暑くなってくると特に注意が必要なのが「食中毒」です。
この記事では、夏に増える細菌性食中毒を中心に、症状・原因菌・潜伏期間・予防法までを網羅的に解説します。
✅ よくある症状は?
✅ どの菌が危ない?
✅ どうやって防げる?
調理師歴25年の視点から、現場で実際に注意しているポイントも紹介。
「家庭でできる予防法」とともに、すぐに役立つ情報をお届けします。
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代表的な食中毒(一覧)

| 名称 | 特徴 |
|---|---|
| 腸炎ビブリオ菌 | 夏の刺身に潜む 海の細菌 |
| サルモネラ菌 | 卵・鶏肉 の落とし穴 |
| カンピロバクター | 鶏肉の生焼けに注意 少量でも感染 |
| ボツリヌス菌 | 缶詰に眠る猛毒 致死率トップクラス |
| ウエルシュ菌 | 作り置き煮物の盲点 加熱しても残る |
| ブドウ球菌 | 手洗い不足が招く おにぎりのリスク |
| セレウス菌 | チャーハンで発症 加熱に強い菌 |
| 病原大腸菌 | 少量で発症 子どもは特に要注意 |
| ふぐ中毒 | 自己調理NGのふぐ |
| エルシニア | 冷蔵庫の中にも潜む! 低温菌 |
| リステリア | 輸入チーズに多い |
| ノロウイルス | 冬の嘔吐下痢の代表格 感染力◎ |
| 貝毒 | 加熱しても消えない 海の自然毒 |
| 植物性食中毒 | 野草・キノコ狩りに注意 |
| 科学性食中毒 | 人為的ミスで起こる 現代型の食中毒 |
食中毒とは?仕組みと原因
食中毒とは、細菌やウイルス、有害な化学物質、自然毒などが付着・混入した食品を摂取することで、体に不調をきたすことを指します。代表的な症状には、下痢・嘔吐・腹痛・発熱などがあります。
食中毒の主な原因は、「目に見えない微生物(細菌・ウイルス)」や「魚介類・きのこ・植物などに含まれる自然毒」、そして「食品中で発生する化学物質」などです。これらが食品中で増殖したり、毒素を作ったりすることで体に害を及ぼします。
また、気温や湿度が高くなる夏場(6月〜9月)は、細菌の増殖が活発になり、特に細菌性食中毒のリスクが高まります。反対に、冬場はノロウイルスなどのウイルス性食中毒に注意が必要です。
食中毒は、飲食店や家庭問わず、誰にでも起こりうる身近なリスクです。まずは原因や種類を知ることが、適切な予防につながります。
食中毒の種類(4分類)

食中毒は原因によって大きく4つの種類に分けられます。代表的なのは「細菌性」「ウイルス性」ですが、魚介類や植物による自然毒性、化学物質が原因となる科学性もあります。
細菌性食中毒(感染型/毒素型)
細菌性食中毒は、6〜9月の高温多湿な季節に特に多く見られます。以下の2つに分けられます。
- 感染型: 摂取した細菌が腸内で増殖して症状を引き起こす(例:腸炎ビブリオ、カンピロバクター)
- 毒素型: 食品中で細菌が作った毒素を摂取することで発症(例:ボツリヌス菌、セレウス菌)
自然毒食中毒(動物性/植物性)
自然界に存在する毒によって発生する食中毒です。フグや貝類などの動物由来、毒キノコや青梅などの植物由来に分けられます。加熱しても無毒化されないものもあり、知識不足による事故が多いのが特徴です。
ウイルス性食中毒(ノロウイルスなど)
冬場(11〜2月)に多く発生し、ノロウイルスが代表的です。わずかな量でも感染力が高く、手洗いや調理器具の衛生管理が重要です。人から人への二次感染にも注意が必要です。
科学性食中毒(ヒスタミン・添加物など)
誤って摂取した有害化学物質(ヒスタミン、漂白剤など)や、使用が禁止された添加物によるものです。食材の管理や加工工程でのミスが原因となることが多く、業務用食品で注意が必要です。
菌別の症状と原因食品【一覧表】

