彩り豊かな具材に、鶏の旨味と出汁がしみ込む「筑前煮(いり鶏)」。
ご飯にもお弁当にも合う、家庭の定番煮物です。
「味がぼやける」
「野菜が硬い」
「煮崩れる」
といった悩みも多い料理。
原因は、炒め方と煮る火加減にあります。
現役和食調理師の結論は――
👉「最初にしっかり炒めて旨味を閉じ込め、煮るときは静かに含ませる」。
炒めの香ばしさと、煮含めた出汁の深みが合わさってこそ、本物の筑前煮。
お祝い事にも普段の食卓にも使える、覚えておきたい一品です。
よくある失敗と原因
- 野菜が硬い → 炒め不足・下茹でなし
- 味が染みない → 強火すぎて出汁が煮詰まった
- 味が濃い → 煮詰めすぎ・分量間違い
- 焦げる → 混ぜ忘れ・火加減が強い
- 青野菜の色が悪い → 入れるタイミングが早い
材料
| 材料 | 分量 | 役割 |
|---|---|---|
| 鶏もも肉 | 200g | 主素材。旨味とコクを出す |
| 牛蒡 | 1/2本 | 香りと風味の柱 |
| 人参 | 1本 | 彩りと甘味を加える |
| 蒟蒻 | 1枚 | 食感とボリュームを添える |
| 莢隠元 | 適量 | 彩りを整える(仕上げ用) |
| 蓮根 | 適量 | 食感とボリュームを添える |
| 調味料 | 分量 | 割合 | 役割 |
|---|---|---|---|
| 出汁 | 600cc | 6 | ベースの旨味 |
| 濃口醤油 | 100cc | 1 | 香ばしさと照りを出す |
| 砂糖 | 50g | 0.5 | 甘味とコクを加える |
| みりん | 100cc | 1 | 照りと柔らかさを与える |
下処理

- 鶏もも肉:筋を取り、一口大に切る。
- 牛蒡:皮をこそげ、乱切り。酢水に落として灰汁を抜く。
- 人参:皮をむき、乱切りにする。
- 蒟蒻:軽く叩いてスプーンでちぎり、熱湯で下茹でして臭みを取る。
- 莢隠元:筋を取り、塩茹でして冷水に。彩り保持のため**吸地(薄味の出汁)**に浸けておく。
鶏肉の詳しい部位を知りたい方はコチラ▶鶏肉の部位図と特徴一覧
作り方

- 具材を炒める(中火)
鍋に少量の油を熱し、莢隠元以外の具材を入れて炒める。
🔸 合図:「牛蒡の香りが立ち、鶏の表面が白くなる」ころが目安。
炒めすぎると香りが焦げるので、軽く火を通す程度でよい。 - 煮る(強火→弱火)
出汁・醤油・砂糖・みりんを加えて強火に。沸騰したらアクを取る。
🔸 合図:「鍋の中が静かに波打つ」状態になったら弱火に落とす。
20分ほど静かに煮る(食材が踊らないように)。 - 仕上げ(色と香りを整える)
煮汁が1/3ほどになったら莢隠元を加える。
🔸 合図:「莢隠元の緑が鮮やかに戻ったら」火を止める。
そのまま余熱で味を含ませる。 - 盛り付け
煮汁を少しかけながら、具材を高く盛る。
(見た目の立体感と照りがポイント)
現役和食調理師のコメント
筑前煮は「炒め」と「煮」を切り替えるタイミングが命。
炒めで旨味を封じ込め、煮では音を立てずに静かに味を含ませます。
鍋の中で“ことこと”と小さく泡が立つ状態が理想。
この火加減を守るだけで、具材の味が自然とひとつにまとまります。
失敗しない3つのコツ

- 炒めすぎ注意:焦げると苦味が出る
- 煮る火加減は静かに:弱火でコトコト、音が立たない程度
- 莢隠元は最後に:色を活かして見た目を美しく
保存方法
- 冷蔵保存:密閉容器で3〜4日。温め直しは弱火で煮汁を足す。
- 冷凍保存:汁ごと小分けにして約2週間。解凍後は再加熱して味を整える。
- お弁当活用:煮汁をよく切り、鶏と野菜のバランスを整えると彩り◎。
相性の良い料理・献立
- 主菜:鯖の味噌煮・鮭の塩焼き
- 副菜:小松菜のおひたし・里芋の土佐煮
- 汁物:豆腐とわかめの味噌汁
旬と豆知識
筑前煮は九州・福岡県の郷土料理。
「いり鶏」「がめ煮」とも呼ばれ、炒めてから煮る調理法が特徴です。
根菜を中心に栄養バランスが良く、冬の行事料理としても親しまれています。
