「バイ貝って“あずきバイ”と同じ?」
「白バイとの違いは?」
そんな疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
バイ貝(標準和名:バイ/学名 Babylonia japonica) は、巻貝の一種で日本海沿岸を中心に生息するバイ科の代表種です。市場では「バイ貝」「あずきバイ」「白バイ」など、地域によって呼び名が混在しており、実は別種の貝が同じ名前で扱われることも少なくありません。
このページでは、バイ貝の正しい分類・特徴・旬・食文化を、和食調理師として25年以上の筆者がわかりやすく解説します。市場で多く流通している「白バイ(=エッチュウバイ)」との違いも整理しています。
※「バイ貝」「あずきバイ」「白バイ」という名前は地域や市場によって混同されることがあります。
正式な分類では、標準和名「バイ(Babylonia japonica)」と市場で“白バイ”として流通する「エッチュウバイ(Buccinum striatissimum)」は別種です。
▶ 標準和名の「バイ貝(あずきバイ)」の解説はこのページ
▶ 食用として広く流通している「エッチュウバイ(白バイ)」はこちら
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【混同注意】バイ貝・あずきバイ・白バイの違い
市場や料理店では「バイ貝」と呼ばれる貝が複数存在し、地域によって「白バイ」「あずきバイ」など名称が異なるため、混同が多く見られます。
実際には、標準和名の「バイ」=あずきバイ(Babylonia japonica) と、市場で“白バイ”と呼ばれる「エッチュウバイ(Buccinum striatissimum)」 は分類上は別種です。
バイ貝(通称:あずきバイ)
- 標準和名: バイ
- 学名: Babylonia japonica(バイ科)
- 生息域: 本州中部〜九州の日本海沿岸
- 特徴: 殻が丸みを帯び、赤褐色の「あずき色」模様
- 味わい: 甘みと旨味が強く、煮付け・刺身・酒蒸しに最適
- 流通量: 少なめで、地域漁港での出回りが中心
エッチュウバイ(通称:白バイ)
- 標準和名: エッチュウバイ
- 学名: Buccinum striatissimum(エゾバイ科)
- 生息域: 富山湾~山陰沿岸
- 特徴: 細長く、殻の色が白っぽい(淡ベージュ系)
- 味わい: あっさりとした上品な旨味で煮物やつぼ焼きに最適
- 市場での表記: 多くが「バイ貝」「白バイ」として販売される
詳しくはコチラをご覧くださいエッチュウバイ(白バイ)とは?

現役和食調理師のヒント
市場に並ぶ「バイ貝」は、ほとんどがエッチュウバイ(白バイ)です。どちらも美味しいですが、煮物に向くのはエッチュウバイ、刺身や塩ゆでは本バイ(あずきバイ)がおすすめです。
バイ貝とは? ~解説~

バイ貝(ばいがい)とは
日本海沿岸に生息する巻貝の一種で、バイ科(Babyloniidae)に属する「バイ(標準和名)」を指します。学名は Babylonia japonica。
分類
- 門: 軟体動物門(Mollusca)
- 綱: 腹足綱(Gastropoda)
- 目: 新腹足目(Neogastropoda)
- 科: バイ科(Babyloniidae)
- 属: バイ属(Babylonia)
- 種: バイ (Babylonia japonica)
名前の由来
殻の色が赤褐色からあずき色を帯びることから、古くは「あずきバイ(小豆バイ)」とも呼ばれました。「バイ」という言葉は、平安時代の古文献『延喜式』にも見られる古称で、“巻き貝”を意味する言葉に由来するといわれています。
特徴
- 殻は丸みを帯び、高さ5〜8cmほど
- 模様は赤褐色または茶褐色の筋模様
- 貝殻の表面には光沢があり、滑らかな質感
- 身はしっかりとした弾力があり、旨味が濃い

現役和食調理師のヒント
バイ貝は「春から初夏」にかけて身が太り、煮ても固くなりにくいのが特長。うま味の濃さと食感のバランスが良く、煮付けや酒蒸しに最適です。
バイ貝の特徴と味わい

