「酢と醤油を一対一で合わせる」——それが二杯酢(にはいず)の基本。
和食の中でもっともシンプルで奥深い合わせ酢です。
甘味を加えず、酸味と塩味だけで素材の旨味を引き出すのが特徴。
刺身・酢の物・貝類・野菜など、さっぱりと食べたい料理に最適です。
この記事では、味が決まる黄金比と酢のカドを取る火入れのコツを、現役和食調理師が詳しく解説します。
味が決まらない原因
- 酢と醤油の比率が1:1になっていない
- 酢の酸味が強く、味に角がある
- 出汁を入れすぎてぼやける
- 火を入れず、酢と醤油が分離した風味になる
- 冷まし方が遅く、香りが飛ぶ
黄金比|2つの選べる比率
| タイプ | 比率(出汁:醤油:酢) | 特徴 |
|---|---|---|
| 万人向け黄金比 | 1:1:1 | 酢の酸味と醤油の旨味がバランスよく、使いやすい基本形 |
| プロ寄り黄金比 | 0.5:1:1 | 酸味と塩味を際立たせ、魚介類に合わせるとキレのある味わいに |
その理由
二杯酢は「酢の酸」と「醤油の塩分」が主役。
出汁を入れることで味に“奥行き”が生まれますが、入れすぎると薄まるため、用途に応じて調整します。
材料

| 材料 | 分量 | 役割 |
|---|---|---|
| 出汁 | 100cc | 酢の酸味を和らげ、全体をまとめる |
| 薄口 または濃口醤油 | 100cc | 塩味と旨味を与える(食材に合わせて使い分け) |
| 穀物酢 | 100cc | 素材の味を引き立てる酸味の主役 |
作り方(よくわかるレシピ)
- 出汁と醤油を合わせる
鍋に出汁と醤油を入れ、中火にかける。
→ ふつふつと泡が出る程度まで温める。 - 酢を加える
沸騰直前で火を止め、酢を入れる。
→ 沸騰させないことで酸味を保ちつつ、カドを取る。 - 素早く冷ます
鍋の底を氷水にあて、香りを逃さないよう急冷。
→ 冷ますことで味が締まり、香りが安定する。
失敗しない3つのコツ
- 酢は火を止めてから入れる(酸味が飛びすぎない)
- 香りを残すため、急冷が鉄則
- 薄口と濃口を半々で合わせると、旨味と色合いのバランスが取れる
使い道

| 相性の良い料理 | 用途・一言 |
|---|---|
| もずく酢 わかめ酢 | 酸味をまろやかに、香り高く |
| かに酢 貝類の酢の物 | 素材の甘みを引き立てる |
| 野菜の酢浸し | 夏にぴったりのさっぱり副菜に |
| 焼き魚や揚げ物 | 油を切り、後味を軽く仕上げる |
保存方法
- 冷蔵保存:清潔な瓶や容器に入れ、約1週間
- 冷凍保存:不可(香りと風味が損なわれる)
- 再使用時:冷蔵庫から出して常温に戻すと、風味が際立つ
応用・アレンジ

- 酢を米酢にすると、まろやかで上品に
- 酢をりんご酢にすると、爽やかな酸味で洋風にも対応
- 出汁を昆布出汁に変えると、精進料理にも使える
リンゴ酢についてはコチラ▶林檎酢 りんごす(apple vinegar)
現役和食調理師のひと言
二杯酢は「酢と醤油だけの潔さ」が魅力。食材の持つ塩味や旨味を邪魔せず、自然な酸味で引き立てます。酢のカドを取るには“火入れと急冷”が命。このひと手間で、味の角が取れ、料亭のようなまろやかさに仕上がります。
