穴子(あなご)は、脂が少なくあっさりとした味わいが特徴の魚で煮穴子や白焼き、天ぷらなど和食に欠かせない食材のひとつです。うなぎと似た見た目ながら、やさしい風味で食べやすく、寿司ネタとしても人気があります。
本記事では
穴子の旬の時期や味・食感・調理法の違い、相性の良い食材や栄養価について、和食調理師が25年以上の経験をもとにわかりやすく解説。また、稚魚の「のれそれ」や英語表記「conger eel」についても補足しながら、日々の料理や買い物に役立つ情報をお届けします。
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穴子(あなご)の旬 ~おいしい時期~
のれそれ
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | ⑩ | ⑪ | ⑫ |
|---|
穴子
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | ⑩ | ⑪ | ⑫ |
|---|
穴子(抱卵)
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | ⑩ | ⑪ | ⑫ |
|---|
| 種類 | 主な旬の時期 |
|---|---|
| のれそれ(稚魚) | 2月〜4月(春) |
| 穴子(成魚) | 6月〜8月(夏) |
| 抱卵穴子(親) | 11月〜12月(冬) |
季節ごとの旬の食材をもっと詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。▶ 旬の野菜・魚介【年間カレンダー】

現役和食調理師のヒント
穴子は旬になるとふっくらやわらかく仕上がるので、煮穴子にすると絶品です。特に夏場は、暑さで食欲が落ちたときにも食べやすい、やさしい味わいが喜ばれますよ。
穴子とは ~解説~

穴子(あなご)はウナギ目アナゴ科に属する海水魚で、日本各地の沿岸や内湾の砂泥底に生息しています。見た目はウナギに似ていますが、穴子は海水魚・ウナギは淡水魚(または遡河魚)で生息環境も味わいも大きく異なります。
もっとも一般的に食用とされるのは「マアナゴ(真穴子)」で全国で広く漁獲されています。江戸前寿司の代表的なネタとして知られるほか、煮穴子・白焼き・天ぷらなどにも使われ、関西や瀬戸内では夏の味覚として親しまれています。
味と食感の特徴
- 皮に旨みがあり、皮ごと調理するのが一般的
- 脂は控えめで、あっさり上品な味わい
- 柔らかく、ふんわりとした食感が魅力
- 煮る・焼く・揚げるなど、幅広い調理法に適応
関東では煮穴子(甘辛く柔らかく煮たもの)関西では焼き穴子(香ばしく白焼きにしたもの)が主流で、地域によって食文化が異なります。
生態と別名
体は細長い円筒形で、白身の魚。側面に斑点が秤(はかり)のように並ぶため、「ハカリメ」の別名を持ちます。
稚魚はのれそれ(ノレソレ)と呼ばれ、春(2~4月)に高知・徳島などで漁獲される透明な小魚。長さ8cm前後、太さ1cmほどでゼラチン質の体をもち、ポン酢や酢味噌で食べる春の風物詩です。岡山県では、のれそれをポン酢で味わう「ベタラ」と呼ばれる郷土料理も知られています。
季節ごとの特徴
| 時期 | 状態 | 特徴・味わい |
|---|---|---|
| 2〜4月 | のれそれ(稚魚) | 透明でつるんとした食感。春の風物詩。 |
| 6〜8月 | 成魚(真穴子) | 脂がのって最も美味しい旬。蒲焼・天ぷらに最適。 |
| 11〜12月 | 抱卵穴子(親) | 身が締まり、卵のコクがある。煮穴子や酒蒸しに最適。 |
年中流通していますが、旬の穴子は夏、のれそれは春、抱卵穴子は冬と覚えるとわかりやすいです。また、大きすぎる個体よりも中型サイズ(40〜60cm程度)の方が脂と身のバランスが良いとされています。
ウナギとの違い
| 比較項目 | 穴子 | ウナギ |
|---|---|---|
| 分類 | ウナギ目アナゴ科 | ウナギ目ウナギ科 |
| 生息環境 | 海水 (沿岸・内湾) | 淡水〜汽水 (川・湖など) |
| 旬 | 夏(6〜8月) | 冬(12〜2月) |
| 味わい | あっさり 上品で軽い脂 | こってり 濃厚で脂が多い |
| 主な料理 | 煮穴子 白焼き 天ぷら 寿司 | 蒲焼 白焼き 柳川 ひつまぶし |
| 体の特徴 | 白身 斑点あり | 黒褐色で厚い皮 ぬめり強い |

現役和食調理師のヒント
穴子は「脂っこすぎず、やさしい旨み」が持ち味です。煮穴子はとろけるような柔らかさで、寿司や丼によく合います。
地方名
- ホンアナゴ
- ハカリメ
- ハム
- メジロ
- ノレソレ(幼魚)
- ベラタ(幼魚)
穴子の目利き

