海の香りがふわっと広がる「あおさ(石蓴)」は、味噌汁や天ぷらなどでおなじみの海藻です。乾燥タイプも流通しており、手軽に使えることから家庭でも人気があります。一方で「加熱は必要?」「食中毒は大丈夫?」といった安全面への疑問も多く見られます。
このページでは、石蓴(あおさ)の読み方・旬・特徴・仲間の海藻との違い・おすすめの食べ方・栄養素・安全な使い方について、和食調理師として25年以上の経験をもとに、やさしく解説します。
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あおさの旬
あおさ(石蓴)の旬は1月〜4月頃で、春先が最もおいしい時期とされています。特に3月〜4月には、色・香り・やわらかさのバランスが良く、料理に使いやすい品質になります。
地域によって収穫時期に若干の違いがありますが、主に以下のようなカレンダーになります。
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | ⑩ | ⑪ | ⑫ |
|---|

現役和食調理師のヒント
乾燥あおさや冷凍あおさは、旬の時期に採れたものを加工しているため、通年で楽しめます。ただし香りや食感は、旬の生あおさに敵いません。
あおさの解説

あおさ(石蓴〈アオサ〉)は、海藻の一種で緑藻類に分類される海苔の仲間です。なめらかな口当たりと、磯の香りが強いのが特徴で、味噌汁や天ぷら、佃煮などによく使われます。
生のあおさは繊維がやわらかく、サッと火を通すと豊かな香りが広がります。一方、乾燥あおさは保存性が高く、少量でも風味が強く出るため、薬味や風味付けとして重宝されます。
- 正式名称「ヒトエグサ」
- 生産量は三重県が7割を占める
- 青のりと似ているが別物
- ふりかけの海苔として加工される
地方名
| 地域(地方) | 呼び名(別名) |
|---|---|
| 一般 | あおさ |
| 九州地方 | あおさのり |
| 四国・瀬戸内 | 青のり |
| 三重県 | アオサ |
| 沖縄県 | アーサ |

現役和食調理師のヒント
「あおさ」と「青のり」は混同されがちですが、前者は葉状体、後者は糸状体で分類が異なります。地方の呼び名も参考にすると、購入時の混乱が避けられます。
あおさの使い方・注意点
● 乾燥あおさの戻し方
乾燥あおさは、水で戻すと約7~10倍にふくらみます。以下の手順で使用してください。
- 軽く水洗いしてホコリを落とす(乾燥タイプは海水成分がついている場合あり)
- 水(またはぬるま湯)で2~3分ほど戻す
- ザルにあげて水気をよく切る(キッチンペーパーで軽く拭くと◎)

現役和食調理師のヒント
戻しすぎると風味が抜けるため、短時間でサッと戻すのがコツ。味噌汁や卵焼きに加えると、磯の香りが引き立ちます。
● 加熱のポイント
あおさは加熱しすぎると色がくすんで香りも飛びやすい素材です。以下を参考にしましょう。
味噌汁:火を止めてから入れる(余熱で十分)
天ぷら:戻したあと水気をしっかり切って衣をつけ、短時間で揚げる
佃煮・炒め物:弱火~中火で手早く調理
● 食中毒リスクと保存法
乾燥あおさの保管
- 高温多湿を避け、密封して冷暗所で保存
- 湿気ると風味が落ち、カビの原因にも
生のあおさに注意
生のアオサには、腸炎ビブリオなどの細菌が付着していることがあります。必ず加熱する、または乾燥処理された商品を使うのが安全です。

現役和食調理師のヒント
乾燥あおさは長期保存できる優れた食材ですが、水分を含むと傷みが早くなります。戻したあとはその日のうちに使い切るようにしましょう。
あおさと相性の良い食材
| 食材 | 相性の理由 | 料理例 |
|---|---|---|
| 卵 | あおさの磯の香りと卵のまろやかさが調和 | 卵焼き 茶碗蒸し オムレツ |
| 豆腐 | 淡白な味にあおさの香りが映える | あおさの味噌汁 冷奴トッピング |
| 味噌 だし | 旨みと香りの相乗効果が強い | 味噌汁 |
| 白身魚 | 淡泊な白身に香りをプラスできる | あおさの天ぷら 蒸し魚のあしらい |
| もち | 香りとコクが加わることで満足度UP | あおさ餅 雑煮 |
| 小麦粉(粉もの) | 生地に練り込んで風味UP | あおさうどん チヂミ お好み焼き |
| ごはん | 混ぜごはんやふりかけとして好相性 | あおさご飯 おにぎり |
| 油(ごま油・揚げ油) | 揚げることで香ばしさと食感が出る | あおさの天ぷら 炒め物 |

