川海老(かわえび)は、夏から秋にかけて旬を迎える日本の里の味。
小ぶりながら旨味が凝縮しており、香ばしく揚げればおつまみやおかずに、佃煮にすればご飯の名脇役にもなる万能食材です。
この記事では、川海老の旬・特徴・栄養・英語表記・おいしい食べ方を、現役の和食調理師(経験25年以上)がわかりやすく解説します。
※本記事には広告が表示されます。
川海老の旬
スジエビ
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | ⑩ | ⑪ | ⑫ |
|---|
てながえび
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | ⑩ | ⑪ | ⑫ |
|---|
川海老とは ~特徴と種類の解説~

川海老(かわえび)は川や湖、用水路などの淡水に生息する小型のエビの総称です。
実は「川海老」という名前は特定の一種類を指すものではなく、主に「スジエビ」と「テナガエビ」をまとめた呼び名として使われています。
主な種類
スジエビ(Palaemon paucidens)
体に黒い縞模様があり、透明感のある小さなエビ。全国の川や湖で見られ、唐揚げや佃煮に利用される代表的な川海老です。香ばしさと歯ごたえが特徴で、旬の時期には市場にも多く出回ります。
テナガエビ(Macrobrachium nipponense)
名前のとおり前脚(はさみ脚)が長く発達した、やや大型の淡水エビ。塩焼き・味噌汁・唐揚げなど幅広い料理に使われ、旨味が濃く食感もしっかりしています。見た目に迫力があり、釣りの対象としても人気があります。
このように「川海老」という言葉はスジエビやテナガエビを中心とした淡水性エビ類の総称で、
地域によってはヌマエビやドロエビなど他の小型種を含める場合もあります。
分類上、スジエビは Palaemon 属、テナガエビは Macrobrachium 属で、いずれもテナガエビ科(Palaemonidae)に属する近縁種です。
市場や料理の現場では「小さくて香ばしい=スジエビ」「大きくて旨味が強い=テナガエビ」
といったように、用途や食感に応じて使い分けられています。
海老のサイズの見方→海老のサイズは世界基準(Shrimp size)

現役和食調理師のヒント
小ぶりで殻ごと食べられるスジエビは、唐揚げや佃煮にぴったり。
一方、身の詰まったテナガエビは、塩焼きや味噌汁で素材の旨味がしっかり感じられます。
川海老の地方名
地域によって、「川海老」にはさまざまな呼び名があります。
特にスジエビやテナガエビを含む淡水の小型エビを指すことが多く、漁業や郷土料理との関わりも深い名称です。
| 呼び名 | 対象・意味 |
|---|---|
| 川エビ | 一般呼称。淡水エビ全体を指す |
| モエビ(藻エビ) | スジエビの別称の一つ |
| ダンマ ダクマ ザザエビ タナガー | テナガエビの地域名例 |
| ヤマトテナガエビ (ヒラテテナガエビ) | テナガエビ近縁種・地方呼称 |
| ミナミテナガエビ | 南日本でのテナガエビ呼び名 |
| モチエビ | スジエビの別称市場名例 |
川海老の目利き(鮮度の見分け方)
川海老(主にスジエビ・テナガエビなど)を購入・調理する際、以下の点をチェックすると鮮度の良し悪しが判断しやすくなります。
| チェック項目 | 良い状態 |
|---|---|
| 透明感 透け感 | 体全体がクリアで、中の臓器などが透けて見えるようなもの |
| 触覚 ヒゲ 脚の健全さ | ヒゲ・脚が十分残っており、折れ・欠損がない |
| 目の状態 | 黒目がくっきりし、濁りがないこと |
| 匂い | 特有の淡い「川の水・清流の香り」に近い無臭に近い状態 |
| ぬめり・ヌメリ | 表面に過剰なぬめりがない |

現役和食調理師のヒント
調理前に軽く流水で泳がせながら泥や不純物を落とす「泥抜き」の工程を加えると、香りがシャープになります。透明感を保ったまま扱うのが大切です。
川海老の保存方法(冷蔵・冷凍)
川海老は非常に傷みやすい食材です。
購入後すぐに使わない場合は、状態に合わせて冷蔵または冷凍での保存が必要です。
冷蔵保存
下処理と保存の流れ
- 泥抜きをする
ボウルに真水を張り、川海老を静かに泳がせて泥や不純物を落とします。 - 水気をよく拭き取る
キッチンペーパーなどで表面の水分をしっかり取ることで、劣化や臭みを防ぎます。 - 包んでチルド室へ
新聞紙やキッチンペーパーで包み、通気性のあるポリ袋に入れてチルドルーム(約0〜2℃)で保存します。 - 調理済みなら冷蔵で保存
佃煮や甘辛煮にしておけば、冷蔵で3〜4日ほど保存可能です。
📍ポイント
氷水に5〜10分ほど浸けてからチルド保存すると、動きが落ち着いて身が締まり、風味が長持ちします。
冷凍保存
長期保存したい場合は、下処理後に冷凍がおすすめです。
用途に応じて「生のまま」「茹でてから」「調理済み」で分けると使いやすくなります。
下処理と冷凍の手順
- 泥抜き後、頭や背ワタを取り除く(必要に応じて)
- キッチンペーパーで水気をしっかり拭き取る
- 一回分ずつ小分けにして、ラップで包む
- 密閉袋に平らに並べて入れ、できるだけ空気を抜く
- 冷凍庫に入れ、−18℃以下で保存
冷凍方法の種類と特徴
| 保存方法 | 注意点 |
|---|---|
| 生のまま冷凍 | 冷凍焼けを防ぐため、2〜3週間を目安に使用 |
| 茹でてから冷凍 | 茹で過ぎると食感が落ちるので注意 |
| 調理済みで冷凍(佃煮・素揚げなど) | 味や香りは少し落ちるので早めに使用 |

