「アブラツノザメって、塩焼きにすると美味しいの?」
一見するとサメ=食べにくいイメージがありますが、実は脂がのった白身でクセがなく、塩焼きや煮付けで絶品の魚です。
特に北海道や青森などでは冬の定番食材として知られており、安価ながら旨味が強いのが魅力。
この記事では、和食調理師として25年以上の経験をもつ筆者が、「アブラツノザメ」の塩焼きに合う理由、旬、味の特徴、相性の良い食材や調理法などをわかりやすく解説します。
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あぶらつのざめの旬
アブラツノザメは冬がもっとも脂がのっておいしい旬の時期とされています。特に水温の低い北海道沿岸や日本海側(青森〜山陰)で多く水揚げされ、地域によっては鍋や煮付け、塩焼きにして食べるのが冬の定番です。
あぶらつのざめ
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あぶらつのざめとは ~解説~

アブラツノザメは、軟骨魚類ツノザメ科に属するサメの一種で、主に日本海側や北海道沿岸に分布しています。
見た目は小ぶりで細長く、体長は50〜80cmほど。体表にはうろこがなく、全体的に滑らかで、やや灰褐色がかった色合いが特徴です。
最大の特徴は名前にもあるとおり「脂(あぶら)」の多さ。内臓や筋肉中に脂がしっかり含まれており、クセのない上品な白身として、煮付け・唐揚げ・塩焼きなど幅広い料理に使われます。
また、一般的なサメのようなアンモニア臭はほとんどなく、身はやわらかく淡泊で、魚臭さが少ないため、子どもや高齢者にも食べやすい魚です。
特徴まとめ
- サメの仲間だが、においは少なく食べやすい
- 身は白く、柔らかく、脂がのっている
- 調理の幅が広く、塩焼き・煮付け・唐揚げなどに向く
- 安価で手に入りやすく、家庭料理にも使いやすい

現役和食調理師のヒント
冬に水揚げされるアブラツノザメは、内臓脂肪がしっかりついており、焼いても身がパサつかず、ふっくら仕上がります。塩焼きにするなら、皮ごと焼くと香ばしさが増しておすすめですよ。
あぶらつのざめの地方名
アブラツノザメは地域によって呼び名が異なり、各地で親しまれています。とくに東北や北海道では、郷土料理としても利用されることが多く、地元ならではの呼び方が残っています。
| 地域 | 地方名・別名 |
|---|---|
| 北海道 | ドギ、ドギザメ |
| 青森県 | ドギ、ドギウオ |
| 秋田県 | ネズミザメ(※混称の場合あり) |
| 山形県 | ツノザメ、アブラザメ |
| 島根・鳥取 | サメ、サメの煮付け(名称ではなく料理として定着) |

現役和食調理師のヒント
「ドギ」と呼ばれる地域では、干物や煮付け、味噌汁の具としてもよく登場します。流通名で見かけなくても、地元市場では方言で売られていることが多いので、魚売り場で聞いてみるのがおすすめです。
あぶらつのざめの目利き
アブラツノザメは鮮度が落ちやすい魚のため、購入時には次のポイントをチェックしましょう。
| チェック項目 | 見るべきポイント |
|---|---|
| 皮の色 | ツヤがあり、灰褐色で変色していないものが◎ |
| 身の弾力 | 押して弾力がある、ふっくらしたもの |
| 匂い | アンモニア臭がないこと(強い場合は鮮度低下) |
| 切り身の場合 | 血合いが黒ずんでいない、ドリップが少ないもの |
| 干物・加工品 | 乾きすぎていない、脂の照りが残っているもの |

現役和食調理師のヒント
鮮魚が手に入りにくい地域では、「アブラツノザメの干物」や「煮付け用冷凍パック」もおすすめ。皮付きの状態で焼くと風味が引き立ち、身離れも良くなります。内臓は苦味が強いため、調理前にしっかり取り除くのがコツです。
あぶらつのざめと相性の良い食材
脂がのった白身でクセが少ないアブラツノザメは、さっぱりとした薬味や味を引き締める食材と特に好相性です。
| 食材 | 組み合わせの理由・使い方例 |
|---|---|
| 大根おろし | 塩焼きの脂をさっぱり中和し、定番の付け合わせに最適 |
| 生姜 | 煮付けや汁物で臭み消しと香味づけに活躍 |
| ポン酢 | 焼き魚にかけることで味が引き締まり、食欲をそそる |
| 柚子胡椒 | 焼き物や唐揚げに添えて、ピリッとしたアクセントに |
| 白ネギ | 焼き・煮物どちらにも合い、香りと甘みが加わる |