現役和食調理師のヒント
あおさは火を通しすぎると香りが飛ぶので、仕上げに加えるのがベスト。粉ものや卵料理に混ぜると、風味だけでなく見た目もぐっと華やかになりますよ。
あおさに合う調理法
| 調理法 | 向き・不向き | 補足ポイント |
|---|---|---|
| 味噌汁 汁物 | ◎ | 磯の香りがしっかり引き立つ |
| 天ぷら 揚げ物 | ◎ | カリッと揚げれば風味も活きる |
| 和え物 酢の物 | ○ | 水戻し後にさっと和えると美味 |
| 炒め物 | △ | 火を通しすぎると風味が飛ぶ |
| サラダ | △ | 食感が弱くなりやすい |

現役和食調理師のヒント
あおさは火の通しすぎに注意が必要です。香りを引き出したい場合は、汁物に最後に加える、揚げ物にサッと使うのがおすすめ。
あおさの食品成分表
あおさ(素干し)
| 栄養素 | 素干し | 単位 |
|---|---|---|
| 廃棄率 | 0 | % |
| エネルギー | 201 | ㎉ |
| 水分 | 16.9 | g |
| タンパク質 | 22.1 | g |
| 脂質 | 0.6 | g |
| 食物繊維(総量) | 29.1 | g |
| 炭水化物 | 41.7 | g |
| ナトリウム | 3900 | ㎎ |
| カリウム | 3200 | ㎎ |
| カルシウム | 490 | ㎎ |
| マグネシウム | 3200 | ㎎ |
| リン | 160 | ㎎ |
| 鉄 | 5.3 | ㎎ |
| 亜鉛 | 1.2 | ㎎ |
| 銅 | 0.80 | ㎎ |
| マンガン | 17.00 | ㎎ |
| ヨウ素 | 2200 | ㎍ |
| セレン | 8 | ㎍ |
| クロム | 160 | ㎍ |
| モリブデン | 23 | ㎍ |
| ビタミンA(レチノール) | – | ㎍ |
| ビタミンA(β-カロテン) | 300 | ㎍ |
| ビタミンD | – | ㎍ |
| ビタミンE(トコフェロールα) | 1.1 | ㎎ |
| ビタミンK | 5 | ㎍ |
| ビタミンB1 | 0.07 | ㎎ |
| ビタミンB2 | 0.48 | ㎎ |
| ナイアシン | 10.0 | ㎎ |
| ビタミンB6 | 0.09 | ㎎ |
| ビタミンB12 | 37.2 | ㎍ |
| 葉酸 | 180 | ㎍ |
| パントテン酸 | 0.44 | ㎎ |
| ビオチン | 31.0 | ㎍ |
| ビタミンC | 25 | ㎎ |

現役和食調理師のヒント
あおさの栄養成分は「素干し(乾燥)」の状態で計測された数値です。実際に食べる際は水で戻して使用するため、栄養素は重量あたりで大きく薄まります。特に食物繊維やミネラルは豊富ですが、「戻した状態での摂取量」はごくわずかになることが多い点にご注意ください。
あおさの英語表記・漢字表記・読み方

| 表記の種類 | 内容 |
|---|---|
| 英語表記 | sea lettuce(シー・レタス)または green laver(グリーン・レイヴァー) |
| 学名 | Ulva spp. または Monostroma spp.(種類により異なる) |
| 漢字表記 | 石蓴/石蒪 |
| ひらがな表記 | あおさ |
| 読み方(音読み・訓読み) | 石蓴(あおさ/せきじゅん)※一般的には「あおさ」と読む |
| 英語発音記号 | sea lettuce [siː ˈletɪs]/green laver [ɡriːn ˈleɪvɚ] |
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