「青柳(あおやぎ)」と「バカガイ」、この2つの名前を聞いて「違う貝?」と迷ったことはありませんか?
実はこの2つ、同じ貝を指しており、呼び名が違うだけなんです。
「バカガイ」は貝そのものの名前で、殻をむいた状態で流通する際には“青柳”と呼ばれています。
この記事では、青柳とバカガイの名前の由来や意味の違い、旬の時期・味の特徴・栄養面、さらに選び方や保存方法まで、調理師の視点からわかりやすく解説します。
呼び名の背景を知ることで、春の味覚・青柳をもっと美味しく楽しめますよ。
このページでわかること
- 青柳とバカガイの違い・呼び名の使い分け
- 名前の由来と意味
- 旬の時期と味の特徴
- 選び方・保存法・栄養面
- 英語・漢字表記・読み方
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青柳とバカガイの違い・呼び名の使い分け

「青柳」と「バカガイ」は実は同じ貝を指しています。
ただし、呼び名が使われる場面や状態が異なるため、混同しやすいのが特徴です。
ここではそれぞれの違いと使い分け方をわかりやすく整理します。
「バカガイ」とは
- 貝そのもの(殻付き)の名前
- 分類:マルスダレガイ科バカガイ属
- 学名:Mactra chinensis(マクトラ・キネンシス)
- 貝殻は淡いベージュ〜白色でやや薄く、形は楕円形
- 砂地の浅瀬に生息し、日本では関東〜中部地方の沿岸に多い
- 主に**春(3〜5月)**が旬
- 「バカガイ」は標準和名として魚類図鑑などに掲載されています。

現役和食調理師のヒント
「バカガイ」という名前は少し変わっていますが、実は殻が壊れやすいことやすぐ口を開く様子からついた愛称のようなもの。
人の“ばか”とは関係なく、昔から親しみを込めて呼ばれてきた貝なんです。
春が旬で、むき身は「青柳」として寿司ネタにも人気ですよ
「青柳」とは
- むき身にした状態の呼び名
- 特に寿司ネタや刺身用に加工された際に「青柳」と呼ばれる
- 色が淡いオレンジ〜黄緑色で、**“柳の若葉のような色”**からこの名がついたとされる
- 市場やスーパーでは「青柳むき身」として販売されることが多い

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「青柳」という名前は、むき身の色が柳の若葉のように美しいことからついたとも、
かつての産地・青柳村(今の千葉県市川市)に由来するとも言われます。
今では寿司ネタとして「青柳」の名が定着しており、春を感じる上品な貝として親しまれています。
| 状態 | 呼び名 | 用途 |
|---|---|---|
| 殻付きのまま | バカガイ | 貝そのものの名称 図鑑 学術名 水産流通 |
| むき身 (加工後) | 青柳 | 寿司ネタ 刺身 酢の物などの料理名 商品名 |
青柳の旬 ~おいしい時期~
青柳(あおやぎ/バカガイ)は春が旬の貝で、特に3月〜5月にかけて旨味が強くなります。寿司屋でもこの時期になると「青柳」の札が並び、春の味覚として親しまれています。
北海道
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | ⑩ | ⑪ | ⑫ |
|---|
本州~南
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | ⑩ | ⑪ | ⑫ |
|---|
季節ごとの旬の食材をもっと詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。▶ 旬の野菜・魚介【年間カレンダー】

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青柳は春の貝として「春の盛り合わせ」などにもよく使われます。色合いが明るく、酢の物や和え物で重宝します。冷凍品もありますが、旬の時期はぜひ生のものを!
バカガイ(青柳)の特徴
基本情報
- 標準和名:バカガイ
- 別名:アオヤギ(むき身の名称)
- 英名:Surf clam / Round clam
- 分類:マルスダレガイ科バカガイ属
- 学名:Mactra chinensis
- 生息地:内湾の砂地の浅瀬(東京湾、三河湾、瀬戸内海など)
- 漁法:手掘り、桁網、潜水など
外見の特徴
- 殻は淡いベージュ〜白色で、薄くて割れやすい
- 形はやや楕円形で、表面は滑らか
- 殻の内側はやや紫がかった光沢をもつこともある
- 殻が開きやすい性質を持ち、これが「バカガイ」という名の由来の一説にもなっている
味・食感の特徴
- 上品な甘みとほのかな磯の香り
- 食感は「シャクシャク」「コリコリ」と心地よく、噛むほどに旨味が広がる
- 加熱すると柔らかくなりすぎるため、生食や軽い湯通しが最適
- 寿司ネタ、酢の物、刺身などに人気
栄養面の特徴
- 高たんぱく・低脂質でヘルシー
- タウリンが豊富で、肝機能のサポートや疲労回復に効果的
- 鉄分・ビタミンB12を含み、貧血予防にも役立つ
- 100gあたり約80kcalと低カロリー

