見た目はちょっと地味でも、味わいは奥深い。それが「鰍(かじか)」という魚です。
清流や寒冷な海に生息し、地方によっては「ゴリ」「トサカジカ」とも呼ばれるこの魚。
実は冬場に身が締まり、鍋や刺身で格別の美味しさを発揮します。
「鰍ってどんな魚? 旬は? 食べ方は?」
という疑問に、和食調理師として25年以上の経験をもつ筆者が、やさしく丁寧に解説していきます。
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おいしい時期
かじか
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | ⑩ | ⑪ | ⑫ |
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現役和食調理師のヒント
鰍(かじか)の旬は、水温が下がる冬場です。寒さとともに身が引き締まり、脂がのった刺身や、出汁がよく出る鍋料理に最適な季節になります。
鰍とは ~特徴と味わい~

鰍(かじか)は、主に冷たい川や沿岸の岩礁域に生息する底棲魚で、分類上はカジカ科またはカジカ亜科に属します。見た目はずんぐりとした体に大きな頭、そして岩に擬態するような保護色を持ち、観賞魚としても知られる種です。
食用としては、北海道や東北地方、北陸などで古くから親しまれており、地域によっては「ゴリ」や「トサカジカ」とも呼ばれます。
「ゴリ」は地方によって色々な魚を指すことがあります。
*ヨシノボリ類、チチブ類、ハゼ類、カサゴ類、カジカ類などを総称して「ゴリ」と呼ぶ
味の特徴
- クセがなく上品な白身
- 身質はややしっかりして弾力がある
- 肝や白子も美味で、鍋のだしにも最適
その他の特徴
- 春に産卵し、夏に栄養を溜めるので旬は秋
- 「鍋壊し」=鰍の汁や鍋の事を指す
(鍋をかき回して、壊してしまうほどおいしい事が由来) - 淡水で生息するものと海水で生息するものがいる
- 淡水魚は養殖もされている
- 鮮度が落ちやすいので早めに処理し調理する

現役和食調理師のヒント
冬場のカジカは、煮ても焼いても、そして生でも「主役」になる魚です。
鰍の地方名
鰍(かじか)は日本各地で呼び名が異なり、地域の食文化や漁法に深く根付いています。以下に主な地方名をまとめました。
| 地域 | 呼び名 | 補足 |
|---|---|---|
| 北海道・東北 | カジカ トゲカジカ | 食用として人気。特に「カジカ鍋」で有名 |
| 北陸(富山・石川) | ゴリ | 主に河川の小型種(ウツセミカジカ)を指すことが多い |
| 中部~関西 | ゴリ ウケクチ | 琵琶湖周辺では稚魚を「ゴリ」と呼び、佃煮にされる |
| 九州(熊本など) | ヤマノカミ | 淡水に生息する種を指す場合あり |
「ゴリ」という名前は、河川に生息する小型のカジカ類全般に用いられ、特に佃煮や唐揚げなどの郷土料理にも登場します。ただし、一般的な「鰍(カジカ)」とは異なる種類が含まれることもあるため、地方によって指す魚が異なる点に注意が必要です。
鰍の目利き(鮮度の見分け方)

新鮮な鰍(かじか)の選び方
| チェック項目 | 見分け方のポイント |
|---|---|
| 目の状態 | 黒目が澄んでいて、透明感があるものを選ぶ。濁っているものは鮮度低下のサイン。 |
| 体のハリ | 全体にハリと弾力があり、ぬめりが自然なものが新鮮。柔らかくなっているものは避ける。 |
| エラの色 | 鮮やかな赤色をしているものが新鮮。茶色や黒ずんでいるものは避ける。 |
| 臭い | 川魚特有のにおいが強すぎないこと。生臭さが強いものは鮮度が落ちている。 |
| 内臓の状態 | 胴を開いた場合、肝がつややかで崩れていないものがよい(※活〆または神経締めが理想)。 |

