春になるとよく見かける「蛤(はまぐり)」
旬の時期はいつ?
あさりとの違いは?
どうやって砂抜きするの?
英語では何て言うの?
と気になる方も多いのではないでしょうか。
蛤は古くから祝い事やお吸い物に使われる高級貝で、旨味の強さと上品な味わいが特徴です。
旬は3月〜4月の春先で、身がふっくらとして最も美味しくなる時期。栄養面ではたんぱく質や鉄分、ビタミンB12を含み、貧血予防にも役立ちます。
この記事では、蛤の旬の時期・特徴・砂抜きのコツ・目利きのポイント・栄養成分・英語表記(Hard clam)まで、調理師の視点でわかりやすく解説します。
春の味覚をよりおいしく味わうために、ぜひ最後までご覧ください。
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はまぐりのおいしい時期
はまぐり
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | ⑩ | ⑪ | ⑫ |
|---|
季節ごとの旬の食材をもっと詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。▶ 旬の野菜・魚介【年間カレンダー】
蛤とは?~くわしく解説~

蛤(はまぐり)は、二枚貝の仲間で、日本では古くから祝い事や行事食に用いられる縁起の良い食材です。
とくに「ひな祭り」や「結婚式」の料理には欠かせない存在で、左右の貝殻が対になってしか合わないことから「夫婦円満」「良縁」の象徴とされています。
🐚 特徴
- 分類:マルスダレガイ科
- 形状:ふっくらと丸みを帯びた貝殻で、殻の模様は茶褐色の筋模様。
- 味わい:うま味が非常に強く、加熱しても身が縮みにくく、出汁も豊富に出る。
- 旬:春(3月~4月)。産卵前で栄養を蓄え、身がふっくらして最も美味しい時期。
- 産卵期:夏(6月~8月)で、この時期は身が痩せ、味が落ちるため避けるのが一般的。
🌏 産地と流通
かつては熊本県、有明海、三重県桑名などが有名な国産産地でしたが、近年は漁獲量が激減。
現在、流通している蛤の多くは中国産(シナハマグリ)や韓国産が中心です。
国産ものは高価ですが、旨味と香りが豊かで格別とされます。
⚠️ 注意点(食中毒と下処理)
蛤は砂を多く含むため、調理前の砂抜きが必須です。
→ 3%程度の塩水(海水と同程度)に入れ、2~3時間ほど置いて砂を吐かせましょう。
産卵期(夏)は、貝毒のリスクが高まるため、加熱調理を徹底するか、旬の春に味わうのがおすすめです。
🍳 調理のポイント
焼き蛤を作る際は、靭帯(じんたい)を切ることで、加熱時に貝が開きすぎず、旨味が逃げにくくなります。
大きすぎると身が硬く、小さすぎると旨味が少ないため、**中サイズ(殻長6〜8cm前後)**が調理に最適です。
吸い物・酒蒸し・潮汁・パスタなど、出汁を活かす料理と好相性。

現役和食調理師のヒント
蛤は「出汁が主役」の食材。吸い物にすると、旨味の強い澄んだスープが楽しめます。
火を通しすぎると硬くなるため、殻が開いたらすぐ火を止めるのがポイントです。
蛤と相性の良い食材
| 食材例 | 相性の理由・ポイント |
|---|---|
| 小松菜 ほうれん草 三つ葉 ねぎ 生姜 | 優しい磯の旨味を引き立て、彩りと香りを添える。特に三つ葉は吸い物に最適。 |
| しめじ えのき 椎茸 | きのこの旨味(グルタミン酸)と蛤の旨味(コハク酸)が相乗効果を生む。 |
| 鯛 海老 あさり | 貝と魚の出汁が混ざり、深い風味を作る。二枚貝同士の組み合わせも人気。 |
| お吸い物の汁 | 蛤の旨味を吸い込み、上品な味わいに。蛤うどん、蛤の炊き込みご飯は定番。 |
| 柚子皮 すだち レモン | さっぱりとした酸味が貝の風味を引き締める。 |

