煮物は家庭料理の定番ですが、「味がしみない」「煮崩れする」「同じ味になってしまう…」と悩むことが多い料理でもあります。実は、煮物は下ごしらえ・味付けの黄金比・火加減という基本さえ押さえれば、誰でも安定しておいしく仕上げられる料理です。
このページでは、煮物の基本や失敗しないコツ、味付けの考え方を現役調理師の視点でわかりやすく整理しました。また、食材や料理名で探せる煮物レシピ一覧も掲載しているので、その日の食材や献立に合わせて活用できます。
煮物の基礎をしっかり理解したい方
初心者向けのわかりやすい指標が知りたい方
いろんな煮物レシピを探したい方
に向けた【よくわかるレシピ】シリーズの煮物ガイドです。この1ページさえ見れば、煮物で迷わなくなります。
まずは煮物という料理の基本から見ていきましょう。
煮物とは?~基本の考え方~

煮物とはだしや調味料で食材に火を通し、味を中まで含ませて仕上げる料理のことです。対流する煮汁の中でゆっくりと加熱するため、素材の食感と旨味を活かしながら、味を調和させやすい技法です。特に和食の煮物は、「だしの旨味」「調味料の重ね方」「火加減」の3つが味を決める鍵となります。
煮物は大きく次の流れで完成していきます。
| 工程 | 役割 |
|---|---|
| 下ごしらえ | 臭みを取り、味を入りやすくする準備 |
| 煮る(火入れ) | 食材の状態に合わせて火加減を調整 |
| 味を含ませる | 煮汁をなじませ、余熱や時間で仕上げる |
つまり、煮物とは・・・
→ 下ごしらえで土台を整える
→ 火加減で形と食感を守る
→ 時間で味を仕上げる

現役和食調理師のヒント
煮物は“時間が味をつくる料理”
煮込む時間・火加減・味を含ませる時間の3つを意識するだけで、仕上がりは劇的に変わります。
煮物をおいしくする味付けの黄金比

煮物の味付けは複雑に思われがちですが、味の柱は「塩味・甘味・旨味・香り」の4要素です。これをバランスよく整えることで味にまとまりが生まれます。
和食の煮物でよく使う調味料の黄金比は次のとおりです。
| 調味料 | 目安の割合 |
|---|---|
| だし | 10 |
| 醤油 | 1 |
| みりん | 1 |
| 砂糖 | 0.5〜1 |
この 「10:1:1:0.5〜1」 を基準にすると、どの煮物でも味がブレにくく、食材の持ち味を邪魔せず仕上げることができます。まずはこの比率からはじめて、甘さや塩味を足したい場合は、醤油と砂糖を少量ずつ足すのが基本です。
煮物で味が決まる“順番”
煮物は 味付けの順序でも仕上がりが変わります。
| 段階 | 調味料 |
|---|---|
| ① だし | 味の土台(旨味を含ませる) |
| ② 砂糖・みりん | 甘味は浸透が遅いため先に含ませる |
| ③ 醤油 | 香り成分が飛びやすいので後半で入れる |
| ④ 仕上げの塩 or 醤油少量 | 最後に味を調える |
この流れを守るだけで、味がぼやけたり、醤油だけ濃く感じる失敗が激減します。
味を調整する時の考え方(プロの応用)
| 仕上げ方向 | 調整ポイント |
|---|---|
| 味を締めたい | 醤油 or 塩をほんの少量 |
| 甘みを足したい | 砂糖 or みりんを少量 |
| まろやかにしたい | みりん少し+火を弱める |
| コクを足したい | 酒 or だしを少量追加して煮含める |
煮物は味を“足す”より“整える”料理
大きく足すと味が濁るため、少量ずつが鉄則

現役和食調理師のヒント
煮物の味は「煮る時間」より 火を止めてからの“なじむ時間” で決まります。沸騰の勢いを抑え、弱火〜中火でゆっくり味を入れるのが失敗しないコツです。
失敗しない煮物~3つのコツ~

