シャリ(酢飯)の味を左右する“命のタレ”——それが寿司酢(すしず)です。
酢・砂糖・塩というわずか3つの素材で決まるシンプルな調味ですが、
火入れ・配合・冷まし方ひとつで仕上がりが驚くほど変わる繊細な合わせ酢。
本稿では、現役和食調理師が店でも通用する黄金比と作り方の理屈をわかりやすく解説。
家庭でも“すし屋の味”に近づける、プロ仕様の寿司酢を紹介します。
味が決まらない原因
- 砂糖と塩が完全に溶けていない
- 酢を沸騰させて酸味が飛んでいる
- 酢の種類(穀物酢/米酢/赤酢)の特性を理解していない
- ご飯と混ぜる温度が合っていない(熱すぎ・冷たすぎ)
- 雑菌や水滴が入って風味が劣化している
黄金比|2つの選べる比率

| タイプ | 比率 (砂糖:塩:酢) | 特徴 |
|---|---|---|
| 万人向け黄金比 | 3.4:1:4 | 酸味と甘味のバランスがよく、一般家庭の酢飯に最適 |
| プロ寄り黄金比 | 3:1:4.2 | 酢をやや強めにして、シャリにキレを出す |
その理由
寿司酢は「甘味の丸み」「塩味の締まり」「酸味のキレ」で構成されます。
ご飯と混ぜたときに甘味が一段階引くため、単体で味見した時点では少し甘めが理想です。
材料
作り方(よくわかるレシピ)
- 鍋に調味料をすべて入れる
砂糖・塩・酢を計量し、鍋に入れる。
→ 最初によく混ぜ、底に砂糖が残らないように。 - 中火で火入れ
中火にかけ、砂糖と塩が完全に溶けるまで温める。
→ 沸騰は厳禁。沸く直前で止めることで酸味を保つ。 - 冷ます(味を安定させる)
鍋ごと常温でゆっくり冷ます。
→ 急冷すると香りが立ちすぎるため、自然冷却が理想。
失敗しない3つのコツ

- 酢は沸騰させない(酸味が飛ぶ)
- 砂糖と塩は完全に溶かす(味ムラ防止)
- 冷ましてから保存(香りを閉じ込める)
使い道

| 相性の良い料理 | 用途・一言 |
|---|---|
| 酢飯・ちらし寿司 | 寿司酢の基本用途。冷めても旨味が続く。 |
| 巻き寿司・稲荷寿司 | 甘味と酸味のバランスが重要。 |
| 手まり寿司・押し寿司 | 酸味をやや強くして引き締め効果。 |
| 南蛮漬けや酢の物 | 酸味の角が取れたまろやか風味に応用可。 |
▶ 柚香酢(ゆこうす)の黄金比レシピはこちら
▶ 三杯酢の作り方はこちら
保存方法
- 常温保存:水滴や異物が入らない清潔な瓶で2〜3週間
- 冷蔵保存:より長持ち。風味を保ちやすい
- 使用時の注意:しゃもじや計量カップは必ず乾いたものを使用
応用・アレンジ

| アレンジ | 方法 | 特徴 |
|---|---|---|
| 昆布入り寿司酢 | 冷ました寿司酢に昆布を入れ、一晩寝かす | 旨味と香りが深まる |
| 赤酢バージョン | 穀物酢を赤酢に変える | 江戸前寿司風のコク |
| 柚子寿司酢 | 柚子の皮をすりおろして加える | 爽やかな香りで季節感を演出 |
現役和食調理師のひと言
寿司酢は「酸を煮切らず、香りを飛ばさず」が基本。
砂糖・塩・酢を合わせた時点で、香りの立ち上がりと舌触りを確かめてください。
米の熱で酸味が少し和らぐため、やや強めに作るのがプロ流。
昆布や柚子を寝かせると、自分だけの“店の味”になります。