現役和食調理師のヒント
蛤は「出汁の旨味」が主役。強い香辛料や濃い味付けは避けて、
塩・酒・だしなどのシンプルな組み合わせで、上品な味わいを活かすのがおすすめです。
蛤とよく合う調理法
| 調理法 | 特徴・ポイント |
|---|---|
| 吸い物・潮汁 | 蛤の旨味を最大限に引き出す調理法。だし要らずで上品な味に仕上がる。 |
| 酒蒸し | 酒の風味が蛤の旨味を引き立て、ふっくら柔らかく仕上がる。 |
| 焼き蛤 | 強火で香ばしく焼き上げ、旨味を凝縮。貝の中に出汁が溜まる。 |
| 煮付け | 甘辛い味付けで、ごはんによく合うおかずに。 |
| パスタ・リゾット | 貝出汁を活かして、旨味たっぷりのソースが作れる。 |
| アクアパッツァ | 白ワイン・トマト・オリーブオイルと合わせた洋風調理。 |
| 炊き込みご飯 | 蛤の出汁が米にしみ込み、香り豊かなご飯に。 |
| 蒸し物 | 酒蒸し・茶碗蒸しなど、加熱しても身が固くなりにくい。 |

現役和食調理師のヒント
蛤は火の通しすぎが禁物。加熱しすぎると身が縮み、硬くなるため、
殻が開いた瞬間が“食べごろ”です。
出汁の旨味を活かすなら「吸い物」や「酒蒸し」、香ばしさを楽しむなら「焼き蛤」がおすすめ。
地方名
- ホンハマ
- 耳白貝(ミミシロガイ)
- 油貝(アブラガイ)
- 文蛤(アヤハマグリ)
はまぐりの砂抜き方法
🧾 用意するもの
バットまたは浅めの容器
塩(海水程度の濃度)
水(真水・水道水でOK)
アルミホイルまたは新聞紙
手順
- 塩水を作る
水1リットルに対し、塩30g(約大さじ2)を加え3%の塩水を作る。
👉 海水とほぼ同じ濃度。濃すぎ・薄すぎると吐き出しが悪くなる。 - 蛤を並べる
バットに蛤を重ならないように1段に並べる。
※重ねると下の蛤が砂を吸い戻すためNG。 - 塩水を注ぐ
蛤が半分〜殻の口が出る程度に浸かるように注ぐ。
完全に沈めると酸欠で死んでしまうので注意。 - 暗く静かな場所で置く
アルミホイルや新聞紙を軽くかぶせ、常温(20℃前後)で2〜3時間置く。
※夏場は冷蔵庫(5〜10℃)で3〜4時間。
※冷蔵庫内では動きが鈍くなるため、やや長めに。 - 終了後は軽く洗う
砂抜き後、流水で軽くこすり洗いして汚れを落とす。
ポイント
塩水は時間が経つと汚れるため、長時間放置(6時間以上)は避ける。
砂抜き後は早めに調理(当日中)がおすすめ。
調理前に口が開いているもの、臭いの強いものは除く。

