海のミルクとも称される「牡蠣(かき)」は、濃厚な旨味と栄養価の高さから、和洋中問わず多くの料理で愛される魚介類です。一方で、岩牡蠣との違いや、可食部・食中毒の注意点など、意外と知られていない情報も多いのが実情です。
✅ このページでは…
- 真牡蠣と岩牡蠣の違い
- 可食部や栄養の特徴
- 牡蠣に合う食材や調理法
- 安全な食べ方のポイント など
和食調理師としての経験をもとに、わかりやすく解説していきます。
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牡蠣(かき)の旬 ~おいしい時期~
真牡蠣
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | ⑩ | ⑪ | ⑫ |
|---|
岩牡蠣
| ① | ② | ③ | ④ | ⑤ | ⑥ | ⑦ | ⑧ | ⑨ | ⑩ | ⑪ | ⑫ |
|---|
牡蠣とは ~特徴と種類の解説~

牡蠣(かき)は日本の食卓で親しまれている貝類の一つで、海水中のプランクトンを濾し取って育つ二枚貝です。豊かな旨味とクリーミーな食感が特徴で、「海のミルク」とも呼ばれるほど栄養豊富です。
🔸 牡蠣の特徴
- 味わい:濃厚でクリーミー。火を通すと風味が深まり、鍋や焼き物にも合う。
- 食感:生はとろけるようなやわらかさ、加熱するとプリッとした弾力。
- 可食部:外套膜・内臓・筋肉などが含まれる全体が食べられます(※消化器官を含むため、生食には鮮度・衛生管理が重要)
🔸 牡蠣の種類(代表的な2種)
| 種類 | 特徴 | 主な流通時期 |
|---|---|---|
| 真牡蠣 (まがき) | 小ぶりで濃厚。養殖が盛ん。全国的に広く流通。 | 秋~冬 |
| 岩牡蠣 (いわがき) | 天然物が多く大きめでミルキー。高級食材として扱われる | 夏 |

現役和食調理師のヒント
真牡蠣は「鍋・グラタン・牡蠣フライ」に、岩牡蠣は「生食」や「レモンを絞ってシンプルに」が向いています。調理法や時期に応じて使い分けると、より美味しく楽しめます。
地方名・別名(かきの呼び方)
牡蠣は全国で食べられているため、地域や種類によって呼び方が異なることがあります。また、見た目や時期によっても名前が変わることがあります。
| 名称 | 用いられる地域・意味 |
|---|---|
| 牡蠣 (かき) | 一般的な名称。真牡蠣・岩牡蠣の総称。 |
| 岩牡蠣 (いわがき) | 夏に旬を迎える大型種。天然ものが多く、「夏牡蠣」とも呼ばれる。 |
| 真牡蠣 (まがき) | 養殖が多く、秋〜冬に旬を迎える種。 |
| ナガガキ | 関東の一部地域で岩牡蠣を指すことがある。 |
| ヒラガキ | 東北・北陸などで、殻が平たい牡蠣(真牡蠣)を指す。 |

現役和食調理師のヒント
市場で「ナガガキ」「ヒラガキ」などと表示されていることがありますが、いずれも牡蠣の一種です。調理前に旬の時期と種類を確認しておくと、素材の良さを引き出せます。
目利き
新鮮な牡蠣を選ぶには、見た目・におい・重みをチェックすることが大切です。
| 項目 | 見分け方のポイント |
|---|---|
| 殻付き牡蠣 | 殻がしっかり閉じていて重みがあるもの。隙間があると死んでいる可能性あり。 |
| 剥き身(生食用) | 身にハリがあり、透明感があるもの。ドリップ(汁)が少ないものが理想。 |
| 剥き身(加熱用) | 若干の濁りは許容されるが、異臭や変色があれば避ける。火を通す前提でも新鮮さは重要。 |
| におい | 生臭さではなく「海の香り」がするものを。酸っぱいにおいがすれば劣化のサイン。 |
| 保存状態(パック) | 購入時に消費期限や保存温度を必ずチェック。冷蔵で管理されているものを選ぶこと。 |

現役和食調理師のヒント
生食用と加熱用は「殺菌処理」と「養殖環境」が異なります。加熱用を生で食べるのはNGなので、購入時にラベルでしっかり確認しましょう。
牡蠣と相性の良い食材
牡蠣は磯の香りとクリーミーな旨味を持つ食材。風味を引き立てたり、臭みを抑えたりする食材との組み合わせが重要です。
| 食材 | 組み合わせの理由・使い方例 |
|---|---|
| ほうれん草 | バター炒めにすると風味と彩りが引き立つ。牡蠣グラタンやソテーに最適。 |
| レモン | 生牡蠣や蒸し牡蠣に添えると酸味が臭みを抑え、味に爽やかさが加わる。 |
| バター | 濃厚な牡蠣の旨味とコクが調和し、ソテーやカキフライの下味にもよく使われる。 |
| 白味噌 | 土手鍋や味噌煮に。甘みのある味噌が牡蠣の塩味と調和し、深い味わいに。 |
| 長ねぎ | 鍋料理に加えると、加熱により甘みが増し、牡蠣の旨味と好相性。 |

