卵黄のまろやかさと酢の酸味が調和した、上品な酸味ダレ「黄身酢」。
和え物・焼き魚・酢の物・蒸し物などに使われ、料理全体をやさしくまとめる万能ソースです。
「ダマになる」「固まりすぎる」など、失敗が多い黄身酢も、黄金比と湯煎温度の見極めで、滑らかでコクのある味わいに仕上がります。
プロのコツと理由を交えて、再現性の高い「黄身酢の作り方」を紹介します。
味が決まらない原因
- 酢と砂糖のバランスが不安定(酸っぱすぎる/甘すぎる)
- 湯煎の温度が高く、卵が急に固まる
- 混ぜ方が不十分で、分離・ダマになる
- 余熱管理をしていない(固くなりすぎる)
- 裏ごしを省いて、舌触りが悪くなる
黄金比|2つの選べる比率
| タイプ | 比率(砂糖:みりん:酢) | 特徴 |
|---|---|---|
| ① 万人向け黄金比 | 1:3:3 | 酸味と甘みのバランスが良く、上品で食べやすい |
| ② プロ寄り黄金比 | 1:2:4 | 酸味をやや立たせ、料理全体を引き締める |
理由
黄身酢は「卵黄のまろやかさ」と「酢の酸味」の引き算で決まります。卵黄の油脂分で酸味が和らぐため、プロはやや強め(酢を多め)に仕上げ、冷めても味が締まるように調整します。
材料

| 材料 | 分量(卵黄3個に対して) | 役割 |
|---|---|---|
| 卵黄 | 3個 | 黄身の油脂と旨味で酸味を包む |
| 砂糖 | 10g | 酸味をまろやかに整える |
| みりん | 30cc | コクと照りを加える |
| 穀物酢 | 30cc | 全体を引き締める酸味 |
| かつお節 | 5g | 旨味と香りを補強する(仕上げ用) |
作り方(よくわかるレシピ)
- 卵黄を分ける
卵を割り、卵黄と卵白に分ける(卵白は別の料理に使用可)。 - 調味料と合わせる
ボウルに卵黄・砂糖・みりん・酢を加え、泡立て器でよく混ぜる。
→ 白っぽくなるまで混ぜるのがコツ。 - 湯煎にかける(最大のポイント)
鍋に湯を張り、沸騰直前(約80℃前後)で火を弱める。
ボウルを浮かべ、底からよく混ぜる。
→ 粘度がつき、トロリと流れる程度が火の止めどき。 - かつお節を加える
火を止める直前にかつお節を入れて、サッと混ぜる。
→ 香りづけと旨味補強。 - 余熱を止める
氷水を張ったボウルに底を当て、余熱で固まらないよう温度を下げる。
→ 硬くなりすぎた場合は、土佐酢で少し伸ばす。 - 裏ごしして仕上げる
粗熱が取れたら裏ごしすることで、滑らかで上品な口当たりに。
失敗しない3つのコツ
- 湯煎は80℃以下で、火から離すタイミングを早めに
- 余熱を見越してやや柔らかめに止める
- ダマになっても慌てず、裏ごしすれば滑らかになる
使い道
| 相性の良い料理 | 用途・一言 |
|---|---|
| 菜の花 ほうれん草 | 酢味噌和え風に上品な酸味をプラス |
| 焼き魚(鰆・鯛など) | 酸味で脂を引き締める |
| 蒸し海老・蟹 | 黄身のコクが甲殻類に合う |
| 茹で野菜・白身魚の南蛮風 | 酢の代わりに黄身酢でまろやか仕立て |
保存方法
- 冷蔵保存:密閉容器で2〜3日
→ 乾燥を防ぐため、表面にラップを密着させる - 冷凍保存:おすすめしない(卵黄が分離するため)
- 再使用時:湯煎で軽く温めて滑らかに戻す
応用・アレンジ
- 甘めにしたい:砂糖を1.5倍に
- さっぱり仕立て:穀物酢を米酢に変更
- 大人向け:少量の辛子を混ぜて「辛子黄身酢」に
現役和食調理師のひと言
黄身酢は、マヨネーズよりも“和の酸味”を感じる上品なソース。
湯煎の温度と混ぜるリズムさえつかめば、家庭でも料亭の味に近づきます。
トロミの見極め=職人の感覚ですが、裏ごしをすれば誰でも滑らかに仕上がります。