現役和食調理師のヒント
塩焼きにしたアブラツノザメには「大根おろし+ポン酢」が鉄板の組み合わせ。あっさりとした後味になるので、お酒のお供にもぴったりですよ。
あぶらつのざめに合う調理法
アブラツノザメは脂がのった白身魚で、シンプルな調理法でも旨味をしっかり楽しめます。特に塩焼きはおすすめ度◎の王道です。
| 調理法 | おすすめ度 | 理由 |
|---|---|---|
| 塩焼き | ◎ | 脂がよくのっており、皮目の香ばしさと身のふっくら感が絶品 |
| 煮付け | ○ | 生姜や醤油ベースの味付けが身によくしみ込み、ご飯によく合う |
| 唐揚げ | ○ | 下味をつけて揚げると骨まで柔らかく、ジューシーな味わいに |
| 蒸し物 | △ | 身がやわらかすぎて崩れやすく、調整がやや難しい |
| 刺身 | × | 食感・鮮度的に刺身には向かない(流通も少ない) |

現役和食調理師のヒント
塩焼きにする際は、皮目に浅く切れ目を入れてから塩をふると、焼きムラを防げて仕上がりがきれいになります。魚焼きグリルで中火~弱火でじっくり焼くと、ふんわりジューシーな仕上がりに。
アブラツノザメの栄養素~食品成分表~
あぶらつのざめ(生)
可食部100g当たり
| 栄養素 | 生 | 単位 |
|---|---|---|
| 廃棄率 | 0 | % |
| エネルギー | 138 | ㎉ |
| 水分 | 72.4 | g |
| タンパク質 | 16.8 | g |
| 脂質 | 9.4 | g |
| 食物繊維(総量) | – | g |
| 炭水化物 | – | g |
| ナトリウム | 100 | ㎎ |
| カリウム | 450 | ㎎ |
| カルシウム | 6 | ㎎ |
| マグネシウム | 19 | ㎎ |
| リン | 200 | ㎎ |
| 鉄 | 1.0 | ㎎ |
| 亜鉛 | 0.3 | ㎎ |
| 銅 | 0.04 | ㎎ |
| マンガン | 0.01 | ㎎ |
| ヨウ素 | – | ㎍ |
| セレン | – | ㎍ |
| クロム | – | ㎍ |
| モリブデン | – | ㎍ |
| ビタミンA(レチノール) | 210 | ㎍ |
| ビタミンA(β-カロテン) | – | ㎍ |
| ビタミンD | 1.0 | ㎍ |
| ビタミンE(トコフェロールα) | 2.2 | ㎎ |
| ビタミンK | – | ㎍ |
| ビタミンB1 | 0.04 | ㎎ |
| ビタミンB2 | 0.08 | ㎎ |
| ナイアシン | 1.0 | ㎎ |
| ビタミンB6 | 0.33 | ㎎ |
| ビタミンB12 | 1.7 | ㎍ |
| 葉酸 | 2 | ㎍ |
| パントテン酸 | 0.73 | ㎎ |
| ビオチン | – | ㎍ |
| ビタミンC | – | ㎎ |
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あぶらつのざめの英語・漢字表記

| 表記 | 内容 |
|---|---|
| 漢字表記 | 油角鮫 |
| 英語表記 | smooth dogfish / smooth dogfishes |
| 学名 | Mustelus griseus |
| 発音記号 | [smuːð dɔ́gfɪʃ](スムーズ・ドッグフィッシュ) |
| カタカナ表記 | スムーズ・ドッグフィッシュ |
※「dogfish(ドッグフィッシュ)」はサメ類の総称で、小型で浅瀬に生息する種類を指します。英語圏でもあまり食用魚として一般的ではありませんが、地域によっては調理されることもあります。
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