かますの旬と食べ方|味わい・特徴・英語表記まで調理師が解説

新鮮な生のかます(魳)を並べた画像|細長い体が特徴の青魚 TOP
旬の時期に獲れた新鮮なかます。脂がのった状態が一番おいしい。
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かます(魳)はすっきりとした白身にほどよい脂を持つ、秋の代表的な魚です。焼くと皮は香ばしく、身はふっくらと仕上がり、刺身や干物でも人気があります。

「かますってどんな魚?」
「英語では何て言うの?」
「どの時期が旬?」

といった疑問を持つ方も多いでしょう。

本記事では、かますの旬・味の特徴・種類・英語表記・栄養素・相性の良い食材まで、現役和食調理師の視点でわかりやすく解説します。
家庭で美味しく調理するコツや、鮮度の良いかますの見分け方も紹介していますので、旬の時期にぜひ参考にしてください。

現役和食調理師のイラスト|25年以上の経験から料理のヒントを伝えます

現役和食調理師のヒント

かますは開きやすく、塩焼きや干物、天ぷらなど幅広い料理に活用できる万能魚。

かますの旬 ~おいしい時期~

ざるに並べた生のかます2尾|秋から冬にかけてが旬の魚
かますの旬は秋から冬。脂がのって焼いてもふっくらジューシーになります。

かますの旬は秋(9〜11月)です。初秋から冬にかけて水温が下がると、脂がのって身がふっくらし、焼いても刺身でも旨味が増します。
特に
9〜10月頃の「アカカマス」は脂ののりが良く、塩焼きにすると皮目が香ばしく、身はしっとり柔らかく仕上がります。アカカマスの産卵期は初夏から夏にかけて。産卵期の前に栄養を蓄えるので初夏の前が旬にもなります。

アカカマス

ヤマトカマス

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現役和食調理師のヒント

旬のかますは身に透明感と弾力があり、火を入れるとふっくらジューシーに仕上がります。秋に出回るものは干物にも向いており、塩焼きにすると香ばしさと甘みが際立ちます。

かますとは~解説~

炙りにしたかますの刺身をおしゃれに盛り付けた皿
白身魚ながら旨味が濃く、刺身・炙り・焼き魚など幅広く楽しめるかます。

かます(魳・叺)は、スズキ目カマス科カマス属の海水魚で、細長い体と鋭い歯が特徴です。
日本近海には十数種が生息していますが、食用として市場に多く出回るのはアカカマス(ホンカマス)とヤマトカマスの2種です。干物としても馴染み深く、家庭の焼き魚でもおなじみの魚です。

体長は30cm前後になることが多く、獲れたての鮮魚は銀白色で美しく輝きます。
時間が経つとやや赤みを帯び、鮮度の変化が見た目にも現れます。

味の特徴

  • 淡白でクセがなく、やさしい旨みがある
  • 火を入れると身がふっくらと柔らかくなる
  • 干物にすると旨みが凝縮し、香ばしさが増す
  • 脂は控えめながら、秋の旬にはほどよく脂がのり非常に美味

塩焼き、干物、フライ、天ぷら、ムニエルなど和洋問わず幅広い料理に使える食材です。
皮目に独特の香ばしさがあり、焼き魚にすると旨味がいっそう引き立ちます。

分類・分布・英語表記

  • 分類:スズキ目カマス科カマス属
  • 学名
    Sphyraena japonica(アカカマス)
    Sphyraena pinguis(ヤマトカマス)
  • 分布
    北海道南部〜九州南岸の沿岸部。太平洋・日本海・瀬戸内海に広く分布。
  • 英語:Barracuda(バラクーダ)
     ※海外でいう大型の「オオカマス(Great barracuda)」とは別種ですが、英語表記は共通です。
  • 漢字:魳(かます)・叺(かます)
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身が柔らかいため、開きにして焼くと型崩れせずふっくら仕上がります。
鮮度の良いかますは、皮目に軽く塩を振って焼くだけで十分な旨味を引き出せます。

地方名・分類・仲間の魚

地方名(呼び名)