穴子(あなご)は鮮度が味を大きく左右する魚です。とくに刺身や白焼きで使う場合は、身の弾力・皮のツヤ・においをしっかり確認しましょう。加工品(開き・煮穴子など)は見た目の色つやと身の締まり具合がポイントです。
生の穴子(丸ごと)の選び方
| チェック項目 | 見るべきポイント |
|---|---|
| 体表の色とツヤ | 黒みが強すぎず、表面に自然なツヤとぬめりがあるものが新鮮。乾燥や白濁しているものは避ける。 |
| 身の弾力 | 指で軽く押して、しっかりと弾き返すものが理想。身が柔らかく沈むものは鮮度が落ちている証拠。 |
| におい | 海の香りがほんのりする程度が◎。生臭さや酸っぱいにおいがあるものは避けましょう。 |
開きや加工品(白焼き・煮穴子)の選び方
| 種類 | 選び方のポイント |
|---|---|
| 開き穴子(生) | 皮目に光沢があり、身が均一に並んでいるもの。乾燥や変色が見られるものはNG。 |
| 白焼き | 焼き色が薄く、ふっくらと厚みがあるものが上質。焼きすぎて固くなっているものは避ける。 |
| 煮穴子 | タレに照りがあり、身がふっくらと崩れていないものが良品。乾いているものは避ける。 |

現役和食調理師のヒント
穴子は時間が経つとぬめりが白く濁り、身がべたついてきます。ツヤがあり、身がしっかり締まっているものが“おいしい証拠”です。
のれそれとは

「のれそれ」とは穴子(マアナゴ)の稚魚を指す呼び名で、透明で細長い姿が特徴です。高知県・徳島県・愛媛県など西日本の沿岸で、春(2月〜4月頃)にしか出回らない季節限定の食材。特に高知では春の風物詩として知られ、ポン酢や酢味噌で味わう「のれそれ料理」は地域の定番となっています。
のれそれの特徴
- 分類:ウナギ目アナゴ科マアナゴ属の幼生(レプトケファルス期)
- 体長:約5〜10cm前後。無色透明でリボン状
- 味わい:淡白でクセがなく、つるんとした喉ごしが魅力
- 食べ方:ポン酢、酢味噌、生姜醤油などでさっぱりと食べる
- 旬の時期:2〜4月(高知・徳島・愛媛沿岸が主産地)
- 流通形態:産地では生、他地域では冷凍・冷蔵で出荷
稚魚段階ののれそれは、成魚とは異なり骨も柔らかく、独特の「とろり」とした食感が楽しめます。岡山県では、のれそれをポン酢で食べる郷土料理「ベタラ」としても知られています。
のれそれの注意点(食中毒リスクと安全性)
のれそれは主に生で食べられることが多いため、鮮度の管理が非常に重要です。ここでは正しい衛生知識をもとに、安全に食べるポイントを整理します。
注意すべきは細菌・腐敗によるリスク
のれそれは非常に傷みやすい魚で、細菌や腐敗菌の繁殖による食中毒が起こりやすい食材です。
| リスクの種類 | 内容 | 対策 |
|---|---|---|
| 細菌性食中毒 | 腸炎ビブリオなど、海水由来の細菌が増殖しやすい | 購入後は4℃以下で保存し、当日中に食べ切る |
| 腐敗・変色 | 白濁や異臭、ぬめりが出たものは劣化 | 透明でツヤと弾力のあるものを選ぶ |
| 誤って加熱用を生食 | 表示確認不足による誤食 | 必ず「生食用」表示を確認して購入する |
アニサキスについての正しい知識
のれそれは、マアナゴの幼生(レプトケファルス)段階であり、まだエサを摂取しない「浮遊期」の魚です。この時期にはアニサキスが感染する中間宿主(オキアミなど)を食べないため、アニサキスが寄生している可能性は極めて低いとされています。一方、成魚の穴子では内臓や筋肉にアニサキス属・ヘテロキス属が寄生する例もあるため、「のれそれ=絶対安全」と過信せず、鮮度管理を徹底することが大切です。
穴子と相性の良い食材

穴子(あなご)は、あっさりとした脂とやさしい甘みを持つ白身魚で、調味料や香味野菜との組み合わせで旨みが引き立つ食材です。加熱しても身が柔らかく、煮ても焼いても他の食材とよくなじみます。
| 食材 | 相性の理由・特徴 |
|---|---|
| ごぼう | 穴子の脂を吸い、香ばしい香りで臭みを抑える |
| 山椒 | 清涼感ある辛みが脂の後味を引き締める |
| 卵 | 穴子の淡泊な味に甘みと彩りを添える |
| きゅうり | さっぱりとした酸味で脂を中和 |
| 生姜 | 消臭効果が高く、甘辛い煮汁との相性抜群 |
| 大葉 | 爽やかな香りで夏らしい風味に |
| みょうが | 脂の多い穴子に清涼感を与える |
| 大根 | 消化を助け、脂の重さを和らげる |
| わさび | 穴子の淡白な甘みを引き締める |
| 梅肉・梅酢 | 酸味と香りが夏の焼き穴子に好相性 |
| 三つ葉・木の芽 | 初夏〜春の香りを添える季節の薬味 |
| 豆腐・湯葉 | 穴子の旨味を吸い込み、上品な味わいに |
| なす | 甘辛煮・揚げ煮で旨味が重なり合う |
| 山芋 | 滑らかさとコクを加え、消化も良い |