現役和食調理師のヒント
川海老は冷凍前の「水分除去」が何より大切です。脚や関節部分に水分が残ると、冷凍焼けや臭みの原因になります。
川海老と相性の良い食材

川海老は香ばしくクセが少ないため、香りや甘辛さを引き立ててくれる食材・調味料との相性が抜群です。
| 食材・調味料 | 組み合わせの理由・用途例 |
|---|---|
| きゅうり | 煮物に入れるとさっぱり感が出る。 |
| 大豆(豆) | 甘辛く煮て「えび豆」に。豆のほくほく感と海老の旨味が好相性 |
| 青じそ | 揚げ物や素揚げの添え物に。香りをプラスして後味をさっぱりと |
| 山椒 | 甘辛味の佃煮・煮物に、ピリッとしたアクセントを加える |
| レモン・酢 | 揚げ物の油っこさを中和。南蛮漬けなど酸味主体の料理にも応用可 |
| 白ごま | 煮物・炒め物に加えると香ばしさが増す。仕上げのアクセントにも |
| 大豆 インゲン オクラ パプリカ | 食感や彩りを加える。煮物・旨煮・サラダとの組み合わせも可 |
| にんにく | ガーリック風味を効かせた味付けで洋風アレンジが可能 |

現役和食調理師のヒント
唐揚げにした川海老を使う場合、レモンや青じそを添えるだけで料亭風の一品になります。佃煮にするなら山椒や白ごまを加えることで、味のふくらみや香りの深さが変わってきます。
川海老に合う調理法

| 調理法 | 理由 |
|---|---|
| 唐揚げ | 殻ごと揚げると香ばしさとパリパリ感が楽しめる。定番の一品。 |
| 佃煮 | 甘辛く煮詰めることで旨味が凝縮され、ご飯やお弁当にぴったり。 |
| 素揚げ | 素材そのものの味を活かせる。塩をふるだけでも美味。 |
| 天ぷら | サクサク衣とエビの香ばしさが合う。下処理次第で食感◎。 |
| 酢の物 | 酸味が生臭さを和らげるが、火を通した川海老を使う必要あり。 |
| 煮物 | 小さすぎて、味が抜けやすい。向いていない調理法。 |

現役和食調理師のヒント
香ばしさを活かすなら断然「唐揚げ」。佃煮は作り置きにも向いており、白ごはんとの相性も抜群です。
川海老の栄養素(食品成分表)
可食部100g当たり
※スジエビ(川海老)は、日本食品標準成分表には収載されておらず、文献や公的分析にも栄養成分の明示がありません。
霞ヶ浦北浦産のテナガエビについては、EPA・DHA・カルシウムが豊富であることが確認されていますので参考文献とさせていただきました。
→参考文献(茨城県公式サイト)
| 栄養素 | 値 | 単位 |
|---|---|---|
| 廃棄率 | 0 | % |
| エネルギー | 97 | ㎉ |
| 水分 | 75.2 | g |
| タンパク質 | 16.5 | g |
| 脂質 | 2.6 | g |
| 食物繊維(総量) | – | g |
| 炭水化物 | 0.8 | g |
| ナトリウム | – | ㎎ |
| カリウム | – | ㎎ |
| カルシウム | 1580 | ㎎ |
| マグネシウム | – | ㎎ |
| リン | – | ㎎ |
| 鉄 | – | ㎎ |
| 亜鉛 | – | ㎎ |
| 銅 | – | ㎎ |
| マンガン | – | ㎎ |
| ヨウ素 | – | ㎍ |
| セレン | – | ㎍ |
| クロム | – | ㎍ |
| モリブデン | – | ㎍ |
| ビタミンA(レチノール) | – | ㎍ |
| ビタミンA(β-カロテン) | – | ㎍ |
| ビタミンD | – | ㎍ |
| ビタミンE(トコフェロールα) | – | ㎎ |
| ビタミンK | – | ㎍ |
| ビタミンB1 | – | ㎎ |
| ビタミンB2 | – | ㎎ |
| ナイアシン | – | ㎎ |
| ビタミンB6 | – | ㎎ |
| ビタミンB12 | — | ㎍ |
| 葉酸 | – | ㎍ |
| パントテン酸 | – | ㎎ |
| ビオチン | – | ㎍ |
| ビタミンC | – | ㎎ |
▶ 栄養の全体像を知りたい方はこちら
五大栄養素・ビタミン・ミネラルをまとめたページへ
→ たんぱく質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラルなど、健康に必要な栄養素35種類を、分類ごとにわかりやすく解説しています。
英語・漢字表記

- 漢字表記:川海老(かわえび)
- 英語表記:Freshwater shrimp
- 発音記号:[ˈfrɛʃˌwɔːtər ʃrɪmp]
- カタカナ読み:フレッシュウォーター・シュリンプ
あわせて読みたい