かますは地方によってさまざまな呼び名で親しまれています。
同じ「かます」でも、地域や種類によって呼称や脂ののりが異なります。

都道府県呼び名備考
関東地方ホンカマスアカカマスの一般的呼称
山陰地方アブラカマス脂がのったアカカマスを指す
九州ミズカマス
セイカマス
ヤマトカマスの地域名。身が水っぽく脂が少ない

干物業界では「カマス」といえば主にアカカマス(ホンカマス)を指すことが多く、脂ののりと旨味から高級干物の定番となっています。

分類と代表種

種類特徴主な用途
アカカマス
(ホンカマス)
Sphyraena japonica
体がやや赤く大型。脂がのって旨味が強い。塩焼き
干物
寿司
煮付け
ヤマトカマス
Sphyraena pinguis
小型で脂は少ないが上品な旨味。唐揚げ
南蛮漬け
干物
オニカマス(バラクーダ)
Sphyraena barracuda
熱帯・亜熱帯に生息。大型で肉厚だが、シガテラ毒の恐れがあり食用不可。

仲間の魚

カマス科の魚は世界で20種以上確認されています。
日本では主にアカカマスヤマトカマスが食用として流通し、沖縄や小笠原などの熱帯域では**オニカマス(バラクーダ)が生息しますが、こちらは自然毒「シガテラ毒」を持つ可能性があり、一般流通はしていません。


シガテラ毒:熱帯性の一部魚種に含まれる自然毒。加熱しても分解されず、中毒を起こすことがあります。

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ヤマトカマスは脂が少ないため、唐揚げや南蛮漬けにすると身の旨みが引き立ちます。脂ののったアカカマスは、塩焼きや干物で香ばしく仕上げるのが定番です。

新鮮なかますの選び方

市場に並ぶかますの干物|目が澄み、身にハリのある新鮮な個体
鮮度の良いかますは目が透き通り、体表にツヤがある。干物でも鮮度が味を左右します。

かますは身がやわらかく傷みやすい魚のため、鮮度の見極めがとても大切です。時間が経つと体表の銀色が鈍くなり、赤みが強く出るのが特徴です。以下のポイントを押さえて選ぶと、焼いても揚げてもふっくら美味しく仕上がります。

鮮度の良いかますの見分け方

チェック項目良い例注意点・避けたい状態
透明で澄んでいる
黒目がくっきりしている
濁っているものは鮮度が落ちている証拠
体表銀色に光沢がある
ぬめりが少ない
鱗がはがれやすい・ぬめりが強いものは古い
身の弾力指で押すとすぐに戻る弾力がある柔らかすぎる、へこみが戻らないものは避ける
エラ鮮やかな赤色黒ずんでいたり、変色しているものは鮮度が低い
におい海水のような自然な香り生臭さや酸味のある臭いは避ける

流通形態による見極めポイント

形態チェックすべき点コメント
鮮魚光沢・透明な目・赤いエラ時間経過で赤みが強く出るため、購入後はすぐ調理
開き・干物表面に白く乾いた部分がない・脂が均一脂の照りと香りが強いものほど新しい
冷凍品霜が少なく、ドリップ(汁)跡がない再冷凍されたものは食感が落ちる
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店頭で迷ったときは、まず「目と体の光沢」を最重視しましょう。光沢のある個体は身の水分バランスが保たれており、焼いてもふっくらと仕上がります。

かますの保存方法

かますは身がやわらかく、脂が酸化しやすい魚のため、購入後はなるべく早く調理するのが基本です。やむを得ず保存する場合は、状態に合わせて正しい方法を選びましょう。


生のかますの保存方法

保存方法ポイント
冷蔵保存内臓と血合いを取り除き、キッチンペーパーで水気をしっかり拭き取る。ラップで包み、密閉容器またはチャック付き袋に入れて野菜室よりも冷たい場所(チルド帯・約2℃)で保存。
冷凍保存水分を丁寧に拭き取り、1切れずつラップで包む。フリーザーバッグに入れ、空気をしっかり抜いて保存。金属トレーにのせて急速冷凍すると、身崩れやドリップを防げる。