煮物は 下ごしらえ・火加減・味を含ませる時間 の3つを押さえることで驚くほど仕上がりが安定します。特に水分量が味を左右する酢の物とは違い、煮物は “余分を取り、旨味を含ませる” ことが成功へのポイントです。
① 下ごしらえで“味の入り口”を作る
煮物は仕込みの段階で仕上がりの8割が決まります。下ごしらえは雑味を取り“旨味だけを残す作業”これを丁寧に行うだけで、煮汁のキレと上品さが格段に変わります。
| 下ごしらえのポイント | 理由 |
|---|---|
| 根菜は下茹でしてエグ味を取る | 味が澄み、煮汁の香りを邪魔しない |
| 油揚げ・こんにゃくは下処理 | 油臭さや雑味を取り、味が入りやすくなる |
| 魚介類は霜降り(湯通し) | 臭みを取り、煮崩れを防ぐ |
| 肉類は余分な脂と血抜き | 煮汁が濁らず、上品な味わいになる |
② 火加減は“最初は強め→あとは弱火”が基本
煮物は 火の入れ方で食感と味のなじみ方が決まる料理です。弱火=煮物の“味を育てる時間。勢いよく沸かさないことが、プロの仕上がりに近づくコツです。
| 火加減 | 状態と意味 |
|---|---|
| 沸騰までは中火〜強火 | 素材の温度を一気に上げ、煮汁を含ませる準備 |
| 沸いたら弱火でコトコト | 対流が穏やかになり、味が均一に入る |
| 強火を続けるのはNG | 煮崩れ・味の濁り・香り飛びの原因 |
③ 味を含ませるのは“火を止めてから”
煮物の味は 火を止めてから冷める過程で最も浸透します。煮物は“鍋の余韻で仕上げる料理”時間を味方にすることで、驚くほど味が変わります。
| シーン | すべきこと |
|---|---|
| 調味後の煮込み | 7〜9割の味にとどめる |
| 火を止めて放置(余熱) | 味を中までじんわり含ませる |
| 再加熱は弱火で短く | 香りと食感を守るため |

現役和食調理師のヒント
煮物に必要なのは「手間」ではなく「段取り」
下ごしらえで雑味を取り、火加減で煮崩れを防ぎ、余熱で味を含ませる。
煮物レシピ一覧

煮物は季節の野菜や魚介、肉など、組み合わせによって味わいの幅が大きく広がる料理です。以下の表では、煮物レシピを食材別・料理名別に探しやすく一覧でまとめました。 家にある食材から探すのはもちろん、献立のテーマに合わせてレシピを選ぶこともできます。
| 食材 | 料理名 |
|---|---|
| 小豆 | あんこ |
| 青菜 油揚げ | 青菜と油揚げの煮物 |
| 独活 | 独活の白煮 |
| 雪花菜 | おからの炒り煮 |
| 南瓜 | 南瓜の煮物 |
| がんもどき 干し椎茸 | がんもどきと椎茸の含め煮 |
| 牛蒡 | 金平牛蒡 |
| 大豆 牛蒡 蒟蒻 | 五目豆 |
| 栄螺 | 栄螺の旨煮 |
| 薩摩芋 | 薩摩芋の檸檬煮 |
| 里芋 烏賊 | 里芋と烏賊の煮物 |
| 里芋 | 里芋の土佐煮 |
| 大根 | 大根と厚揚げの煮物 |
| 筍 | 筍の土佐煮 |
| 鶏肉 牛蒡 | 筑前煮 |
| 冬瓜 | 冬瓜と鶏肉の煮物 |
| 冬瓜 | 冬瓜のそぼろ餡 |
| 冬瓜 | 冬瓜の煮物 |
| 冬瓜 | 冬瓜の翡翠煮 |
| 長芋 | 長芋の含め煮 |
| 茄子 | 茄子の田舎煮 |
| 牛肉 じゃがいも | 肉じゃが |
| 蕗 | 蕗の甘辛煮 |
| プチトマト | プチトマトのワイン漬け |
| 大根 | 風呂吹き大根 |
| 根深葱 | 焼きネギの煮びたし |
| 蓮根 | 蓮根の土佐煮 |
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