烏賊の旨みを移した出汁で里芋をほっくり炊き、最後に烏賊を戻してさっと仕上げる——和食の王道テクです。
失敗要因は「里芋のぬめり・煮崩れ」と「烏賊の加熱しすぎ」。
結論は、ぬめり処理→里芋先行→烏賊は短時間。これで味が濁らず上品に決まります。
よくある失敗と原因
- 里芋が硬い…下茹で不足/火が弱すぎ
- 里芋が煮崩れる…沸かし過ぎ(対流強すぎ)/面取り不足
- 烏賊が固い・縮む…加熱時間のオーバー
- 味がぼやける…ぬめり残りで出汁が濁る/調味料の比率ミス
- 焦げる…煮汁不足のまま強火
材料(2〜3人分)

| 材料 | 分量 | 役割 |
|---|---|---|
| 里芋 | 300〜350g | ほっくり主役。ぬめり処理が要 |
| 烏賊 (スルメイカ) (ヤリイカ) | 1杯(正味200g目安) | 旨み出し。身は短時間仕上げ |
| きぬさや 小ねぎ | 適量 | 仕上げの彩りと香り |
| おろし生姜 | 少々 | 風味と後味を締める |
調味料(基本配合)
| 調味料 | 分量 | 割合 | 役割 |
|---|---|---|---|
| 出汁 | 300cc | 30 | ベースの旨み |
| 濃口醤油 | 30cc | 3 | 色とコク |
| 砂糖 | 10g | 1 | 甘み・照り |
| みりん | 40cc | 4 | まろやかさ |
| 料理酒 | 20cc | 2 | 風味・臭み消し |
下処理

- 里芋
皮をむき、面取り。塩で揉んでぬめりを出し、流水で洗う→さっと下茹でしてザルに上げる。
理由:出汁濁りとえぐみを防ぎ、味しみ向上。 - 烏賊
ワタ・軟骨・くちばしを除き、胴は1cm輪切り、ゲソは食べやすく。表面の水分を拭く。
理由:水分は硬化と臭みの原因。
作り方“よくわかるレシピ”
- 烏賊の旨みを出す(短時間)
鍋に出汁・酒・砂糖・みりん・濃口醤油を入れ中火でふつふつ。沸騰直前に烏賊を入れ、沸いたら2〜3分で引き上げる。
→胴がふっくら、色が白濁してきたら即退避。 - 里芋を炊く(里芋先行)
①の煮汁に里芋を加え、再沸騰→弱めの中火。表面が静かにゆれる程度に火加減を調整し、落とし蓋。10〜15分、竹串がスッと入る手前で火を止める。
→中心にわずかな抵抗が残る“七分通り”。余熱で仕上げる。 - 仕上げ合わせ
里芋が狙いの硬さに来たら、火を弱めて烏賊を戻し1〜2分温めるだけ。彩りを入れるならここで加えてサッと火を通す。
→煮汁がほんのりとろみ・艶が出てきたら完成。 - 味を含ませる
火を止め鍋のまま粗熱をとる。冷める過程で味が入る。
そのまま食べても、一晩置くと格段に旨い。
失敗しない3つのコツ
- 里芋は塩揉み→下茹ででぬめりコントロール
- 里芋を先に、烏賊は短時間で戻すだけ
- 強い沸騰はNG(対流で煮崩れ&硬化)
保存方法
- 冷蔵:煮汁ごと密閉で2日。温め直しは弱火で。
- 冷凍:里芋は可(食感やや変化)/烏賊は不可推奨。
- 翌日:味がまとまりベスト。おろし生姜少々で風味アップ。
相性の良い料理・献立提案
- 主菜に:焼き魚(鯖・鰆)、鶏照り焼き
- 副菜に:ほうれん草お浸し、ぬか漬け
- 汁物:合わせ味噌の味噌汁(豆腐・わかめ)
- ご飯:白ごはん/雑穀米
旬と豆知識
- 里芋:秋〜冬が旬。下処理でぬめりを“適度に残す”と口当たりが良い。
- 烏賊:種類で火通りが変わる。ヤリイカは更に短時間が基本。
- 技法:「旨みをたれへ移し→主役を炊く→戻す」の順は南関東の煮物で定番。
現役和食調理師のひと言
煮物は“沸かす”のではなく含ませる料理。静かな火で里芋の角を立てたまま旨みを吸わせ、烏賊は仕上げでふわっと。
時間よりも沸き加減・串の入り・艶で判断すれば、必ず美味しく仕上がります。