バイ貝は日本海側で古くから食されてきた上品な旨味をもつ巻貝です。煮ても焼いても硬くなりにくく、甘みとコクを感じる独特の味わいが特徴です。
外見の特徴
- 殻の高さは約5〜8cmほど。やや丸みを帯びた円錐形
- 殻の表面は滑らかで光沢があり、赤褐色の縞模様が入る
- 「あずきバイ」という通称は、この模様の色味に由来します
- 生息環境は日本海沿岸の砂泥底で、水深50〜150m付近に多い
味と食感の特徴
- 身はやわらかく弾力があり、噛むほどに旨味が広がる
- 煮ると旨味が凝縮し、貝特有の甘みと香ばしさが引き立つ
- クセが少なく、日本酒や出汁との相性が抜群
- 貝ヒモ(足の部分)はコリコリとした食感で、酒肴として人気
旬と主な産地
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | ⑩ | ⑪ | ⑫ |
|---|
バイ貝(あずきバイ)の旬は春から初夏(4月〜6月)にかけてです。この時期は水温が上がり始め、産卵前で身が最も肥えて旨味が濃い状態になります。秋にも二次的な水揚げがありますが、風味と食感のピークは春といわれています。
主な産地
| 産地 | 特徴 |
|---|---|
| 富山県 | エッチュウバイ(白バイ)とともに代表的産地。日本海の冷水域で身が締まり、味が濃厚。 |
| 石川県 | 甘みの強い個体が多く、煮付けや寿司ネタとして人気。 |
| 新潟県 | 底曳網で漁獲される。春先の「春バイ」は特に評価が高い。 |
| 鳥取県 島根県 | 山陰沖でも漁獲あり。地方では「白バイ」として流通することもある。 |

現役和食調理師のヒント
春の“旬バイ”は、加熱しても身がふっくら仕上がります。一方、夏以降のものは加熱時間を短めにして、プリッとした食感を残すのがポイントです。
バイ貝の地方名と呼び方の違い
バイ貝は地域によってさまざまな呼び方で親しまれています。ただし、「バイ」「白バイ」「あずきバイ」が混在して使われる地域も多く、標準和名で確認することが最も確実です。
| 都道府県 | 呼び名 | 備考 |
|---|---|---|
| 富山県 | 白バイ | 実際は「エッチュウバイ」を指す名称。 |
| 石川県 | バイ 白バイ | 種を区別せず「バイ」と総称。 |
| 新潟県 | バイ | 標準和名「バイ(あずきバイ)」を指す。 |
| 鳥取県 | 白バイ | 主にエッチュウバイを指す。 |
| 島根県 | 白バイ 赤バイ | 色味によって呼び分ける地域あり。 |
注意点
- 「白バイ」「赤バイ」は学術的な分類ではなく通称。
- 市場で「白バイ」と表示されていても多くはエッチュウバイ(別種)
- 「あずきバイ」「赤バイ」は本来の標準和名バイ(Babylonia japonica)を指す。
- 「あずきバイ」は公的な地方名として登録されているわけではありません。
バイ貝の唾液腺と可食部 ~毒性と安全性について~

◆ バイ貝は基本的に無毒ですが唾液腺には注意
バイ貝(あずきバイ)は一般的に無毒で安全に食べられる巻貝です。
ただし、部位によっては注意が必要です。特に話題になるのが、内臓の一部である唾液腺(だえきせん)です。
唾液腺とは?食べても大丈夫?
唾液腺は、貝が獲物を捕らえた際に消化液を分泌するための器官です。この部分には、ごくまれに「テトラミン(Tetramine)」という神経毒が含まれることがあります。
標準和名「バイ(あずきバイ)」は基本的に毒性が弱く、食中毒事例はほとんど報告されていません。一方で、白バイ(エッチュウバイ/エゾバイ科)はテトラミンを含むことが多く、厚生労働省でも注意喚起されています。▶参照:巻貝:唾液腺毒(テトラミン)|厚生労働省
安全に食べるための下処理のポイント
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 新鮮な個体を選ぶ | 死後時間が経過すると内臓が劣化し、苦味・臭いが強くなる。 |
| 唾液腺を取り除く | ワタ(内臓)の白っぽい粒状部分が唾液腺。取り除けばより安全。 |
| しっかり加熱する | 加熱では毒を完全に除去できないが、雑菌や臭み対策に有効。 |
| 臭いが強い個体は避ける | アンモニア臭や強い苦味がある場合は、食べないのが無難。 |