現役和食調理師のヒント
砂抜きの成功は「塩分濃度」「酸素」「温度」がカギ。
常温(春先)なら2〜3時間、夏は冷蔵庫で。
塩水を張りすぎず、“浅めにひたす”のがポイントです。
蛤の選び方~目利き~
| 項目 | 良い蛤の特徴 | 避けたい蛤の特徴 |
|---|---|---|
| 殻の状態 | しっかり閉じている 叩くとカチンと重い音 | 殻が開いている 軽く叩いても閉じない |
| 殻の色ツヤ | 表面にツヤがある 模様がはっきり | くすんで乾燥している ヒビがある |
| 重さ | 手に持って重みがある (中身が詰まっている) | 軽い (身が痩せている) |
| 動き(生きている場合) | 水に入れると口を開閉して動く | まったく反応しない |
購入時のポイント
- 殻がしっかり閉じているものを選びましょう。
開いていても軽く叩いて閉じるものはOK、動かないものはNGです。 - 持ったときに重みがある=身が詰まっている証拠です。
- ツヤがあり、模様がくっきりした殻は新鮮なサイン。
- においチェックは重要。磯の香りがするものが◎。
- 夏場は加熱用を選び、生食は避ける(貝毒のリスクがあるため)。
📅 季節による選び方のコツ
- 春(3〜4月):身がふっくら、味が濃く旬の最上品。
- 夏(6〜8月):産卵期で身が痩せやすく、加熱調理向き。
- 冬(12〜2月):旨味は控えめだが、汁物や鍋に合う。

現役和食調理師のヒント
新鮮な蛤は叩くと「カンカン」と高く響く音がします。
貝殻がツヤツヤしていて、手に持ったときにズッシリ重いものを選びましょう。
逆に、軽くて音が鈍いものは身が痩せているサインです。
仲間
- 汀線蛤(チョウセンハマグリ)
- 支那蛤(シナハマグリ)
蛤の栄養素 (食品成分表)
はまぐり(水煮)
可食部100g当たり
| 栄養素 | 値 | 単位 |
|---|---|---|
| 廃棄率 | 75 | % |
| エネルギー | 79 | ㎉ |
| 水分 | 78.6 | g |
| タンパク質 | 14.9 | g |
| 脂質 | 1.5 | g |
| 食物繊維(総量) | – | g |
| 炭水化物 | 2.9 | g |
| ナトリウム | 490 | ㎎ |
| カリウム | 180 | ㎎ |
| カルシウム | 130 | ㎎ |
| マグネシウム | 69 | ㎎ |
| リン | 190 | ㎎ |
| 鉄 | 3.9 | ㎎ |
| 亜鉛 | 2.5 | ㎎ |
| 銅 | 0.23 | ㎎ |
| マンガン | 0.30 | ㎎ |
| ヨウ素 | – | ㎍ |
| セレン | – | ㎍ |
| クロム | – | ㎍ |
| モリブデン | – | ㎍ |
| ビタミンA(レチノール) | 12 | ㎍ |
| ビタミンA(β-カロテン) | 50 | ㎍ |
| ビタミンD | – | ㎍ |
| ビタミンE(トコフェロールα) | 2.8 | ㎎ |
| ビタミンK | 1 | ㎍ |
| ビタミンB1 | 0.15 | ㎎ |
| ビタミンB2 | 0.27 | ㎎ |
| ナイアシン | 1.6 | ㎎ |
| ビタミンB6 | 0.05 | ㎎ |
| ビタミンB12 | 20.0 | ㎍ |
| 葉酸 | 23 | ㎍ |
| パントテン酸 | 0.45 | ㎎ |
| ビオチン | – | ㎍ |
| ビタミンC | 1 | ㎎ |
1️⃣ ビタミンB12:20.0 µg
→ 魚介類の中でも群を抜く含有量。造血や神経機能の維持に不可欠。
2️⃣ 鉄:3.9 mg
→ 貧血予防に役立つ。動物性由来の“ヘム鉄”で吸収率が高い。
3️⃣ 亜鉛:2.5 mg
→ 免疫・味覚・皮膚の健康維持に関与。魚介では比較的多い。
4️⃣ マグネシウム:69 mg
→ 筋肉や神経の正常な働きをサポート。
5️⃣ カルシウム:130 mg
→ 骨の形成や神経伝達に欠かせないミネラル。
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はまぐりの漢字・英語表記

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 漢字 | 蛤 |
| ひらがな | はまぐり |
| 英語表記 | Hard clam Common orient clam |
| 発音記号 | /hɑːrd klæm/ |
| 読み方(カタカナ) | ハード クラム |
| 学名 | Meretrix lusoria |