現役和食調理師のヒント
牡蠣の旨味は熱で増すため、風味の強い野菜や調味料と組み合わせると一層おいしくなります。加熱しすぎると縮むので、火加減にも注意しましょう。
牡蠣に合う調理法
牡蠣は加熱しても旨味が逃げにくく、さまざまな調理法で楽しめる食材です。ただし、火を通しすぎると身が縮むので、加熱時間が短く済む調理法が◎です。
| 調理法 | おすすめ度 | 理由 |
|---|---|---|
| 生食 | ○ | 新鮮な真牡蠣に限られる。衛生管理が必要。冬場に流通が多い。 |
| 蒸し料理 | ◎ | 身がふっくらし旨味も凝縮される。酒蒸しや殻付き蒸しが人気。 |
| 焼き物 | ◎ | 旨味が凝縮され香ばしさが加わる。殻付き焼きやバター焼きが定番。 |
| 煮物 | ○ | 味噌煮や土手鍋など。白味噌や酒との相性が良く、短時間加熱がポイント。 |
| 揚げ物 | ◎ | カキフライは定番。サクサクの衣とクリーミーな牡蠣の対比が人気。 |
| 酢の物 | △ | 酢締めで風味は出るが、好みが分かれる。ポン酢やもみじおろしでさっぱりと。 |
| 炒め物 | ○ | バター炒めやガーリックソテーなど、風味を引き出しやすい。 |

現役和食調理師のヒント
カキフライは衣が剥がれやすいため、水分をしっかりふき取ってから衣をつけるのがコツ。蒸し牡蠣やバター焼きは短時間加熱でプリッと仕上げるのがポイントです。
牡蠣の栄養素(食品成分表)
かき(養殖)
可食部100g当たり
| 栄養素 | 水煮 | 生 | 単位 |
|---|---|---|---|
| 廃棄率 | 0 | 75 | % |
| エネルギー | 90 | 58 | ㎉ |
| 水分 | 78.7 | 85.0 | g |
| タンパク質 | 9.9 | 6.9 | g |
| 脂質 | 3.6 | 2.2 | g |
| 食物繊維(総量) | – | – | g |
| 炭水化物 | 7.1 | 4.9 | g |
| ナトリウム | 350 | 460 | ㎎ |
| カリウム | 180 | 190 | ㎎ |
| カルシウム | 59 | 84 | ㎎ |
| マグネシウム | 42 | 65 | ㎎ |
| リン | 140 | 100 | ㎎ |
| 鉄 | 2.9 | 2.1 | ㎎ |
| 亜鉛 | 18.0 | 14.0 | ㎎ |
| 銅 | 1.44 | 1.04 | ㎎ |
| マンガン | 0.37 | 0.39 | ㎎ |
| ヨウ素 | 71 | 67 | ㎍ |
| セレン | 62 | 46 | ㎍ |
| クロム | 4 | 3 | ㎍ |
| モリブデン | 5 | 4 | ㎍ |
| ビタミンA(レチノール) | 42 | 24 | ㎍ |
| ビタミンA(β-カロテン) | 10 | 6 | ㎍ |
| ビタミンD | 0.1 | 0.1 | ㎍ |
| ビタミンE(トコフェロールα) | 2.9 | 1.3 | ㎎ |
| ビタミンK | – | 0 | ㎍ |
| ビタミンB1 | 0.07 | 0.07 | ㎎ |
| ビタミンB2 | 0.15 | 0.14 | ㎎ |
| ナイアシン | 1.6 | 1.5 | ㎎ |
| ビタミンB6 | 0.07 | 0.07 | ㎎ |
| ビタミンB12 | 24.0 | 23.0 | ㎍ |
| 葉酸 | 31 | 39 | ㎍ |
| パントテン酸 | 0.41 | 0.54 | ㎎ |
| ビオチン | 7.4 | 4.8 | ㎍ |
| ビタミンC | 3 | 3 | ㎎ |
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牡蠣の英語・漢字表記

| 項目 | 表記・読み方 |
|---|---|
| 漢字 | 牡蠣 |
| ひらがな | かき |
| 英語 | oyster(オイスター) |
| 学名 | Crassostrea gigas(真牡蠣) Crassostrea nippona(岩牡蠣) |
| 発音記号 | [ˈɔɪstər](オイスタァ) |

現役和食調理師のヒント
海外でも「オイスター」は人気食材。日本のように「生食」する文化は少なく、加熱調理(焼く・フライ)が主流です。英語のレシピでは “oyster stew” や “fried oysters” などの表記もよく見かけます。
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