ヤマトカマス | 凝縮された白身の旨味 |
| フライ | ヤマトカマス | さっぱりとした上品な食感 |
「カマスは地域によって様々な食べ方で親しまれています。例えば神奈川県の小田原付近では、秋の訪れを祝う行事食として『カマス寿司』が有名です。その歴史や由来については、農林水産省のサイトでも詳しく紹介されています。 [出典:農林水産省|うちの郷土料理(カマスの押し寿司)]
カマスの栄養素 ~食品成分表~
かます
可食部100g当たり
| 栄養素 | 焼き | 生 | 単位 |
|---|---|---|---|
| 廃棄率 | 40 | 40 | % |
| エネルギー | 134 | 137 | ㎉ |
| 水分 | 70.3 | 72.7 | g |
| タンパク質 | 23.3 | 18.9 | g |
| 脂質 | 4.9 | 7.2 | g |
| 食物繊維(総量) | – | – | g |
| 炭水化物 | 0.1 | 0.1 | g |
| ナトリウム | 150 | 120 | ㎎ |
| カリウム | 360 | 320 | ㎎ |
| カルシウム | 59 | 41 | ㎎ |
| マグネシウム | 42 | 34 | ㎎ |
| リン | 190 | 140 | ㎎ |
| 鉄 | 0.5 | 0.3 | ㎎ |
| 亜鉛 | 0.6 | 0.5 | ㎎ |
| 銅 | 0.05 | 0.04 | ㎎ |
| マンガン | 0.01 | 0.01 | ㎎ |
| ヨウ素 | – | – | ㎍ |
| セレン | – | – | ㎍ |
| クロム | – | – | ㎍ |
| モリブデン | – | – | ㎍ |
| ビタミンA(レチノール) | 13 | 12 | ㎍ |
| ビタミンA(β-カロテン) | – | – | ㎍ |
| ビタミンD | 10.0 | 11.0 | ㎍ |
| ビタミンE(トコフェロールα) | 0.9 | 0.9 | ㎎ |
| ビタミンK | – | – | ㎍ |
| ビタミンB1 | 0.03 | 0.03 | ㎎ |
| ビタミンB2 | 0.14 | 0.14 | ㎎ |
| ナイアシン | 4.2 | 4.5 | ㎎ |
| ビタミンB6 | 0.31 | 0.31 | ㎎ |
| ビタミンB12 | 3.3 | 2.3 | ㎍ |
| 葉酸 | 13 | 8 | ㎍ |
| パントテン酸 | 0.52 | 0.47 | ㎎ |
| ビオチン | – | – | ㎍ |
| ビタミンC | – | – | ㎎ |
カマスの英語・漢字表記と読み方

英語表記・発音
| 日本語名 | 魳・叺 |
| 英語表記 | barracuda |
| 発音記号 | [ˌbærəˈkuːdə] |
| ヨミ | バラクーダ |
英語で「かます」は一般的に barracuda(バラクーダ) と訳されますが、この単語は主に熱帯〜亜熱帯に生息するオニカマス属の大型種(特にGreat barracuda)を指します。
一方で、日本の食卓に並ぶ「アカカマス」「ヤマトカマス」は海外ではあまり一般流通していないため、細かく分けて表記されることは少なく、fish marketなどでは「barracuda(small)」や「Japanese barracuda」と表記される場合もあります。
漢字表記と由来
| 漢字 | 補足 |
|---|---|
| 魳 叺 | 「魳」は魚へんに“甚だしい”で形状や味に由来すると言われる |
「叺(かます)」は本来は藁などで編んだ袋を意味する漢字で、魚のカマスの語源とも言われています。昔、この袋にカマスを入れて運んでいたことから、魚の名前として定着したとも。
