「鮎ってどんな魚?栄養はあるの?旬はいつ?」
透き通る川の流れに棲む鮎は、“清流の女王”とも呼ばれる美しい川魚。
独特の香りとほろ苦さがあり、塩焼きや天ぷらとして日本の夏を代表する味覚です。
本記事では、和食調理師として25年以上の経験をもつ筆者が、鮎の特徴・旬・栄養価・調理法・稚鮎との違いなどをわかりやすく紹介します。英語表記や英語例文もあわせて解説しています。
鮎の旬 ~おいしい時期~

「香魚」とも呼ばれる鮎。実は、食べる時期によって3回も旬があることをご存知ですか?
稚鮎の旬は3月から5月
まだ幼い鮎は骨が驚くほど柔らかく、丸ごと食べられるのが魅力。天ぷらにすると、春の息吹を感じる上品なほろ苦さが口いっぱいに広がります。鮎のシーズンは初夏からですが、3月頃には琵琶湖の「氷魚(ひうお)」や稚鮎が旬を迎えます。この時期ならではの、柔らかく繊細な苦味は春の楽しみの一つです。あわせて読みたい▶ 3月の旬な魚一覧|春の訪れを告げる美味しい魚たち (※春の始まりに味わいたい、稚鮎や初春の魚をまとめています。)
成魚(鮎)の旬は6月から8月ごろ
まさに鮎のベストシーズン!良質な苔を食べて育った鮎は、スイカのような清々しい香りを放ちます。脂ののった身をシンプルに塩焼きでいただくのが、最も贅沢な食べ方です。5月の旬魚介をまとめて比較したい方へ。品目を一覧で見られる「5月の魚介類一覧」を用意しています▶5月|旬の魚介類 一覧表【保存版】
落ち鮎の旬は9月から10月ごろ
産卵のために川を下るこの時期は、大きな卵を抱えた「子持ち鮎」が主役。夏の香りとはまた違う、真子や白子の濃厚なコクと力強い旨味が楽しめます。9月になると、鮎は「落ち鮎(おちあゆ)」と呼ばれ、子持ちの個体が増えてきます。夏の若鮎とはまた違った、卵の食感やコクのある味わいを楽しめるのがこの時期の醍醐味です。あわせて読みたい: 9月の旬な魚一覧|秋の訪れとともに脂がのる美味しい魚たち (※落ち鮎をはじめ、秋が旬の魚を料理人の視点で解説しています。)
鮎はわずか1年でその一生を終える「年魚」です。そのため、春・夏・秋と季節が進むごとに、その姿も味わいも劇的に変化します。「鮎は夏だけのもの」と思われがちですが、それぞれの時期にしかない「究極の味」があります。今しか味わえない旬の鮎を、ぜひ食卓に取り入れてみてください。
鮎の呼び名
鮎には成長段階ごとに呼び名と旬が異なります。日本では季節の移ろいとともに、さまざまな姿の鮎が楽しまれてきました。
| 呼び名 | 主な旬 | 特徴・用途 |
|---|---|---|
| 稚鮎 (ちあゆ) | 3〜5月 | 体長5〜10cmほど。ほろ苦さが少なく、天ぷらや南蛮漬けに向く。春の味覚。 |
| 若鮎 (わかあゆ) | 6月頃 | 初夏にかけての若い鮎。塩焼きにすると香りが爽やか。 |
| 成魚 (夏鮎) | 7〜8月 | 最も香りが強く、脂ものって旬のピーク。塩焼き・背ごし・鮎飯など多彩に使われる。 |
| 落ち鮎 (おちあゆ) | 9〜10月 | 産卵のため川を下る鮎。脂が抜けて淡泊だが、煮物や甘露煮に使われる。 |

現役和食調理師のヒント
鮎の魅力は何と言ってもスイカのような爽やかな香りと、ほのかな苦味。これは夏の天然鮎が一番強く、塩焼きにすると香ばしさが際立ちます。稚鮎や若鮎は火を通しすぎず、柔らかさを活かした揚げ物や酢の物にすると美味です。
鮎とは ~解説・特徴~

鮎(あゆ)は、サケ目アユ科の淡水魚で、日本全国の清流に生息する一年魚です。美しい姿と香り高さから「清流の女王」とも称され、夏の風物詩として親しまれています。
春に海から川へ遡上し、夏に成魚となって活発に動き回り、秋には産卵して一生を終えるという儚い命のサイクルも、鮎ならではの魅力です。
鮎の特徴まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 学名 | Plecoglossus altivelis |
| 分類 | サケ目アユ科アユ属 |
| 生息地 | 日本全国の清流、琵琶湖、韓国・台湾など一部アジア地域 |
| 寿命 | 約1年(秋に産卵して死ぬ) |
| 味・食感 | ほろ苦さと上品な香り、しっとりとした白身 |
| 香り | 「スイカのような香り」と表現される独特の爽やかさ |
- 漢字表記の意味(由来)
川の岩についた藻を食べ、独特な香りがするので「香魚」(こうぎょ)
1年で一生を終えるため「年魚」(ねんぎょ)
泳いでいると口元が銀色に光るため「銀口魚」(ぎんこうぎょ) - 稚鮎は鱗も骨も気にならず、そのまま調理できる
- 成魚の鱗は細かくほとんど気にならない
- 夏の訪れを知らせる「鮎の塩焼き」
- 生息する川によって味が変わると言われる
- 鮎の内臓の塩辛=渋うるか
- 鮎の卵巣の塩辛=子うるか
鮎が自慢の河川
九州の球磨川
四国の四万十川
岐阜県の長良川
静岡県の狩野川
神奈川県の酒匂川