ここでは、代表的な食中毒菌・ウイルス・自然毒などをまとめて一覧表で紹介。
症状・潜伏期間・原因となる食品・加熱への耐性などがひと目でわかります。
夏場に多い細菌性食中毒(例:腸炎ビブリオ、サルモネラ菌)や、冬に増えるノロウイルス、自然由来のフグ毒・毒キノコなども掲載しています。
以下の表は調理現場・家庭問わず「この食材にどんな菌があるのか?」を素早く確認できる内容です。ぜひ保存版としてご活用ください。
| 名称 | 主な症状 | 主な原因食品 |
|---|---|---|
| 腸炎ビブリオ菌 | 腹痛 下痢 嘔吐 | 刺身 漬物 |
| サルモネラ菌 | 下痢 腹痛 発熱 | 生卵 鶏肉 |
| カンピロバクター | 発熱 腹痛 下痢 | 鶏肉 生水 |
| ボツリヌス菌 | 麻痺 呼吸困難 | 缶詰 はちみつ |
| ウエルシュ菌 | 腹痛 下痢 | 煮物 スープ |
| ブドウ球菌 | 嘔吐 下痢 | おにぎり 弁当 |
| セレウス菌 | 嘔吐型 下痢型 | 炒飯 煮物 |
| 病原大腸菌 | 腹痛 下痢 血便 | 生肉 野菜 |
| ふぐ中毒 | 麻痺 呼吸困難 | フグの内臓 |
| エルシニア | 腹痛 発熱 | 豚肉 飲料水 |
| リステリア | 発熱 筋肉痛 流産 | チーズ サラダ |
| ノロウイルス | 嘔吐 下痢 微熱 | カキ 二枚貝 |
| 貝毒 | 麻痺 しびれ | ムール貝 ホタテ |
| 植物性食中毒 | 嘔吐 神経症状 | 毒キノコ 青梅 |
| 科学性食中毒 | 腹痛 しびれ | 漂白剤 ヒスタミン |
特に注意すべき食中毒菌とは?

食中毒の原因となる菌やウイルスは数多く存在しますが、中でも特に注意が必要なものがあります。
ここでは、重症化しやすかったり、加熱では防げなかったりする厄介な菌を厳選して紹介します。
注意したい理由とは?
- 重症化しやすい(子ども・高齢者・妊婦は特に注意)
- 感染力が非常に強い(少量でも発症)
- 加熱に強い菌や毒素がある
- 食卓でよく使われる食材に含まれることが多い
特に注意が必要な菌・ウイルス一覧
| 菌・ウイルス名 | 注意すべき理由 |
|---|---|
| カンピロバクター | 少量でも感染。鶏肉や焼き鳥などで多発。 |
| サルモネラ菌 | 卵・生肉などで注意。子どもは重症化しやすい。 |
| 腸管出血性大腸菌(O157など) | ベロ毒素を持ち、死に至ることも。二次感染にも注意。 |
| ノロウイルス | 冬場に流行。非常に感染力が強く、アルコールでは死滅しない。 |
| ボツリヌス菌 | 毒素型で最も危険な菌。缶詰や真空パックなどで発生しやすい。 |
現場からのアドバイス(調理師歴30年)
- 肉類・魚介類の加熱不足が最大のリスク
- 「見た目・臭い」では安全かどうかは判断できない
- 食中毒の発症は食べたその日とは限らない(潜伏期間あり)
▶ 次項では、家庭でできる「予防対策の3原則」を紹介します。
食材の扱い方・冷蔵保存・手洗いのポイントまで、実践的にまとめています。
家庭でできる予防対策【3原則】

食中毒を防ぐために、家庭で実践できる基本は
「つけない・ふやさない・やっつける」の3原則。
これは調理現場でも必ず守られている、大切な基本ルールです。
つけない(菌をつけない)
菌を持ち込まない、広げないことが第一歩。
- 調理前・トイレ後は必ず手洗い(指の間・爪の間まで)
- 肉や魚を切った包丁・まな板はしっかり洗浄・消毒
- 生の食材とサラダなどの非加熱食材を分けて扱う
- 食材の保存は密閉容器に入れて冷蔵保存
- エコバッグ・買い物カゴも定期的に洗浄
ふやさない(菌を増やさない)
温度管理がポイント。常温放置は危険です。
- 調理後の食品はすぐ冷蔵庫へ(目安2時間以内)
- 食品は10℃以下、できれば5℃以下で保存
- お弁当・作り置きはしっかり冷ましてから保存
- 冷蔵庫は詰め込みすぎず、適切な温度管理を
やっつける(菌を殺す)
加熱が最強の対策。中心温度を意識しましょう。
- 加熱は中心温度75℃以上で1分以上が基本
- 冷凍食品も表示通りにしっかり加熱
- お湯で洗う・漂白剤などの殺菌処理も有効
- 台ふきんやスポンジは定期的に煮沸・交換

現役和食調理師のヒント
調理師として意識しているのは、「ちょっと面倒でも習慣にすること」
とくに暑くなる季節は、朝のお弁当づくりや夕食の作り置きなど、油断が重なるとリスクが一気に高まります。冷却グッズや除菌スプレーなどの衛生用品も、家庭に一つあると安心です。
参考HP→厚生労働省/食中毒
参考リンク
