板屋貝(いたやがい)は、ホタテによく似た見た目をしていますが、味わいや使われ方に違いがある貝です。近年では「ベビーホタテ」として流通することもあり、混同されがちですが、実は別の種類。うま味のある柔らかい身は、煮物やバター焼き、炊き込みご飯などさまざまな料理で活躍します。
この記事では、板屋貝の旬・特徴・ホタテとの違い・栄養・英語表記まで、和食調理師の視点からわかりやすく解説します。
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板屋貝の旬~おいしい時期~
いたやがい
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | ⑩ | ⑪ | ⑫ |
|---|
秋(9〜11月):ほどよく成熟した貝柱で、炊き込みご飯や煮物に深い風味。
初夏(3〜6月):特に4〜6月は身がふっくら甘く、酒蒸しや炊き込みご飯に最適。
春〜夏に市場で鮮魚で見かけることもあり、鮮度が良ければ刺身もおすすめ
季節ごとの旬の食材をもっと詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。▶ 旬の野菜・魚介【年間カレンダー】
板屋貝とは 〜特徴とホタテとの違い〜

板屋貝(いたやがい)は、イタヤガイ科の二枚貝で、見た目はホタテにそっくりですが、分類・生態・味にいくつかの違いがあります。
板屋貝の特徴
- 貝殻は扁平で放射状の模様があり、色はややくすんだ茶色や灰色が多い
- サイズはホタテよりやや小ぶり(7~10cm前後)
- 旨味はやや穏やかで、食感は柔らかめ
- 一般には加熱調理用に使われることが多く、刺身よりもボイル・焼きが主流
- 「ベビーホタテ」として販売されることもあるが、ホタテの稚貝とは異なる場合も
ホタテとの違い
| 項目 | 板屋貝 | ホタテ貝 |
|---|---|---|
| 分類 | イタヤガイ科 | イタヤガイ科ホタテ属 |
| 味の濃さ | やや淡白で優しい旨味 | 甘みと旨味が強い |
| 貝柱の太さ | やや小さめ | しっかり太く弾力あり |
| よく使われる料理 | ボイル、炊き込みご飯、酒蒸し | 刺身、バター焼き、グラタンなど |
| 市場での流通量 | やや少なめ、加工品が多い | 全国で広く流通、生食用も豊富 |

現役和食調理師のヒント
板屋貝は火を通してこそ旨味が引き立つタイプの貝。バター焼きや酒蒸し、炊き込みご飯などでふっくらとした食感を楽しめます。ホタテと違って貝柱が小さめなので、サッと火を通すのがコツです。
地方名
- ホタテガイ
- シャモジガイ
- シャクシゲ
- イタノガイ
- イタラ
- エタノガイ
- オオマキガイ
- カミサラガイ
- シンナベガイ
板屋貝の目利き
板屋貝は鮮度が命の食材です。以下を参考に選びましょう
| チェックポイント | 見分け方 |
|---|---|
| 殻の状態 | 丸みがあり、ヒビや欠けがないもの。放射状の模様がくっきりしていると良品。 |
| 貝殻の色 | くすみのないツヤのある茶色〜灰色が目安。乾燥していないものが◎。 |
| 貝の開閉 | 自然に閉じているものを選ぶ。開いていて閉じないものは鮮度低下のサイン。 |
| 匂い | 生臭さがなく、海水のような香りがするものを選ぶ。異臭があるものは避ける。 |
| 中身の状態(開いた場合) | 貝柱がふっくらし、透明感のある乳白色。ドリップが少ないものが新鮮。 |

現役和食調理師のヒント
板屋貝は流通量が限られるため、冷凍や加工品として手に入ることも多いです。その場合も、解凍後に水分が出すぎていないか、ドリップが少ないかをチェックしましょう。
板屋貝と相性の良い食材
板屋貝は淡白でやさしい味わいのため、香り・旨味・酸味を補う食材と合わせると、料理がより引き立ちます。
| 食材名 | 組み合わせの理由・使い方例 |
|---|---|
| バター | 風味とコクを加え、板屋貝の甘みを引き立てる。バター焼きに最適。 |
| 醤油 | 焼き物や煮物に少量加えると、旨味が増してご飯がすすむ味に。 |
| 酒 みりん | 酒蒸しや煮物で使用。風味づけと臭み消しに。 |
| 生姜 | 煮物に使うと臭みを和らげ、香りもプラスされる。 |
| ごぼう | 食感のコントラストと香りの強さが好相性。炊き込みご飯におすすめ。 |

