「鮎ってどんな魚?栄養はあるの?旬はいつ?」
透き通る川の流れに棲む鮎は、“清流の女王”とも呼ばれる美しい川魚。
独特の香りとほろ苦さがあり、塩焼きや天ぷらとして日本の夏を代表する味覚です。
本記事では、和食調理師として25年以上の経験をもつ筆者が、鮎の特徴・旬・栄養価・調理法・稚鮎との違いなどをわかりやすく紹介します。英語表記や英語例文もあわせて解説しています。
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鮎の旬 ~おいしい時期~
稚鮎
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | ⑩ | ⑪ | ⑫ |
|---|
若鮎
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | ⑩ | ⑪ | ⑫ |
|---|
成魚
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | ⑩ | ⑪ | ⑫ |
|---|
落ち鮎
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | ⑩ | ⑪ | ⑫ |
|---|
季節ごとの旬の食材をもっと詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。▶ 旬の野菜・魚介【年間カレンダー】
鮎の呼び名
鮎には成長段階ごとに呼び名と旬が異なります。日本では季節の移ろいとともに、さまざまな姿の鮎が楽しまれてきました。
| 呼び名 | 主な旬 | 特徴・用途 |
|---|---|---|
| 稚鮎 (ちあゆ) | 3〜5月 | 体長5〜10cmほど。ほろ苦さが少なく、天ぷらや南蛮漬けに向く。春の味覚。 |
| 若鮎 (わかあゆ) | 6月頃 | 初夏にかけての若い鮎。塩焼きにすると香りが爽やか。 |
| 成魚 (夏鮎) | 7〜8月 | 最も香りが強く、脂ものって旬のピーク。塩焼き・背ごし・鮎飯など多彩に使われる。 |
| 落ち鮎 (おちあゆ) | 9〜10月 | 産卵のため川を下る鮎。脂が抜けて淡泊だが、煮物や甘露煮に使われる。 |

現役和食調理師のヒント
鮎の魅力は何と言ってもスイカのような爽やかな香りと、ほのかな苦味。これは夏の天然鮎が一番強く、塩焼きにすると香ばしさが際立ちます。稚鮎や若鮎は火を通しすぎず、柔らかさを活かした揚げ物や酢の物にすると美味です。
鮎とは ~解説・特徴~

鮎(あゆ)は、サケ目アユ科の淡水魚で、日本全国の清流に生息する一年魚です。美しい姿と香り高さから「清流の女王」とも称され、夏の風物詩として親しまれています。
春に海から川へ遡上し、夏に成魚となって活発に動き回り、秋には産卵して一生を終えるという儚い命のサイクルも、鮎ならではの魅力です。
鮎の特徴まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学名 | Plecoglossus altivelis |
| 分類 | サケ目アユ科アユ属 |
| 生息地 | 日本全国の清流、琵琶湖、韓国・台湾など一部アジア地域 |
| 寿命 | 約1年(秋に産卵して死ぬ) |
| 味・食感 | ほろ苦さと上品な香り、しっとりとした白身 |
| 香り | 「スイカのような香り」と表現される独特の爽やかさ |
- 漢字表記の意味(由来)
川の岩についた藻を食べ、独特な香りがするので「香魚」(こうぎょ)
1年で一生を終えるため「年魚」(ねんぎょ)
泳いでいると口元が銀色に光るため「銀口魚」(ぎんこうぎょ) - 稚鮎は鱗も骨も気にならず、そのまま調理できる
- 成魚の鱗は細かくほとんど気にならない
- 夏の訪れを知らせる「鮎の塩焼き」
- 生息する川によって味が変わると言われる
- 鮎の内臓の塩辛=渋うるか
- 鮎の卵巣の塩辛=子うるか
鮎が自慢の河川
九州の球磨川
四国の四万十川
岐阜県の長良川
静岡県の狩野川
神奈川県の酒匂川

