磯釣りの高級魚として知られる「石鯛(いしだい)」は、白身ながらもしっかりとした旨みと歯ごたえを楽しめる人気の魚です。美しい縞模様と、引き締まった身質から“磯の王者”とも呼ばれています。
時期によって脂のりや味わいが変化し、刺身・塩焼き・煮付けなど、どんな調理法でも上品な旨味を堪能できます。
この記事では、現役和食調理師の視点から、
石鯛の旬・味の特徴・選び方(目利き)・英語表記「Japanese Parrot Fish」まで、料理に役立つ実践的な知識をわかりやすく解説します。
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石鯛の旬
いしだい
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | ⑩ | ⑪ | ⑫ |
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季節ごとの旬の食材をもっと詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。▶ 旬の野菜・魚介【年間カレンダー】

現役和食調理師のヒント
主な産地は長崎県・熊本県・鹿児島県・三重県・和歌山県などの西日本沿岸。
特に九州地方では天然物が多く、伊豆諸島などでも釣りの対象魚として人気です。
石鯛とは ~特徴と味わい~

石鯛(いしだい)は、スズキ目イシダイ科イシダイ属に分類される海水魚で、学名は Oplegnathus fasciatus。
体全体に黒い縞模様(ストライプ)が入ることから、英語では「Japanese Parrot Fish(ジャパニーズ・パロットフィッシュ)」とも呼ばれます。
名前の由来は、硬い石をもかみ砕くほどの強い歯を持つことから。
口の中の歯はまるで人間のように並び、貝やウニなどの殻を噛み割って食べる力を持っています。
体長は一般に40〜60cm、なかには1mを超える大型個体も。
成魚になると縞模様が薄れ、灰銀色の体色に変化します(これが「クチグロ」と呼ばれる老成魚)。この体色の変化も石鯛の特徴のひとつです。
味わいは淡白ながらもコクのある上品な白身で、真鯛よりもしっかりとした旨みと歯ごたえを持ちます。刺身・塩焼き・煮付け・酒蒸しなど、どんな料理にも向き、特に皮目に豊富な旨味があります。

現役和食調理師のヒント
石鯛は皮目にも旨味があるため、「湯引き」や「炙り刺身」も絶品。大ぶりに切った刺身は歯ごたえと旨味のバランスが良く、特におすすめです。
石鯛の地方名
石鯛は日本各地の磯や岩場に生息し、地方によってさまざまな呼び名があります。特に関西や九州での呼称が多く見られます。
| 地域 | 呼び名 | 補足 |
|---|---|---|
| 各地(若魚) | シマダイ サンバソウ | 幼魚・若魚期の呼称。 |
| 各地(老成オス) | クチグロ ギンワサギンカゲ | 口周りが黒くなる個体 |
| 関西 | シマダイ(若魚) クチグロ(老成) | 関西圏でも上記呼称が一般的。 |
| 高知 | コウロウ | 県内の別名として記載あり。 |
| 長崎 | ヒシャ | 九州北西部の呼称。 |
| 熊本 | スサ | 九州中部の呼称。 |
| 鹿児島 | ヒサ ヒサイオ クサネイオ | 甑島・種子島の呼称も記載。 |
| 広島 | クロクチ | 口黒由来の地方名。 |
| 大阪 | ウミバス | 地方名の一例。 |

現役和食調理師のヒント
市場では「クチグロ」という名前で並ぶこともありますが、これは大型の石鯛のこと。脂のりがよく、刺身・焼き物ともに一級品です。
石鯛の目利き(鮮度の見分け方)
石鯛は身がしっかりしているため、状態を見極めることで刺身にも焼き物にも最適な一尾を選べます。
| 項目 | 見分け方 |
|---|---|
| 目 | 黒目が澄んでいて、透明感があるものが良い。白く濁っていたり、くぼんでいる目は鮮度の低下を疑う |
| 体色・艶 | 体表に艶があり、全体に張りが感じられるもの。表面のぬめりが透明感を保っているものが望ましい |
| 腹・胴の張り | おなかを手で軽く押してみて、張りが感じられるもの |
| エラ | エラを開けて内部を確認できれば、鮮紅色で健康的な赤色をしているものがよい |
| 表面の硬さ | 表皮を指で押してみて、適度な弾力と硬さがあるもの |
| 活け物・活け締め | 生きているか、活け締めされたものを選ぶと鮮度保持に優れる |

現役和食調理師のヒント
「目・エラ・艶」の3点セットをまず確認するとよく、さらに腹部の張りを見れば選び抜きの一尾になります。活け締め個体は鮮度が落ちにくく、刺身でも安心して使いやすいです。
石鯛と相性の良い食材