現役和食調理師のヒント
板屋貝はホタテほど主張が強くない分、合わせる食材で表情が変わります。香味野菜や発酵調味料(味噌、塩麹)との組み合わせもおすすめです。
板屋貝に合う調理法
板屋貝は、やさしい旨味とふっくらした食感が持ち味。加熱により風味が引き立つため、シンプルな味付けの調理がよく合います。
| 調理法 | おすすめ度 | 理由 |
|---|---|---|
| 焼き物 | ◎ | バター醤油焼きにすると香ばしく、貝の甘みが引き立つ。 |
| 酒蒸し | ◎ | 酒と少量の塩で蒸すと、ふっくら仕上がり、磯の香りが楽しめる。 |
| 煮物 | ○ | 醤油やみりんで軽く煮ると旨味が染み込む。火加減に注意が必要。 |
| 炊き込みご飯 | ○ | ごぼうや生姜と一緒に炊くと風味豊かに仕上がる。 |
| 刺身 | △ | 鮮度が非常に良ければ可能だが、一般的にはボイルや加熱用が多い。 |
| 揚げ物 | × | 繊細な風味が油に負けてしまいがちで、おすすめはしない。 |

現役和食調理師のヒント
板屋貝は火を通しすぎると硬くなりやすいため、加熱は短時間が基本。酒蒸しや焼き物では、貝がふわっと開いたタイミングで仕上げるのがベストです。
板屋貝の栄養素~食品成分表~
板屋貝(いたやがい)は、見た目の華やかさだけでなく、栄養面でも優れた食材です。
特に注目すべきは、高たんぱく・低脂質である点。筋肉の維持や疲労回復に役立つたんぱく質が豊富でありながら、脂質は控えめで、ダイエット中の食事にも向いています。
いたやがい(生)養殖
可食部100g当たり
| 栄養素 | 生 | 単位 |
|---|---|---|
| 廃棄率 | 65 | % |
| エネルギー | 55 | ㎉ |
| 水分 | 84.9 | g |
| タンパク質 | 10.8 | g |
| 脂質 | 0.8 | g |
| 食物繊維(総量) | – | g |
| 炭水化物 | 1.5 | g |
| ナトリウム | 450 | ㎎ |
| カリウム | 260 | ㎎ |
| カルシウム | 48 | ㎎ |
| マグネシウム | 74 | ㎎ |
| リン | 17 | ㎎ |
| 鉄 | 2.0 | ㎎ |
| 亜鉛 | 6.1 | ㎎ |
| 銅 | 0.10 | ㎎ |
| マンガン | 4.90 | ㎎ |
| ヨウ素 | – | ㎍ |
| セレン | – | ㎍ |
| クロム | – | ㎍ |
| モリブデン | – | ㎍ |
| ビタミンA(レチノール) | 5 | ㎍ |
| ビタミンA(β-カロテン) | 9 | ㎍ |
| ビタミンD | – | ㎍ |
| ビタミンE(トコフェロールα) | 0.4 | ㎎ |
| ビタミンK | – | ㎍ |
| ビタミンB1 | – | ㎎ |
| ビタミンB2 | 0.20 | ㎎ |
| ナイアシン | 1.4 | ㎎ |
| ビタミンB6 | 0.07 | ㎎ |
| ビタミンB12 | 13.0 | ㎍ |
| 葉酸 | 14 | ㎍ |
| パントテン酸 | 0.24 | ㎎ |
| ビオチン | – | ㎍ |
| ビタミンC | – | ㎎ |
1️⃣ マンガン:4.90 mg
→ 非常に多い。ミネラルの中でも突出しており、抗酸化作用や代謝酵素の働きに関与。
2️⃣ 亜鉛:6.1 mg
→ 動物性食品でも高水準。免疫維持・味覚機能に重要。
3️⃣ ビタミンB12:13.0 µg
→ 魚介・貝類に多い栄養素で、赤血球生成や神経機能維持に関与。
4️⃣ タンパク質:10.8 g
→ 高たんぱく・低脂質(0.8 g)で、ヘルシーな動物性食品。
5️⃣ マグネシウム:74 mg
→ 筋肉・神経の働きを助け、カルシウムとともに骨の健康維持に寄与。
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英語・漢字表記

| 表記項目 | 内容 |
|---|---|
| 漢字 | 板屋貝 |
| ひらがな | いたやがい |
| 英語表記 | Japanese bay scallop |
| 英語読み方 | [ˈbeɪ ˌskæləp](ベイ・スキャロップ) |
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