現役和食調理師のヒント
鮮度が高い鰍は刺身にも向きますが、流通は少ないため「活魚」または「活〆」を選ぶのがおすすめ。店舗で見かけたら即買いです!
鰍と相性の良い食材
鰍の淡白で上品な味わいを引き立ててくれる、相性の良い食材を以下にまとめました。
| 食材 | 組み合わせの理由 |
|---|---|
| 大根 | 煮付けにすると旨味を吸い込んで絶品。カジカのだしとの相性が良い。 |
| 白ネギ | 鍋物や味噌汁に。甘みと香りが魚の風味を引き立てる。 |
| 味噌 | カジカ鍋の定番。肝や白子の濃厚さと味噌のコクがマッチ。 |
| 柚子皮 | 鍋や汁物に加えると、風味がさっぱりして上品な仕上がりに。 |
| 三つ葉 | 吸い物や刺身のあしらいに使えば、香りと彩りのアクセントに。 |

現役和食調理師のヒント
カジカ鍋には「味噌+大根+ネギ」が三種の神器。仕上げに柚子皮を少し散らすと、ふわっと香ってお店の味になりますよ。
鰍に合う調理法

鰍は淡白ながら旨味が強く、さまざまな調理法があります
| 調理法 | 理由 |
|---|---|
| 鍋物 | 旨味の強いだしが出る。肝や白子も楽しめる冬の定番。 |
| 刺身 | 活魚であればコリコリとした食感が楽しめる。鮮度が命。 |
| 煮付け | 上品な白身に甘辛い味がよく染みる。大根との相性も◎。 |
| 唐揚げ | 骨ごと揚げれば香ばしく、丸ごと食べられる。 |
| 味噌汁・吸い物 | 頭や中骨から濃厚な出汁がとれる。肝を加えるとさらに美味。 |
| 焼き物 | 身がやや硬くなりやすいため、他の調理法に比べると適性は低め。 |

現役和食調理師のヒント
まずは「鍋」と「味噌汁」を味わってみてください。皮・身・骨・肝すべてが主役級です。
鰍の栄養素(食品成分表)
かじか
可食部100g当たり
| 栄養素 | 水煮 | 生 | 単位 |
|---|---|---|---|
| 廃棄率 | 0 | 0 | % |
| エネルギー | 108 | 98 | ㎉ |
| 水分 | 73.5 | 76.4 | g |
| タンパク質 | 15.8 | 15.0 | g |
| 脂質 | 5.8 | 5.0 | g |
| 食物繊維(総量) | – | – | g |
| 炭水化物 | 0.2 | 0.2 | g |
| ナトリウム | 90 | 110 | ㎎ |
| カリウム | 210 | 260 | ㎎ |
| カルシウム | 630 | 520 | ㎎ |
| マグネシウム | 40 | 31 | ㎎ |
| リン | 440 | 400 | ㎎ |
| 鉄 | 2.6 | 2.8 | ㎎ |
| 亜鉛 | 2.3 | 1.7 | ㎎ |
| 銅 | 0.24 | 0.15 | ㎎ |
| マンガン | 0.37 | 0.31 | ㎎ |
| ヨウ素 | – | – | ㎍ |
| セレン | – | – | ㎍ |
| クロム | – | – | ㎍ |
| モリブデン | – | – | ㎍ |
| ビタミンA(レチノール) | 290 | 180 | ㎍ |
| ビタミンA(β-カロテン) | – | – | ㎍ |
| ビタミンD | 4.9 | 3.0 | ㎍ |
| ビタミンE(トコフェロールα) | 2.5 | 1.3 | ㎎ |
| ビタミンK | 1 | 1 | ㎍ |
| ビタミンB1 | 0.06 | 0.07 | ㎎ |
| ビタミンB2 | 0.3 | 0.38 | ㎎ |
| ナイアシン | 1.1 | 1.5 | ㎎ |
| ビタミンB6 | 0.07 | 0.08 | ㎎ |
| ビタミンB12 | 28.0 | 28.0 | ㎍ |
| 葉酸 | 21 | 15 | ㎍ |
| パントテン酸 | 0.42 | 0.54 | ㎎ |
| ビオチン | – | – | ㎍ |
| ビタミンC | – | 1 | ㎎ |
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鰍の英語・漢字表記

| 表記 | 内容 |
|---|---|
| 漢字 | 鰍 (杜父魚) |
| 英語 | Sculpin Cottus spp.(学名) |
| 発音記号 | [ˈskʌlpɪn](スカルピン) |
| カタカナ表記 | スカルピン |
英語で「Sculpin(スカルピン)」と呼ばれる魚は、カジカ科の総称で、淡水・海水両方に生息する複数の種を含みます。日本の鰍(Cottus polluxなど)もこのカテゴリに含まれます。
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