クセのない上質な白身に旨味がある石鯛は、香味野菜やコクのある調味料と相性抜群です。
| 食材・調味料 | 相性が良い理由 |
|---|---|
| ネギ | 白身魚+ネギは定番の組み合わせ。「長ネギの風味と白身魚は相性が良い」 |
| 昆布 | こぶ締め。 石鯛のしゃぶしゃぶに昆布を入れる |
| 味噌 | 魚のアラ・骨を使った味噌汁。 |
| 酒・みりん・醤油 | 日本料理の基本調味。石鯛を煮付け・照り焼きなど |
| 生姜 | 魚料理での定番香味料。臭みを抑えつつ風味を補う。 |
| レモン すだち 柚子 | 酸味で淡白な魚を引き締め、後味を爽やかにする。 |

現役和食調理師のヒント
石鯛は昆布との相性が抜群。刺身を軽く昆布で締めると、旨味とねっとり感が増して格別の味わいになります。
石鯛によく合う調理法

石鯛は、白身ながらも旨みと弾力がある魚です。
そのため「刺身・焼く・煮る・蒸す・揚げる」など、幅広い調理法で楽しめます。
下の表では、主な調理法とそれぞれに合う理由をまとめています。
| 調理法 | 特徴 |
|---|---|
| 刺身 (皮霜造り・湯引き) | 皮目に強い旨味があるため、湯引きや皮霜造りに最適。身は弾力があり、噛むほどに甘みが広がる |
| 塩焼き | 皮が厚く弾力があるため、焼くと香ばしく、磯の風味が引き立つ。塩のみで十分おいしい |
| 煮付け | 身が崩れにくく、煮てもふっくら仕上がる。脂のりがよい秋の石鯛に最適 |
| 酒蒸し 蒸し物 | 蒸すことで身がしっとりし、旨みが凝縮。昆布・酒・生姜などと好相性 |
| しゃぶしゃぶ | 脂のりの良い時期におすすめ。表面だけ火を通すことで甘みが際立つ |
| フライ 天ぷら | ふっくらした白身で油との相性が良く、外はサクサク・中はしっとりに仕上がる |

現役和食調理師のヒント
塩焼きでは「中火でじっくり」、刺身では「皮霜造り」で香ばしさを引き出すと、磯の香りと旨みを最大限に楽しめます。
石鯛の栄養素(食品成分表)
いしだい(生)
可食部100g当たり
| 栄養素 | 生 | 単位 |
|---|---|---|
| 廃棄率 | 55 | % |
| エネルギー | 138 | ㎉ |
| 水分 | 71.6 | g |
| タンパク質 | 19.5 | g |
| 脂質 | 7.8 | g |
| 食物繊維(総量) | – | g |
| 炭水化物 | – | g |
| ナトリウム | 54 | ㎎ |
| カリウム | 390 | ㎎ |
| カルシウム | 20 | ㎎ |
| マグネシウム | 26 | ㎎ |
| リン | 240 | ㎎ |
| 鉄 | 0.3 | ㎎ |
| 亜鉛 | 0.6 | ㎎ |
| 銅 | 0.03 | ㎎ |
| マンガン | 0.01 | ㎎ |
| ヨウ素 | – | ㎍ |
| セレン | – | ㎍ |
| クロム | – | ㎍ |
| モリブデン | – | ㎍ |
| ビタミンA(レチノール) | 39 | ㎍ |
| ビタミンA(β-カロテン) | – | ㎍ |
| ビタミンD | 3.0 | ㎍ |
| ビタミンE(トコフェロールα) | 2.1 | ㎎ |
| ビタミンK | – | ㎍ |
| ビタミンB1 | 0.15 | ㎎ |
| ビタミンB2 | 0.15 | ㎎ |
| ナイアシン | 4.9 | ㎎ |
| ビタミンB6 | 0.34 | ㎎ |
| ビタミンB12 | 1.3 | ㎍ |
| 葉酸 | 2 | ㎍ |
| パントテン酸 | 0.31 | ㎎ |
| ビオチン | – | ㎍ |
| ビタミンC | – | ㎎ |
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現役和食調理師のヒント
石鯛は高タンパクで低糖質。DHAやEPAも含まれており、栄養面でも優秀です。焼き物や蒸し物で調理すれば、脂のうま味を保ちながら栄養も逃しにくいです。
石鯛の英語・漢字表記

| 項目 | 表記 |
|---|---|
| 漢字 | 石鯛(いしだい) |
| 英語名 | Barred Knifejaw |
| 別称 | Japanese Parrot Fish |
| 発音記号 | [bɑːrd ˈnaɪfˌdʒɔː](バード ナイフジョー) |
| カタカナ表記 | バード・ナイフジョウ ジャパニーズ・パロット・フィッシュ |
英語表記についてもっと詳しく知りたい方は、こちらのページで 魚介類の漢字・英語表記一覧 をまとめています。
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