現役和食調理師のヒント
鮎は火を通すことで香りが立ち、皮の香ばしさと身の甘みが際立ちます。天然ものは香りが強く、養殖ものは苦味が少ない傾向があるため、料理法や食べる人の好みに応じて使い分けると良いですよ。
鮎の地方名・別名(清流の女王)
鮎は全国で広く親しまれている魚ですが、その美しさや生態、味わいから、地域ごとにさまざまな呼び名や表現で語られています。
| 呼び名・表現 | 使用地域・背景 |
|---|---|
| 清流の女王 | 全国共通の愛称。澄んだ川に棲む気品ある魚として命名されることが多い |
| 若鮎 (わかあゆ) | 初夏の小ぶりな鮎の呼び名。京都の和菓子「若鮎」にも由来 |
| 香魚 (こうぎょ) | 鮎の独特な香りに由来する古称。文献や俳句で使われることも |
| 年魚 (ねんぎょ) | 一年で一生を終える魚という意味。季節を表す言葉として使われる |
| 稚鮎 (ちあゆ) | 春に出回る小さな若魚。地方によっては「しらあゆ」「こあゆ」などとも |

現役和食調理師のヒント
「清流の女王」という名前にふさわしく、見た目の美しさと繊細な香りが魅力の鮎は、料理だけでなく季節感を演出する食材としても重宝されます。器や盛り付けに川石や笹の葉を添えると、自然の趣がさらに引き立ちます。
鮎の目利き
鮎は繊細で鮮度が落ちやすいため、見た目やにおいでしっかりとチェックすることが大切です。以下のポイントを参考にしてください。
| チェック項目 | 新鮮な鮎の特徴 | 鮮度が落ちた鮎 |
|---|---|---|
| 目 | 澄んで黒目がはっきりしている | 白く濁り、しぼんでいる |
| 体の表面 | ヌメリがあり、ツヤとハリがある | 乾いてカサついている、光沢がない |
| 腹部 | ふっくらしている | やわらかく破れやすい |
| におい | ほんのりスイカのような香り | 生臭さ、酸味のあるにおい |
| ひれ | ピンと立っている | しおれて寝ている |

現役和食調理師のヒント
天然鮎は顔立ちがシュッと細く、ひれが大きめ。養殖物は少し丸く太めな体形のものが多いです。香りと苦味を楽しみたいなら天然、やわらかくクセが少ない味が好みなら養殖がおすすめです。
鮎と相性の良い食材
鮎は香りとほろ苦さが魅力の魚。素材の持ち味を活かすため、香味野菜や柑橘類、渋味や酸味のある食材との相性が抜群です。
| 食材 | 組み合わせの理由・使い方例 |
|---|---|
| 塩 | 素材の甘みと香りを引き立てる。塩焼きで真価を発揮 |
| 酢 | 稚鮎や落ち鮎の南蛮漬けに。ほろ苦さがまろやかに |
| 大根おろし | 焼き魚の脂や苦味をさっぱり中和する。定番の付け合わせ |
| 柚子 すだち | 香りの相乗効果で風味が爽やかに。焼き物や吸い物に◎ |
| 山椒の葉 | 天ぷらや甘露煮の仕上げに添えると、季節感と香りが増す |
もっと詳しく知る(参照) 鮎の甘露煮の歴史や地域ごとの特徴については、農林水産省の「うちの郷土料理」でも詳しく紹介されています。鮎の甘露煮 栃木県 | うちの郷土料理:農林水産省

