しっとり柔らかく、旨みが濃い「鴨ロースの蒸し煮」。外は香ばしく、中はほんのり赤みを残す——火入れの妙が決め手の一品です。
「生っぽい」
「硬い」
「臭みが残る」
と失敗も多い料理。
本記事では現役和食調理師が教える“血抜き・脂抜き・火加減”の見極め方を詳しく解説します。
一晩寝かせて味をなじませれば、料亭のような味わいに仕上がります。
よくある失敗と原因
- 中心が生っぽい:火加減が弱い、火入れ不足
- 硬い:加熱しすぎ、温度管理ミス
- 味が薄い:血抜き不足で調味料が浸透しない
- 味が濃い:調味料の比率ミス、煮詰めすぎ
- 臭みが残る:脂抜き・血抜きが不十分
材料(2〜3人分)
| 材料 | 分量 | 役割 |
|---|---|---|
| 鴨ロース肉 | 1枚(約300〜400g) | 主役。脂と赤身の旨みを活かす |
| しろねぎ | 1本 | 香ばしさと香りを添える |
調味料(割合ベース)
| 調味料 | 分量 | 割合 | 役割 |
|---|---|---|---|
| 出汁 | 200ml | 4 | 全体の旨みのベース |
| 薄口醤油 | 50ml | 1 | 風味と下味 |
| 濃口醤油 | 50ml | 1 | コクと色付け |
| みりん | 100ml | 2 | 甘みと照りを出す |
| 酒 | 200ml | 4 | 臭み消しと旨み補強 |
下処理
- 鴨ロース肉:
表面のスジや薄皮を取り除き、皮目に格子状の切れ目を入れる。
→ 焼いた時に縮みを防ぎ、脂が抜けやすくなる。
血抜き
皮目をフォークで数か所刺し、吊るして半日置く。
→ ポイント:血に漬けないようザルや網を使用。
→ 肉表面の赤みが少し落ち着けばOK。 - しろねぎ:
4〜5cmの長さに切り、表面を焼いておく。
→ 焼き目の香ばしさが出汁に移る。
作り方(よくわかるレシピ)
鴨を焼く(脂抜き)
- 鍋に湯を沸かしておく(後で脂抜き用に使用)。
- フライパンを中火〜強火にし、皮目から焼く。
→ 脂がじゅわっと出て、皮がこんがり狐色になったら裏返す。 - 両面を焼いたらザルに上げ、熱湯を回しかける。
→ 表面の脂を流し、臭みを取る。 - 皮と身の間に金串を刺し、血溜まりを防ぐ。
- さらに1〜2時間吊るして血抜きを仕上げる。
煮る(蒸し煮)
- 鍋に出汁・醤油・みりん・酒を入れ、中火で沸騰させる。
- 沸騰したら火を弱め、血抜きした鴨肉としろねぎを入れる。
→ 合図:沸騰させず“コトコト”を保つ。 - そのまま10分間、表面が軽く色づくまで煮る。
- 竹串を刺して透明の肉汁が出ればOK。
中心が生っぽい場合は、さらに5〜10分程度煮る。 - 火が通ったら、鴨を出汁から取り出して吊るす(粗熱を取る)。
- 冷めたら再び出汁に戻し、一晩寝かせる。
→ 味がなじみ、身がしっとり仕上がる。
失敗しない3つのコツ
- 脂抜きと血抜きを丁寧に(臭みの原因を除く)
- 沸騰させずに煮る(肉が硬くなるのを防ぐ)
- 一晩寝かせる(味をなじませ、旨みを引き出す)
保存方法
- 冷蔵保存:出汁に浸したまま、2〜3日。
- 冷凍保存:不可(食感が落ちる)。
- 再利用:残った鴨は焼き飯・うどん・そばに。
アレンジ
- 鴨ロースの焼き飯:刻んで炒めご飯に。香ばしい風味が活きる。
- 鴨南蛮うどん/そば:出汁を活用して麺つゆに。
- サラダ仕立て:薄切りにして冷やし、ポン酢やごまドレで。
旬と豆知識
鴨は冬が旬。脂がのり、旨みが最も濃くなる季節です。「蒸し煮」は火加減の調整が難しい調理法ですが、火を入れすぎず、余熱と寝かせで仕上げるのがプロの鉄則です。
現役和食調理師のひと言
鴨ロースの決め手は火入れの温度と時間の見極め。
強火で一気に焼いて脂を出し、出汁でゆっくり火を通す——
この“緩急”が鴨の旨みを閉じ込めます。焦らず、冷ましてなじませる時間こそが最高の調味料です。
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