現役和食調理師のヒント
穴子は脂が軽く上品な魚なので、「香りを添える」「酸味で締める」「甘みで調和させる」この3方向の組み合わせが鍵です。特に、ごぼう・山椒の2つは煮る・焼く・揚げるすべての調理法で相性がよく、家庭でも使いやすい組み合わせです。
穴子とよく合う調理法

| 調理法 | 特徴・ポイント | 代表料理例 |
|---|---|---|
| 焼く | 皮目を香ばしく焼くことで旨味を閉じ込める。脂のりの良い夏に最適。 | 白焼き 蒲焼 焼き穴子丼 寿司ネタ |
| 煮る | 低温でやさしく煮ると身がふっくら柔らかく仕上がる。抱卵期の冬におすすめ。 | 煮穴子 煮付け 茶碗蒸し 煮物椀 |
| 揚げる | ふんわりした身と衣のサクッと感が絶妙。揚げすぎに注意。 | 穴子天ぷら 揚げ煮 南蛮漬け |
| 蒸す | だしの旨味を吸わせて上品に仕上がる。柚子や木の芽を添えると香りが立つ。 | 酒蒸し 蒸し寿司 穴子茶碗蒸し |
| 生(のれそれ) | 春だけの稚魚を使った珍味。透明でつるりとした食感が魅力。 | のれそれポン酢 酢味噌和え 冷菜 |

現役和食調理師のヒント
穴子は「焼きは香ばしさ、煮はやわらかさ」を楽しむ魚です。脂のりが良い夏は焼き物、旨味が凝縮する冬は煮物・蒸し物と、季節ごとに火の入れ方を変えるのが美味しさの秘訣です。
穴子の栄養素 ~食品成分表~
あなご
可食部100g当たり
| 栄養素 | 蒸し | 生 | 単位 |
|---|---|---|---|
| 廃棄率 | 0 | 35 | % |
| エネルギー | 173 | 146 | ㎉ |
| 水分 | 68.5 | 72.2 | g |
| タンパク質 | 17.6 | 17.3 | g |
| 脂質 | 12.7 | 9.3 | g |
| 食物繊維(総量) | – | – | g |
| 炭水化物 | – | – | g |
| ナトリウム | 120 | 150 | ㎎ |
| カリウム | 280 | 370 | ㎎ |
| カルシウム | 64 | 75 | ㎎ |
| マグネシウム | 26 | 23 | ㎎ |
| リン | 180 | 210 | ㎎ |
| 鉄 | 0.9 | 0.8 | ㎎ |
| 亜鉛 | 0.8 | 0.7 | ㎎ |
| 銅 | 0.04 | 0.04 | ㎎ |
| マンガン | 0.22 | 0.20 | ㎎ |
| ヨウ素 | – | 15 | ㎍ |
| セレン | – | 39 | ㎍ |
| クロム | – | – | ㎍ |
| モリブデン | – | – | ㎍ |
| ビタミンA(レチノール) | 890 | 500 | ㎍ |
| ビタミンA(β-カロテン) | – | – | ㎍ |
| ビタミンD | 0.8 | 0.4 | ㎍ |
| ビタミンE(トコフェロールα) | 2.9 | 2.3 | ㎎ |
| ビタミンK | – | – | ㎍ |
| ビタミンB1 | 0.04 | 0.05 | ㎎ |
| ビタミンB2 | 0.11 | 0.14 | ㎎ |
| ナイアシン | 2.7 | 3.2 | ㎎ |
| ビタミンB6 | 0.10 | 0.10 | ㎎ |
| ビタミンB12 | 2.5 | 2.3 | ㎍ |
| 葉酸 | 15 | 9 | ㎍ |
| パントテン酸 | 0.79 | 0.86 | ㎎ |
| ビオチン | – | 3.3 | ㎍ |
| ビタミンC | 1 | 2 | ㎎ |
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穴子の英語・漢字表記

| 項目 | 表記 |
|---|---|
| 漢字 | 穴子 |
| 読み方 | あなご |
| 英語表記 | conger eel |
| 発音記号 | [ˈkɑːŋɡər iːl](カンガー・イール) |
| 学名 | Conger myriaster ※マアナゴの場合 |
英語表記の補足
- 「conger eel」は、アナゴ科の魚全般に使われる英語名で、日本で一般的に食べられているマアナゴ(真穴子)もこの表現に含まれます。
- 稚魚の「のれそれ」は、英語では明確な定義がなく、文脈に応じて「young conger eel(稚魚)」や「glass eel」と説明されることがあります(ただし、glass eelは本来はウナギの稚魚)
英語表記についてもっと詳しく知りたい方は、こちらのページで 魚介類の漢字・英語表記一覧 をまとめています。
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