和食の味の基本、それが「かつお昆布の出汁」です。
素材の味を引き立て、調味料の角を取る“縁の下の力持ち”。
しかし「味が薄い」「雑味が出る」と悩む人も多いのではないでしょうか。
実はその原因は
“火加減”と“時間”
にあります。この記事では、誰でも安定して澄んだ旨味を引き出せる「黄金比」と「火入れの合図」を詳しく紹介します。一番出汁・二番出汁・佃煮などへの応用も可能です。
味が決まらない原因
- 昆布を浸ける時間が短く、旨味が出きっていない
- 火を強めてしまい、昆布のぬめりやえぐみが出る
- かつお節を煮すぎて雑味が出る
- こすときに絞ってしまい、濁りや苦味が出る
- 保存時に常温で放置し、風味が落ちる
黄金比|2つの選べる比率

| 材料 | 万人向け黄金比 | プロ寄り黄金比 |
|---|---|---|
| 水 | 2000cc | 2000cc |
| 昆布 | 20g | 25g |
| かつおぶし | 30g | 60g |
| 備考 | 上品で澄んだ味わい。吸い物や茶碗蒸しに最適 | 旨味がしっかりと感じられ、煮物や汁物のベースに最適 |
その理由:
昆布は「グルタミン酸」、かつお節は「イノシン酸」を含み、2つの旨味が重なると相乗効果が生まれます。プロ寄りではかつおを倍量にして、だしの輪郭をより強調します。
材料

| 材料 | 分量 | 役割 |
|---|---|---|
| 水 | 2000cc | 出汁のベース。軟水を使うと旨味がよく出る |
| 昆布 | 20g | グルタミン酸による旨味の土台。香りと深みを与える |
| かつお節 | 30〜60g | 香りと旨味の要。加える時間で風味が変化 |
作り方
- 昆布を浸す
鍋に水と昆布を入れ、30分以上(理想は一晩)置く。
→ 冷蔵庫で静かに旨味を抽出する。昆布の表面に白い粉(マンニット)があればそのままでOK(旨味成分) - 火にかける(中火)
ゆっくり加熱し、鍋底に小さな気泡(約80℃)が出たら昆布を取り出す。
→ ここが“沸騰直前の合図”。そのまま一度沸騰させて火を止める(雑菌を抑えるため)。 - かつお節を加える
火を止めた鍋にかつお節を入れ、再び中火で加熱。ふつふつと沸き始めたら火を止める。
→ 強火厳禁。香りが飛ぶ原因になる。アクをすくい、火を止めてから1〜4分おく。(短時間=澄んだ上品、長時間=濃厚で力強い) - 漉す
キッチンペーパーまたは細かいざるで静かに漉す。
※押さえたり絞ったりせず、自然に落とすのがポイント。
→ 濁らず、美しい黄金色に仕上がる。 - 冷やして保存
粗熱を取ってから冷蔵庫へ。常温放置はNG。保存は3日以内が目安。
失敗しない3つのコツ
- 昆布は沸騰前に取り出す(ぬめり防止)
- かつお節を絞らない(濁り防止)
- 軟水を使う(ミネラル分が多い水は旨味が出にくい)
使い道
| 相性の良い料理 | 解説・リンク |
|---|---|
| 吸い物 | 透明感と香りを活かした一番出汁向き |
| 茶碗蒸し | 優しい旨味で卵の風味を引き立てる |
| 煮物 | かつおを多めにした濃い出汁で深みを出す |
| うどんつゆ | 二番出汁を使うと節約&旨味の再利用に最適 |
保存方法
| 方法 | 保存期間 | ポイント |
|---|---|---|
| 冷蔵 | 2〜3日 | 密閉容器に入れ、冷めてから保存 |
| 冷凍 | 約1か月 | 製氷皿に入れて小分けにすると便利 |
| 常温 | NG | 雑菌繁殖の原因になるため避ける |
応用・アレンジ
- 一番出汁:上品で澄んだ味。吸い物や茶碗蒸しに
- 二番出汁:残った昆布とかつお節に水を足して再利用。煮物に最適
- 昆布の佃煮:取り出した昆布を細切りにして甘辛く煮る
- ふりかけ:使用したかつお節を乾煎りし、しょうゆ少々で味付け
現役和食調理師のひと言
出汁は“和食の命”です。
火加減ひとつで香りも味も変わります。
特に「沸騰直前で昆布を上げる」──ここが職人技の分かれ道。
濁りのない黄金色の出汁を取れるようになれば、どんな料理も格段においしくなります。
丁寧に取った出汁こそが、和食の「やさしさ」を作ります。
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