小豆はやわらかく煮上げたあと、仕上げの作り方によって食感も用途も大きく変わる食材です。このページでは、Zoom講習会で実際に行った内容をもとに、「共通の煮方」+「3種類の仕上げ」という形でわかりやすくまとめています。
まずは小豆をふっくらやわらかく炊くための下ごしらえと基本の煮方を解説。その後、仕上げに応じて
①粒を残して上品に仕上げる方法
②一般的な“あんこ”へ炊き上げる方法
③粉吹き芋のように水分を飛ばし濃厚に仕上げる方法
の 3パターンに分けて仕上げていきます。
「皮が破れる」「固いまま中心が残る」「煮崩れて台無しになる」——小豆で失敗が起こりやすい理由も、工程を理解すれば避けられます。ぜんざい・おしるこ・赤飯・和菓子作りにも役立つ、プロ視点のコツを交えた内容ですので、用途に合わせて好みの炊き上がりを選んでみてください。
小豆をおいしく炊くための基本

小豆をふっくら上品な味わいに炊き上げるためには、最初の下ごしらえがとても重要です。特に和食では、渋みや雑味を取り除き、豆本来の風味を際立たせるために「渋切り」という工程を行います。手間は少しかかりますが、仕上がりの香り・色・口当たりに大きな差が出るため、確実に行いたい下準備です。
渋切りとは?
渋切りとは、小豆を一度下ゆでして茹で汁を捨てる工程のこと。これにより「渋み成分(サポニン)」や「アク」を取り除き、えぐ味のない上品な味に仕上げることができます。
渋切りを行う理由
| 理由 | 効果 |
|---|---|
| アク・渋みを除く | 雑味の少ないクリアな味に仕上がる |
| 皮の張りを保つ | 煮崩れしにくくなる |
| 色味が濁らない | 仕上がりが美しくなる |
特に ぜんざい・あんこ・赤飯 のように“豆が主役になる料理”では味への影響が大きいため、渋切りの有無で完成度に確かな差が生まれます。
渋切りの手順(基本)
- さっと洗った小豆を鍋に入れ、水をたっぷり注ぐ
- 強火にかけ、沸騰させる
- 1〜2分ゆでたら火を止め、ザルにあけてお湯をすべて捨てる
- 再び鍋に戻し、新しい水を注いで本ゆでへ
1回の渋切りで十分ですが、渋みが強い品種や濃い味に仕上げたい場合は、2回行うとよりすっきりした味になります。
下ごしらえのポイント
- 小豆は洗いすぎない(皮が破れやすくなるため“表面の汚れを落とす程度”)
- 鍋は厚手のものを使うと熱が均一に回りやすい
- 金属臭が移る鍋(アルミ製など)は避けるのが理想
ここまでを丁寧に行うことで、このあとの煮上がりの味と食感が格段に良くなります。
小豆をやわらかく煮る手順
渋切りを終えたら、小豆をふっくら柔らかくなるまで煮ていきます。この工程は3つの仕上げすべてに共通する基本の煮方です。焦らず弱火で煮ることが、美しい煮上がりにつながります。
材料と水加減
- 小豆:同量
- 水:小豆の 4〜5倍量(途中で少量の差し水をしながら調整)
水はたっぷり使うことで豆が対流し、均一に柔らかく仕上がります。
手順
- 渋切り後の小豆に新しい水を加える
鍋に小豆を戻し、水をたっぷり加える。 - 沸騰させ、すぐに弱火へ
最初は強火で沸かし、沸いたら弱火に落とす。
└ 理由:急に対流を止め、皮の破れを防ぐため - コトコトと弱火で煮る(40〜60分)
蓋はせず、鍋肌が軽く波打つ程度の火加減で。
※アクが浮いたらすくい取り、水が減りすぎたら差し水を行う - やわらかさの目安を確認する
指で軽くつまんで潰れる程度になればOK
└ この段階までは“砂糖を入れない”のが最大のポイント
└ 砂糖は浸透圧で皮を締めるため、早く入れると硬く仕上がる
ここまでで、中まで火の通った理想の柔らかさに仕上がります。ここから用途に応じて3つの仕上げに分岐していきます。
火加減のコツ
| 失敗例 | 原因 | 対処 |
|---|---|---|
| 皮が破れる | 沸騰の勢いが強い | “静かに対流”の弱火を守る |
| 中が硬い | 強火で短時間 水不足 | 差し水を徹底してゆっくり煮る |
| 味がぼやける | アクの残り | アクは見つけたらこまめに除く |
【仕上げ①】粒を残す上品な炊き上がり