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バカガイは春の味覚を代表する貝で、シャクっとした歯ごたえと優しい甘みが魅力です。
むき身は「青柳」と呼ばれ、寿司や酢の物に最適。
鮮度が命なので、購入後はできるだけ早く調理してください。
青柳(バカガイ)の選び方・目利き
むき身を選ぶときのポイント
むき身は鮮度が落ちやすく、色とツヤ・香りで見極めるのが大切です。
| チェック項目 | 良い状態の特徴 |
|---|---|
| 色 | 淡いオレンジ〜黄緑色で、均一な色合い |
| ツヤ | 表面に透明感と光沢がある |
| 香り | 磯の香りが爽やか |
| 形 | 肉厚でふっくら、縮んでいない |
| 鮮度 | 加工日が新しい(できれば当日) |
💡 ポイント
- 購入後はできるだけ当日中に食べるのが理想。
- 保存する場合は軽く塩水をまぶして冷蔵(1日以内)、もしくは軽く湯通しして冷凍を。
殻付きを選ぶときのポイント
| チェック項目 | 良い状態の特徴 |
|---|---|
| 殻の状態 | ツヤがあり、しっかり閉じている |
| 重さ | 手に持つとずっしり重い |
| 音 | 軽く叩くと「カンカン」と澄んだ音 |
| 香り | 磯の香りがある |
バカガイ(青柳)と相性の良い食材
| 食材例 | 相性の理由・ポイント |
|---|---|
| きゅうり 三つ葉 わかめ 長ねぎ みょうが 大葉 | さっぱりとした香味野菜が磯の香りを引き立て、彩りも美しい。特に酢の物・和え物に最適。 |
| 酢 すだち レモン ゆず | 優しい甘みに爽やかな酸味が合い、後味をさっぱりと仕上げる。 |
| しめじ えのき 椎茸 | グルタミン酸が豊富で、旨味の相乗効果が生まれる。潮汁や酒蒸しに◎。 |
青柳(バカガイ)の漢字・英語表記・読み方

青柳とバカガイ、それぞれに正式な表記や英語名があります。料理や食材の知識として知っておくと、読み間違いや誤解も防げます。
| 漢字表記 | 読み方(ふりがな) |
|---|---|
| 青柳 | あおやぎ |
| 馬鹿貝 | ばかがい |
「青柳」は美しい地名に由来するため、上品な印象ですが、「バカガイ」はやや俗っぽい響きです。ただし、どちらも同じ貝を指すことを覚えておきましょう。
英語では、バカガイを次のように表記します:
- Trough shell
読み方:[trɔ́f ʃel](トラフ・シェル)
英語圏では分類上の総称として “trough shell”(トラフ型の貝)と呼ばれることが多く、日本のような「青柳」という商品名や地名ベースの表現は使われません。
青柳の地方名・分類と仲間の貝たち
青柳(あおやぎ/バカガイ)は、地域や市場によってさまざまな呼び方をされてきました。また、生物学的には特定の分類に属し、似た特徴をもつ貝もいくつか存在します。
青柳やバカガイには、地域によって以下のような呼び名があります:
| 呼び名 | 補足 |
|---|---|
| バカガイ | 殻付きの正式な貝名 |
| 青柳(あおやぎ) | むき身の通称/千葉県市川市青柳地区が由来 |
| アオヤギ | 「青柳」の音読み表記 |
| バカカイ | 関西での発音に基づく表記(バカガイと同義) |
| アオギ | 簡略化された呼び名 |