現役和食調理師のヒント
鮎は「引き算の料理」が合う魚。余計な味付けを避け、塩や香味だけで香り・甘み・苦みを活かすのがコツです。すだちや柚子はスライスで添えるより、果汁をひと絞りするだけの方が香りが立ちますよ。
鮎に合う調理法
鮎はその香りや繊細な身を活かすため、火入れが命の魚です。塩焼きを基本に、時期やサイズに応じてさまざまな調理法が楽しめます。
| 調理法 | おすすめ度 | 理由 |
|---|---|---|
| 塩焼き | ◎ | 鮎の香りと甘みを最も活かせる。皮が香ばしく身はふっくら |
| 天ぷら | ◎ | 稚鮎や若鮎に最適。骨ごと揚げられ、頭から尾まで食べやすい |
| 甘露煮 | ○ | 落ち鮎に適した調理。内臓の苦味と甘辛い味付けが好相性 |
| 南蛮漬け | ○ | 稚鮎向き。酢でさっぱりと仕上がり、食欲の落ちる夏にぴったり |
| 吸い物・椀物 | △ | 出汁は出るが、香りと食感がやや弱くなりやすい |
甘露煮:骨まで柔らかく、旨味が凝縮された保存食の知恵
鮎の代表的な調理法の一つが「甘露煮」です。素焼きした鮎を、醤油、砂糖、みりん、酒などでじっくりと数時間かけて炊き上げます。
- 味わいの特徴
じっくり煮込むことで骨までホロホロと柔らかくなり、頭から尻尾まで丸ごと食べられます。内臓のほのかな苦味と甘辛いタレが絶妙に絡み合い、白いご飯やお酒の肴に最高です。 - 落ち鮎との相性
特に秋の「落ち鮎(子持ち鮎)」は、甘露煮にすることで卵のプチプチとした食感が際立ち、より一層贅沢な味わいになります。
もともとは川魚の保存食として受け継がれてきた伝統的な料理であり、現在でも全国各地の河川流域で郷土料理として愛されています。

現役和食調理師のヒント
塩焼きの鮎は串を打って立て焼き(若狭焼き)にすることで、川で泳いでいるような美しい姿に。見た目にも季節感があり、特に天然ものは焼き方にこだわると香りが格段に引き立ちます。
鮎(あゆ)を丸ごと楽しむための「骨」の知識
鮎の塩焼きは、頭からガブリと食べるのが一番美味しいと言われます。特に「若鮎」と呼ばれる小ぶりな時期のものは、骨も柔らかくそのまま食べることができます。
しかし、成長して身が厚くなった鮎は、背びれ周りや中骨がしっかりとしてくるため、特に小さなお子様やご高齢の方が食べる際には、喉に引っかからないよう注意が必要です。
鮎の骨を気にせず美味しく食べるには?
鮎には「骨抜き」という独特の食べ方(焼き上がった鮎の身をほぐし、頭から背骨をスッと抜く技法)がありますが、それ以前に「魚の骨に対する不安」を解消しておくことが、魚料理をより身近に楽しむ近道です。
「小骨が怖くて子どもに食べさせにくい」「家庭で簡単にできる骨対策を知りたい」という方に向けて、プロが実践する下処理のコツを別ページで詳しく解説しています。
魚の小骨の取り方|簡単な骨抜き方法と子ども向け対策
鮎の栄養素 ~食品成分表~
あゆ(焼き)
可食部100g当たり
| 栄養素 | 養殖 | 天然 | 単位 |
|---|---|---|---|
| 廃棄率 | 55 | 55 | % |
| エネルギー | 202 | 149 | ㎉ |
| 水分 | 59.3 | 64.0 | g |
| タンパク質 | 22.6 | 26.6 | g |
| 脂質 | 15.1 | 6.8 | g |
| 食物繊維(総量) | – | – | g |
| 炭水化物 | 0.8 | 0.1 | g |
| ナトリウム | 79 | 110 | ㎎ |
| カリウム | 430 | 510 | ㎎ |
| カルシウム | 450 | 480 | ㎎ |
| マグネシウム | 31 | 35 | ㎎ |
| リン | 430 | 460 | ㎎ |
| 鉄 | 2.0 | 5.5 | ㎎ |
| 亜鉛 | 1.3 | 1.2 | ㎎ |
| 銅 | 0.07 | 0.06 | ㎎ |
| マンガン | – | 0.41 | ㎎ |
| ヨウ素 | – | – | ㎍ |
| セレン | – | – | ㎍ |
| クロム | – | – | ㎍ |
| モリブデン | – | – | ㎍ |
| ビタミンA(レチノール) | 480 | 120 | ㎍ |
| ビタミンA(β-カロテン) | – | – | ㎍ |
| ビタミンD | 17.0 | 1.5 | ㎍ |
| ビタミンE(トコフェロールα) | 8.2 | 1.7 | ㎎ |
| ビタミンK | – | – | ㎍ |
| ビタミンB1 | 0.20 | 0.23 | ㎎ |
| ビタミンB2 | 0.18 | 0.24 | ㎎ |
| ナイアシン | 4.0 | 3.9 | ㎎ |
| ビタミンB6 | 0.24 | 0.16 | ㎎ |
| ビタミンB12 | 6.0 | 12.0 | ㎍ |
| 葉酸 | 38 | 33 | ㎍ |
| パントテン酸 | 1.67 | 1.34 | ㎎ |
| ビオチン | – | – | ㎍ |
| ビタミンC | 2 | 2 | ㎎ |
鮎の英語・漢字表記

| 表記 | 内容 |
|---|---|
| 漢字表記 | 鮎 |
| 英語表記(一般) | sweetfish |
| 学名 | Plecoglossus altivelis |
| 発音記号 | [ˈswiːtˌfɪʃ] |
| 稚鮎の英語表記 | baby sweetfish young sweetfish(一般的表現) |
| カタカナ表記 | スウィートフィッシュ |