干物の保存方法

保存方法備考
冷蔵保存
(真空パック)
未開封なら比較的日持ちします。開封後は2〜3日以内に消費。
冷凍保存1枚ずつラップで包み、フリーザーバッグに入れて密閉。焼く前に冷蔵庫で半日ほど自然解凍すると、ふっくら焼き上がる。
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現役和食調理師のヒント

干物を冷凍保存する際は、空気をできるだけ抜くことが大切です。
解凍は常温ではなく冷蔵庫でゆっくり。身が縮まず、脂の旨みがそのまま残ります。

かますと相性の良い食材・食べ合わせ

かますの塩焼きを盛り付けた皿|すだちを添えて
かますの塩焼きは、すだち・大根おろし・しょうゆとの相性が抜群。

かますはクセが少なく淡白な白身魚です。素材の味を引き立てる調味料や食材との組み合わせがポイントになります。シンプルに仕上げても、薬味や酸味、香ばしさを加えることで、奥行きのある一品になります。

相性の良い食材・組み合わせ例

組み合わせ特徴・ポイント

柚子
すだち
シンプルな塩焼きに柑橘を添えて、香りと酸味で引き立てる
生姜
ネギ
唐揚げや煮付けに。薬味で臭みを抑え、食欲増進にも効果的
梅肉
大葉
天ぷらやフライの薬味に。さっぱりとした後味に
味噌
酒粕
焼き味噌漬けや西京焼き風にすると旨みが引き立つ
ごぼう
ピーマン
なす
南蛮漬けや揚げ浸しに最適。野菜の甘みとよく合う
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カマスは皮に独特の香ばしさがあるので、焼き魚にするなら皮目をパリッと仕上げるのがコツ。グリルやフライパンでしっかり焼きつけると、香りの良さが格段にアップします。

カマスの栄養素 ~食品成分表~

かます
可食部100g当たり

栄養素焼き単位
廃棄率4040%
エネルギー134137
水分70.372.7g
タンパク質23.318.9g
脂質4.97.2g
食物繊維(総量)g
炭水化物0.10.1g
ナトリウム150120
カリウム360320
カルシウム5941
マグネシウム4234
リン190140
0.50.3
亜鉛0.60.5
0.050.04
マンガン0.010.01
ヨウ素
セレン
クロム
モリブデン
ビタミンA(レチノール)1312
ビタミンA(β-カロテン)
ビタミンD10.011.0
ビタミンE(トコフェロールα)0.90.9
ビタミンK
ビタミンB10.030.03
ビタミンB20.140.14
ナイアシン4.24.5
ビタミンB60.310.31
ビタミンB123.32.3
葉酸138
パントテン酸0.520.47
ビオチン
ビタミンC
参照「「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」」

▶ 栄養の全体像を知りたい方はこちら
五大栄養素・ビタミン・ミネラルをまとめたページへ
→ たんぱく質・脂質・炭水化物・ビタミン・ミネラルなど、健康に必要な栄養素35種類を、分類ごとにわかりやすく解説しています。

カマスの英語・漢字表記と読み方

かますの英語表記カード「Barracuda」
かますの英語表記は “Barracuda”。英語でも人気のある魚です。

英語表記・発音

日本語名英語表記発音記号カタカナ読み
かますbarracuda[ˌbærəˈkuːdə]バラクーダ

英語で「かます」は一般的に barracuda(バラクーダ) と訳されますが、この単語は主に熱帯〜亜熱帯に生息するオニカマス属の大型種(特にGreat barracuda)を指します。
一方で、日本の食卓に並ぶ「アカカマス」「ヤマトカマス」は海外ではあまり一般流通していないため、細かく分けて表記されることは少なく、fish marketなどでは「barracuda(small)」や「Japanese barracuda」と表記される場合もあります。


漢字表記と由来

漢字補足

「魳」は魚へんに“甚だしい”で形状や味に由来すると言われる

「叺(かます)」は本来は藁などで編んだ袋を意味する漢字で、魚のカマスの語源とも言われています。昔、この袋にカマスを入れて運んでいたことから、魚の名前として定着したとも。

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現役の和食調理師/おかだ けんいち(調理歴25年以上)

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