現役和食調理師のヒント
「青柳」は東京の江戸前寿司の文化とともに広まりましたが、関西ではあまり馴染みがないかもしれません。地方によって使われ方が変わるのも、貝の面白さです。
●学名と分類
- 学名:Mactra chinensis
- 分類:マルスダレガイ科(Mactridae)/マルスダレガイ属(Mactra)
マルスダレガイ科の中では比較的大きめで、殻の表面に放射状の筋があるのが特徴です。
●青柳の仲間たち(近縁種)
青柳(バカガイ)に似た種類の貝もいくつかあります。食味や用途が似ているため、代用されることもあります。
| 名称 | 特徴 |
|---|---|
| ウシノシタガイ | 見た目が似ているが、殻が厚く流通は少ない |
| シオフキガイ | 小型で浅い干潟に多く、炊き込みご飯などに使われる |
| ホッキガイ | 色味は赤く異なるが、同じくむき身で提供されることが多い |
青柳の保存方法
青柳(あおやぎ/バカガイのむき身)は鮮度が命の食材です。生のまま長く保存するのは難しいため、正しい保存方法を知ることが調理の第一歩となります。ここでは、冷蔵・冷凍それぞれの保存方法と注意点をわかりやすく解説します。
●冷蔵保存|できるだけ早めに使い切るのが鉄則
むき身の青柳はチルド保存(0〜4℃)で1〜2日以内に使い切るのが基本です。保存の際は以下の点に注意してください。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 保存容器 | 密閉容器またはラップで包み、乾燥を防ぐ |
| 保存状態 | ドリップが出やすいので、キッチンペーパーなどで軽く水分を取る |
| 臭いが強くなったら | 劣化が進んでいる可能性あり、加熱調理用に回すのが無難 |

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購入後すぐに使わない場合は、酢で軽く締めて「酢締め青柳」にすると日持ちが少し伸びます。
●冷凍保存|軽く湯通しすれば冷凍も可能
青柳はそのまま生で冷凍すると、解凍後に食感が悪くなることがあるため、一度軽く加熱(霜降り)してから冷凍するのがコツです。
冷凍保存の手順
- 沸騰直前のお湯にくぐらせて表面を軽く火入れ(5〜10秒)
- 氷水にとって急冷
- 水気をしっかり拭き取り、小分けにしてラップ+保存袋で冷凍
保存期間の目安
冷凍:2〜3週間程度(風味や食感は徐々に落ちる)

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解凍は「自然解凍」または「冷蔵庫解凍」がベスト。電子レンジはNGです。炊き込みご飯や味噌汁に使う場合は凍ったまま加熱調理も可能です。
青柳の栄養素~食品成分表~
ばかがい(生)
可食部100g当たり
| 栄養素 | 値 | 単位 |
|---|---|---|
| 廃棄率 | 65 | % |
| エネルギー | 56 | ㎉ |
| 水分 | 84.6 | g |
| タンパク質 | 10.9 | g |
| 脂質 | 0.5 | g |
| 食物繊維(総量) | – | g |
| 炭水化物 | 2.4 | g |
| ナトリウム | 300 | ㎎ |
| カリウム | 220 | ㎎ |
| カルシウム | 42 | ㎎ |
| マグネシウム | 51 | ㎎ |
| リン | 150 | ㎎ |
| 鉄 | 1.1 | ㎎ |
| 亜鉛 | 1.8 | ㎎ |
| 銅 | 0.05 | ㎎ |
| マンガン | 0.07 | ㎎ |
| ヨウ素 | – | ㎍ |
| セレン | – | ㎍ |
| クロム | – | ㎍ |
| モリブデン | – | ㎍ |
| ビタミンA(レチノール) | 4 | ㎍ |
| ビタミンA(β-カロテン) | 5 | ㎍ |
| ビタミンD | – | ㎍ |
| ビタミンE(トコフェロールα) | 0.8 | ㎎ |
| ビタミンK | – | ㎍ |
| ビタミンB1 | 0.14 | ㎎ |
| ビタミンB2 | 0.06 | ㎎ |
| ナイアシン | 2.1 | ㎎ |
| ビタミンB6 | 0.08 | ㎎ |
| ビタミンB12 | 7.9 | ㎍ |
| 葉酸 | 18 | ㎍ |
| パントテン酸 | 0.79 | ㎎ |
| ビオチン | – | ㎍ |
| ビタミンC | 1 | ㎎ |
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