粒を残したい場合は、皮の張りを守りながら味を含ませる仕上げがポイントです。赤飯や粒感を活かしたぜんざい向きで、小豆本来の香りと食感を楽しめる炊き方です。
手順
- 柔らかく煮えた小豆の湯を一部捨てる(好みで調整)
味を含ませるスペースをつくるイメージ。すべて捨てる必要はない。 - 砂糖を加え、弱火で含ませる
砂糖を2〜3回に分けて加え、やさしく鍋を揺すりながら加熱する。
※ かき混ぜすぎると皮が破れるため、ヘラで混ぜず“鍋ゆすり”が基本 - 塩で味をまとめる
砂糖の甘みがなじんだら、最後に塩をほんのひとつまみ。
味が締まり、小豆の風味が引き立つ。 - 粗熱をとって完成
休ませることで甘みが落ち着き、粒感がより感じられる。
粒を残すためのコツ
| ポイント | 理由 |
|---|---|
| 砂糖は分割して入れる | 浸透圧の急変を防ぎ、皮が締まりすぎない |
| 混ぜない・潰さない | 皮破れによる濁りと崩れ防止 |
| とろ火キープ | 対流が穏やかになり粒が整う |
【仕上げ②】一般的なあんこの炊き方
粒あんは小豆の形をほどよく残しながら、しっとりと甘みを含ませた定番の仕上げです。おはぎ・どら焼き・たい焼き・ぜんざいなど、和菓子全般に応用できる万能タイプ。皮を破らず芯まで甘みを入れることが、おいしい粒あんの決め手です。
手順
- 共通工程で柔らかく煮た小豆の湯を適量捨てる
水分が多いと甘みが薄まるため「豆が軽く顔を出す程度」に調整。 - 砂糖を3回に分けて加える
弱火のまま砂糖を少しずつ加え、その都度なじませる。
└ 砂糖を一気に入れると皮が締まり、甘みが入りにくくなる - 鍋を揺らしながら含め煮にする
ヘラで混ぜず、鍋をゆっくり前後にゆするのが基本。
鍋底だけ軽く返す程度ならOK。 - 好みの固さになる直前で火を止める
あんこは粗熱で固まるため“ゆるめ仕上げ”で止めるのが成功のコツ。 - 仕上げに塩で味をまとめる
ひとつまみの塩で甘さが引き立ち、味に奥行きが生まれる。
【仕上げ③】粉吹き芋のような小豆

粉吹き仕上げは、甘みと風味をぎゅっと凝縮させ、水分をしっかり飛ばしたお菓子のようなあんです。一味変わったあんに仕上がります。
■ 手順(粉吹き仕上げ)
- 共通工程で柔らかく煮た小豆の煮汁をほぼ捨てる
豆がしっかり露出する状態まで水分を切る。 - 砂糖を加えて弱火にかける(2〜3回に分けて)
ここまでは粒あんと同じ。ただし、この後は“味を含ませる”より“水分を飛ばす”意識で。 - 木べらで鍋底から返し、水分を飛ばしていく
鍋底から練り返すように混ぜ続ける。
└ 皮は破れてもいいので、この工程では“積極的に混ぜてOK” - 表面がぱさぱさになってきたら火を止める
焦がさないように弱火で、水分を飛ばしていく。 - 最後に塩で味を締める
好みで塩を振りかけると一層美味しく仕上がります。

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