現役和食調理師のヒント
鮎は火を通すことで香りが立ち、皮の香ばしさと身の甘みが際立ちます。天然ものは香りが強く、養殖ものは苦味が少ない傾向があるため、料理法や食べる人の好みに応じて使い分けると良いですよ。
鮎の地方名・別名(清流の女王)
鮎は全国で広く親しまれている魚ですが、その美しさや生態、味わいから、地域ごとにさまざまな呼び名や表現で語られています。
| 呼び名・表現 | 使用地域・背景 |
|---|---|
| 清流の女王 | 全国共通の愛称。澄んだ川に棲む気品ある魚として命名されることが多い |
| 若鮎 (わかあゆ) | 初夏の小ぶりな鮎の呼び名。京都の和菓子「若鮎」にも由来 |
| 香魚 (こうぎょ) | 鮎の独特な香りに由来する古称。文献や俳句で使われることも |
| 年魚 (ねんぎょ) | 一年で一生を終える魚という意味。季節を表す言葉として使われる |
| 稚鮎 (ちあゆ) | 春に出回る小さな若魚。地方によっては「しらあゆ」「こあゆ」などとも |

現役和食調理師のヒント
「清流の女王」という名前にふさわしく、見た目の美しさと繊細な香りが魅力の鮎は、料理だけでなく季節感を演出する食材としても重宝されます。器や盛り付けに川石や笹の葉を添えると、自然の趣がさらに引き立ちます。
鮎の目利き
鮎は繊細で鮮度が落ちやすいため、見た目やにおいでしっかりとチェックすることが大切です。以下のポイントを参考にしてください。
| チェック項目 | 新鮮な鮎の特徴 | 鮮度が落ちた鮎 |
|---|---|---|
| 目 | 澄んで黒目がはっきりしている | 白く濁り、しぼんでいる |
| 体の表面 | ヌメリがあり、ツヤとハリがある | 乾いてカサついている、光沢がない |
| 腹部 | ふっくらしている | やわらかく破れやすい |
| におい | ほんのりスイカのような香り | 生臭さ、酸味のあるにおい |
| ひれ | ピンと立っている | しおれて寝ている |

現役和食調理師のヒント
天然鮎は顔立ちがシュッと細く、ひれが大きめ。養殖物は少し丸く太めな体形のものが多いです。香りと苦味を楽しみたいなら天然、やわらかくクセが少ない味が好みなら養殖がおすすめです。
鮎と相性の良い食材
鮎は香りとほろ苦さが魅力の魚。素材の持ち味を活かすため、香味野菜や柑橘類、渋味や酸味のある食材との相性が抜群です。
| 食材 | 組み合わせの理由・使い方例 |
|---|---|
| 塩 | 素材の甘みと香りを引き立てる。塩焼きで真価を発揮 |
| 酢 | 稚鮎や落ち鮎の南蛮漬けに。ほろ苦さがまろやかに |
| 大根おろし | 焼き魚の脂や苦味をさっぱり中和する。定番の付け合わせ |
| 柚子 すだち | 香りの相乗効果で風味が爽やかに。焼き物や吸い物に◎ |
| 山椒の葉 | 天ぷらや甘露煮の仕上げに添えると、季節感と香りが増す |

現役和食調理師のヒント
鮎は「引き算の料理」が合う魚。余計な味付けを避け、塩や香味だけで香り・甘み・苦みを活かすのがコツです。すだちや柚子はスライスで添えるより、果汁をひと絞りするだけの方が香りが立ちますよ。
鮎に合う調理法
鮎はその香りや繊細な身を活かすため、火入れが命の魚です。塩焼きを基本に、時期やサイズに応じてさまざまな調理法が楽しめます。
| 調理法 | おすすめ度 | 理由 |
|---|---|---|
| 塩焼き | ◎ | 鮎の香りと甘みを最も活かせる。皮が香ばしく身はふっくら |
| 天ぷら | ◎ | 稚鮎や若鮎に最適。骨ごと揚げられ、頭から尾まで食べやすい |
| 甘露煮 | ○ | 落ち鮎に適した調理。内臓の苦味と甘辛い味付けが好相性 |
| 南蛮漬け | ○ | 稚鮎向き。酢でさっぱりと仕上がり、食欲の落ちる夏にぴったり |
| 吸い物・椀物 | △ | 出汁は出るが、香りと食感がやや弱くなりやすい |