現役和食調理師のヒント
バイ貝は“ふたの閉まり”と“香り”でだいたい鮮度が分かります。加熱後のものも便利ですが、煮つけや炊き込みご飯にするなら断然生のものがおすすめ。扱いに慣れていない方は、すでに下処理された加熱済み品も選択肢に入れてOKです。
バイ貝と相性の良い食材
味が淡白な分、酸味・香り・出汁の旨味を引き立てる食材と合わせるとおいしさが引き立ちます。
| 食材 | 組み合わせの特徴・使い方例 |
|---|---|
| しょうが | 煮付けの臭み消し+香り付け。バイの甘みを引き立てる定番。 |
| しょうゆ みりん | 甘辛の煮汁で味をまとめると、身の旨味がより濃厚に。 |
| 三つ葉 木の芽 | 春の香りを添える薬味として最適。彩りも良い。 |
| すだち レモン | 酢味噌和えや塩ゆでに添えると爽やかな後味。 |
| 昆布出汁 | 出汁の旨味を吸ってふっくら仕上がる。煮物・炊き合わせに◎。 |

現役和食調理師のヒント
煮付けにするなら生姜と昆布は必須コンビ。煮汁を活かして炊き込みご飯にしても絶品です。山椒をほんの少し加えると、味に立体感が出ておすすめですよ。
バイ貝に合う調理法

| 調理法 | 特徴・ポイント |
|---|---|
| 煮付け | 定番料理。砂抜き後に殻付きのまま甘辛く煮ると、身がふっくら仕上がる。 |
| 酒蒸し | 素材の甘みをそのまま楽しめる。蒸す時間は短く(3〜5分)でOK。 |
| 塩ゆで | シンプルながら香りと甘みが際立つ。冷やして酢味噌を添えるのもおすすめ。 |
| 焼きバイ | 殻付きのまま炙ると香ばしく、酒肴にぴったり。 |
| 刺身 | 内臓処理・衛生管理がされた生食用のみ使用。コリコリした食感を楽しめる。 |

現役和食調理師のヒント
バイ貝は火を通すことで旨みが増すタイプの貝なので、煮付けや佃煮などのじっくり火を通す調理法がおすすめです。刺身で出すこともありますが、鮮度に自信がある場合に限定した方が安心ですね。
ばいの栄養素(食品成分表)
バイ
可食部100g当たり
| 栄養素 | 生 | 単位 |
|---|---|---|
| 廃棄率 | 55 | % |
| エネルギー | 81 | ㎉ |
| 水分 | 78.5 | g |
| タンパク質 | 16.3 | g |
| 脂質 | 0.6 | g |
| 食物繊維(総量) | – | g |
| 炭水化物 | 3.1 | g |
| ナトリウム | 220 | ㎎ |
| カリウム | 320 | ㎎ |
| カルシウム | 44 | ㎎ |
| マグネシウム | 84 | ㎎ |
| リン | 160 | ㎎ |
| 鉄 | 0.7 | ㎎ |
| 亜鉛 | 1.3 | ㎎ |
| 銅 | 0.09 | ㎎ |
| マンガン | 0.04 | ㎎ |
| ヨウ素 | – | ㎍ |
| セレン | – | ㎍ |
| クロム | – | ㎍ |
| モリブデン | – | ㎍ |
| ビタミンA(レチノール) | – | ㎍ |
| ビタミンA(β-カロテン) | – | ㎍ |
| ビタミンD | – | ㎍ |
| ビタミンE(トコフェロールα) | 2.2 | ㎎ |
| ビタミンK | – | ㎍ |
| ビタミンB1 | 0.03 | ㎎ |
| ビタミンB2 | 0.14 | ㎎ |
| ナイアシン | 1.3 | ㎎ |
| ビタミンB6 | 0.11 | ㎎ |
| ビタミンB12 | 4.3 | ㎍ |
| 葉酸 | 14 | ㎍ |
| パントテン酸 | 1.02 | ㎎ |
| ビオチン | – | ㎍ |
| ビタミンC | 2 | ㎎ |
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ばいがいの英語・漢字表記

| 表記 | 説明 |
|---|---|
| 漢字表記 | 蛽貝・梅貝(ばいがい) |
| 英語表記 | Japanese Babylon Babylon shell |
| 発音記号 | [ˈbæbələn](バブラン/バビロン) |
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