香ばしさや風味の良さで人気のある「ライ麦パン」
一方で、ホームベーカリーで焼くには少しクセのある素材でもあります。
今回はライ麦粉を使った食パンを、家庭用ホームベーカリーで焼いてみました。膨らみはどうなるのか。生地は重くならないのか。独特の風味は、食パンとして成立するのか。
ライ麦は小麦粉とは性質が異なり、配合や水分量を間違えると「膨らまない」「詰まる」「酸味が立ちすぎる」など、失敗しやすい素材です。実際に焼いてみた結果どうだったのか。仕上がり・食感・扱いやすさを、ホームベーカリー奮闘記として正直にまとめました。
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結論

ライ麦食パンは形は崩れたが味と香りがいい出来栄えでした
焼き上がり時のライ麦特有の香ばしい香りが印象的でトーストするとサクサクとした食感と風味の良さが際立ちます。原価は300円を超えやや高めですが、通常の食パンとは明確に違う仕上がりで、いつもの食パンに飽きたときの選択肢としては十分にアリという結果です。
このレシピを試した理由
ライ麦粉を使ったパンを、ホームベーカリーでどこまで焼けるのかを一度確認しておきたかった、というのが理由です。特定の完成形を狙ったというよりも、まずは基本的な配合で焼いたらどうなるのかを知りたいという位置づけでした。「おいしいライ麦パンを作る」というより、ライ麦をこの程度入れたとき、ホームベーカリーではどんな挙動になるのか。その確認を目的として、このレシピを試しました。
レシピと条件
レシピ|ライ麦29%の食パン
※この原価表は、当時実際に使用していた材料価格をもとに算出しています。
現在は原材料価格が変動しているため、あくまで目安としてご覧ください。
| 材料 | 割合(%) | 分量 | 原価 |
|---|---|---|---|
| 強力粉 | 71 % | 160 g | 95 円 |
| ライ麦 | 29 % | 65 g | 99 円 |
| ドライイースト | 1.3 % | 3g | 16.8 円 |
| 水 | 62% | 140 cc | 7 円 |
| 生クリーム | 18 % | 40 g | 34 円 |
| 砂糖 | 4 % | 10 g | 2 円 |
| スキムミルク | 4 % | 10 g | 22 円 |
| 塩 | 2 % | 4 g | 1 円 |
| バター | 7 % | 15 g | 30 円 |
| ▼原価合計 | ー | ー | 306.8円 |
※今回使用した材料は、製菓・製パン材料専門店「コッタ」で購入しました。
同じ材料を探したい方はこちら。▶ コッタ公式サイトを見る
条件
| 項目 | 環境 |
|---|---|
| 日付 | 2022.12.22 |
| 室温 | 14℃ |
| 湿度 | 40℃ |
| 天気 | 晴れ |
| 予約設定 | あり |
| ホームベーカリーの設定 | 食パンモード 焼き上がり「淡」 |
今回使用したホームベーカリーはPanasonic SD-BH104(廃盤モデル)
発売からかなり年数が経っていますが、現在も安定した焼き上がりで現役使用中です。
実際の焼き上がりと食感
膨らみ
生地は最後まで持ち上がり、食パンとしてのボリュームは確保できました。ただし、焼き上がりの上部はやや不均一で、角がきれいに立たず、形は整っていません。ライ麦29%という配合を考えると想定内ではありますが、見た目重視の場合は調整が必要だと感じます。
焼き色
表面の焼き色は全体に落ち着いており、濃すぎる部分や焦げはありませんでした。
ライ麦特有の色味が出ていて、いかにもライ麦パンらしい見た目です。。
クラム
クラムはやや詰まり気味ですが、極端に重たい印象はありません。気泡は細かく、均一で、切った断面からもライ麦の存在感がはっきり分かる仕上がりです。ふんわり系というより歯切れの良いタイプに近い印象を受けました。
食感
焼き上がり時から、ライ麦特有のとても良い香りが立ちます。
そのまま食べても悪くありませんが、トーストすると一気に印象が変わり、
外側はサクッと、中は軽く、香ばしさが際立つ食感になりました。
なぜこの結果になったのか(仮説)

今回の仕上がりは、ライ麦粉の配合割合と、その性質による影響が大きいと考えられます。ライ麦は小麦粉と比べてグルテンを形成しにくく、生地の伸びや保持力が弱いため、29%という配合でも、生地の持ち上がり方や最終的な形に影響が出やすい素材です。
香りや食感が良かった点については、ライ麦由来の香ばしさと、糖分・油脂分を含む配合が影響していると考えられます。トースト時にサクサクとした食感が出たのは、水分保持が過剰にならず、ライ麦らしい焼き上がりになったためかもしれません。
再現するためのポイント

- ライ麦は29%前後でも生地の挙動に大きく影響するため、形よりも香りや食感を重視する前提で配合を考える。
- 細挽きライ麦粉は生地になじみやすい反面、膨らみや形の安定には不利になりやすい。
- 生クリームやスキムミルクは必須ではなく、省いた方がライ麦らしいサクサク感が出る可能性がある。
- そのまま食べるより、トーストして食べる前提で考えると、香りと食感の良さを活かしやすい。
私が作成したパンの一覧はコチラ
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現役の和食調理師/おかだ けんいち(調理歴25年以上)
和食の世界で25年以上。旬の食材や家庭でできる調理のコツを、やさしく、わかりやすくお届けしています。料理がもっと楽しく、おいしくなるきっかけになれば嬉しいです。
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