現役和食調理師のヒント
塩焼きの鮎は串を打って立て焼き(若狭焼き)にすることで、川で泳いでいるような美しい姿に。見た目にも季節感があり、特に天然ものは焼き方にこだわると香りが格段に引き立ちます。
鮎の栄養素 ~食品成分表~
あゆ(焼き)
可食部100g当たり
| 栄養素 | 養殖 | 天然 | 単位 |
|---|---|---|---|
| 廃棄率 | 55 | 55 | % |
| エネルギー | 202 | 149 | ㎉ |
| 水分 | 59.3 | 64.0 | g |
| タンパク質 | 22.6 | 26.6 | g |
| 脂質 | 15.1 | 6.8 | g |
| 食物繊維(総量) | – | – | g |
| 炭水化物 | 0.8 | 0.1 | g |
| ナトリウム | 79 | 110 | ㎎ |
| カリウム | 430 | 510 | ㎎ |
| カルシウム | 450 | 480 | ㎎ |
| マグネシウム | 31 | 35 | ㎎ |
| リン | 430 | 460 | ㎎ |
| 鉄 | 2.0 | 5.5 | ㎎ |
| 亜鉛 | 1.3 | 1.2 | ㎎ |
| 銅 | 0.07 | 0.06 | ㎎ |
| マンガン | – | 0.41 | ㎎ |
| ヨウ素 | – | – | ㎍ |
| セレン | – | – | ㎍ |
| クロム | – | – | ㎍ |
| モリブデン | – | – | ㎍ |
| ビタミンA(レチノール) | 480 | 120 | ㎍ |
| ビタミンA(β-カロテン) | – | – | ㎍ |
| ビタミンD | 17.0 | 1.5 | ㎍ |
| ビタミンE(トコフェロールα) | 8.2 | 1.7 | ㎎ |
| ビタミンK | – | – | ㎍ |
| ビタミンB1 | 0.20 | 0.23 | ㎎ |
| ビタミンB2 | 0.18 | 0.24 | ㎎ |
| ナイアシン | 4.0 | 3.9 | ㎎ |
| ビタミンB6 | 0.24 | 0.16 | ㎎ |
| ビタミンB12 | 6.0 | 12.0 | ㎍ |
| 葉酸 | 38 | 33 | ㎍ |
| パントテン酸 | 1.67 | 1.34 | ㎎ |
| ビオチン | – | – | ㎍ |
| ビタミンC | 2 | 2 | ㎎ |
注目すべき栄養素ポイント
鮎は「清流の女王」と呼ばれる淡水魚で、たんぱく質・ミネラル・ビタミンのバランスが非常に良い魚です。特に以下の点が注目ポイントです👇
1️⃣ 骨ごと食べられる魚の強み
カルシウム・リンの含有量が非常に多く、骨ごと焼いて食べることで、丈夫な骨づくりに役立つ。
カルシウムは可食部100gあたりで480mgと、牛乳(110mg)のおよそ4倍。
2️⃣ 天然と養殖で栄養バランスが異なる
天然鮎は脂質が少なく、たんぱく質が多い(引き締まった身)
養殖鮎は脂質が多く、ビタミンD・Eが豊富(脂に旨味がある)
味や香りだけでなく、栄養面にも明確な違いがあるのが特徴。
3️⃣ ビタミンB群・ビタミンD・Eが豊富
ビタミンB12は天然鮎で12μgと、魚類の中でも高水準。
また、ビタミンD(骨形成)やビタミンE(抗酸化作用)も豊富で、疲労回復やアンチエイジング効果も期待できる。
4️⃣ 低糖質・高タンパク
炭水化物はほとんど含まれず、ダイエットや高たんぱく食にも向く食材。
▶ 栄養の全体像を知りたい方はこちら
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鮎の英語・漢字表記

| 表記 | 内容 |
|---|---|
| 漢字表記 | 鮎 |
| 英語表記(一般) | sweetfish(スウィートフィッシュ) |
| 学名 | Plecoglossus altivelis |
| 発音記号 | [ˈswiːtˌfɪʃ](スウィート・フィッシュ) |
| 稚鮎の英語表記(表現例) | baby sweetfish/young sweetfish(一般的表現) |
| カタカナ表記 | スウィートフィッシュ |
英語表記についてもっと詳しく知りたい方は、こちらのページで 魚介類の漢字・英語表記一覧 をまとめています。
