まろやかな酸味と優しい甘味が特徴の「甘酢(あまず)」。
酢の物、南蛮漬け、千枚漬け、らっきょう漬けなど、和食の保存料理や副菜に欠かせない基本の合わせ酢です。
「酸っぱすぎる」「甘すぎる」「味がボケる」などの失敗も、黄金比と火入れのコツを押さえるだけで、誰でも料亭のような上品な味わいに。現役和食調理師がバランスの取れた甘酢の作り方を詳しく解説します。
味が決まらない原因
- 酢の酸味が強く、砂糖とのバランスが悪い
- 出汁の量が多く、味が薄くなる
- 砂糖が溶け切らず、ムラが出る
- 火加減が強く、砂糖が焦げて苦味が出る
- 急冷を怠り、香りが飛ぶ
黄金比|2つの選べる比率
| タイプ | 比率 (出汁:砂糖:酢) | 特徴 |
|---|---|---|
| 万人向け黄金比 | 2:1:2 | 酸味と甘味のバランスが取れ、使いやすい基本形 |
| プロ寄り黄金比 | 2:0.8:2.2 | 酸味をやや強めにし、素材の味を引き締める上品な味わい |
その理由
甘酢は「酸味と甘味の中間」を狙う調味。
プロは砂糖を控えめにして、食材本来の甘味を活かします。
また、火を入れて砂糖を完全に溶かすことで、角のないまろやかな甘酢になります。
材料
| 材料 | 分量 | 役割 |
|---|---|---|
| 出汁 | 100cc | 酸味をやわらげ、全体をまとめるベース |
| 砂糖 | 50g | 酸味をまろやかにし、照りとコクを加える |
| 塩 | 少々 | 味を引き締め、甘味を際立たせる |
| 穀物酢 | 100cc | 酸味の中心。爽やかな風味を加える |
作り方(よくわかるレシピ)
- 鍋にすべて入れる
出汁・砂糖・塩・酢を鍋に入れる。
→ 計量を正確に行い、混ぜムラを防ぐ。 - 火にかけて溶かす
中火で加熱し、砂糖が完全に溶けたら火を止める。
→ 沸騰させない。泡が出始めたらすぐに止める。 - 急冷する
鍋ごと氷水にあてて素早く冷ます。
→ 酸味と香りを保ち、まろやかに仕上げる。
失敗しない3つのコツ
- 沸騰厳禁:酸味が飛び、味がぼやける
- 砂糖を完全に溶かす:味ムラを防ぐ
- 冷ますタイミング:熱が残ると香りが失われる
使い道

| 相性の良い料理 | 用途・一言 |
|---|---|
| 千枚漬け らっきょう漬け | 甘味と酸味で素材の持ち味を引き立てる |
| 酢の物 (胡瓜・茗荷・生姜) | 爽やかで箸休めに最適 |
| 南蛮漬け (鯵・鶏肉) | 甘酸っぱく仕上げて食欲増進 |
| 炒め物 (酢豚・中華風) | 調味のベースにも応用可 |
保存方法
- 冷蔵保存:清潔な瓶や密閉容器で約1週間
- 冷凍保存:不可(酸味が変化)
- 再使用時:冷蔵庫から出して常温に戻すと香りが蘇る
応用・アレンジ

- 鷹の爪を加えてピリ辛に(南蛮漬け・マリネに)
- 味醂を使うと、より自然でまろやかな甘味に
- 黒酢に変えると、コクのある深い味わいに
- 柚子やレモン果汁を加えると爽やかで上品な香りに
現役和食調理師のひと言
甘酢は“やさしい酸味”が命。
火を入れることで砂糖と酢がなじみ、酸味の角がとれます。
鷹の爪を少し入れると、味が引き締まり、甘さに奥行きが出ます。
沸騰させない・冷ます・正確に計る——この3つが仕上がりの分かれ目です。
