つるりとしたのどごしと、みずみずしい透明感が魅力の「じゅんさい(蓴菜)」は、日本の初夏を代表する水生植物です。
池や沼の水面に浮かぶゼリー状の若芽を摘み取って食べる珍しい食材で、冷やし汁や酢の物として古くから親しまれています。
英語では “watershield(ウォーターシールド)” と呼ばれ、海外では水草の一種として知られています。日本では秋田県三種町を中心に栽培され、5月〜7月頃に最盛期を迎える初夏限定の味覚です。
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蓴菜の旬
じゅんさい
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|---|
じゅんさいの旬は、5月〜8月の初夏から盛夏にかけてです。とくに6月〜7月は最も質の良い新芽が採れる「最盛期」とされ、透明感があり、ぬめりがしっかりとした若芽が出回ります。
主な産地は秋田県三種町で、全国シェアの約9割を占めています。
この地域では天然の沼で栽培され、5月上旬に「じゅんさい採り」が始まり、真夏まで続きます。
熟練の職人が水面から一つひとつ手摘みするため、収穫量は天候に左右されやすいのが特徴です。
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じゅんさいとは ~解説~

じゅんさい(蓴菜/学名:Brasenia schreberi)は、スイレン科の多年性水生植物で、沼や池などの静かな淡水に自生します。水面近くに伸びた若芽や新葉を食用とするのが特徴で、ぬめりのある透明なゼリー状の膜に包まれています。
このゼリー状の部分は、植物が外敵や乾燥から身を守るために分泌する天然の粘質物で、独特の「つるり」とした食感を生み出します。
収穫は主に5月〜8月の初夏から盛夏に行われ、水面に浮かぶ若芽を一つひとつ手作業で摘み取ります。
日本では、秋田県三種町が全国生産量の約9割を占める主要産地。とくに「三種町産じゅんさい」は透明度が高く、国内外から高い評価を受けています。
英語では “watershield(ウォーターシールド)” と呼ばれ、アジアから北アメリカまで広く分布しています。日本では平安時代の文献にも登場するほど古く、夏の風物詩として長く親しまれてきた伝統食材です。

現役和食調理師のヒント
じゅんさいは「冷たくして」「酸味と合わせる」と美味しさが引き立ちます。
三杯酢や梅肉、ポン酢との相性が良く、口の中でとろけるような喉ごしを楽しめます。
じゅんさいの主な産地と生産量

じゅんさいの国内最大の産地は、秋田県三種町(みたねちょう)です。
ここでは天然の池沼と人工の「じゅんさい田」を利用して、全国出荷量の約9割以上を占める量が生産されています。
三種町では栽培・天然どちらも盛んで、「じゅんさい摘み体験」など観光資源としても活用されています。地元ブランドとしての認知度も高く、秋田県を代表する特産品のひとつになっています。
| 都道府県 | 特徴 | 備考 |
|---|---|---|
| 秋田県(三種町) | 全国生産の約9割以上を占める一大産地 | 天然・栽培どちらも盛ん ブランド化も進む |
| 山形県 | 天然ものが中心 | 内陸の沼地などに自生 |
| 青森県 | 一部で自生 | 小規模な出荷 |
| 滋賀県 | 栽培が少量あり | 昔ながらの手摘み |
じゅんさいの保存方法と日持ち
じゅんさいは非常にデリケートな食材で、新鮮なうちに食べるのがもっともおいしいとされています。収穫から時間が経つと、ぬめり(ゼリー質)が失われやすいため、状態に応じて保存方法を変えるのがポイントです。
生じゅんさいの保存
- 保存方法
水を張った容器に入れ、冷蔵庫で保存 - 保存期間
2〜3日が目安 - ポイント
毎日きれいな水に替えることで鮮度を保てます。冷気が強すぎるとぬめりが減るため、野菜室(5〜10℃程度)が最適です。※長期間保存すると、ぬめりが溶け出して味や風味が落ちます。
瓶詰め・レトルト加工品の場合(常温・長期保存)
市販されている瓶詰めやレトルトのじゅんさいは、加熱殺菌処理済みのため常温で数か月保存可能。開封後は水を入れて冷蔵し、2〜3日以内に食べ切りましょう。保存中にぬめりが減った場合は、軽く水洗いしてから酢の物や汁物に使えます。
冷凍保存(短期ストック向き)
- 下処理
軽く水洗いしたじゅんさいを水分を切って密閉袋へ。 - 保存期間
冷凍で約1か月 - 解凍方法
自然解凍または冷蔵庫内でゆっくり戻すと食感が保てます。
ただし、冷凍するとゼリー質がやや崩れ、生じゅんさい特有のぷるんとした食感は損なわれます。用途は汁物や煮物など、加熱調理向きです。

現役和食調理師のヒント
新鮮なじゅんさいほど透明感とぬめりが際立ちます。購入後はその日のうちに氷水に通して食べるのが理想。もし保存する場合でも、水替えと温度管理を丁寧に行いましょう。
じゅんさいと相性の良い食材

| 食材 | 相性の理由・効果 | 調理例 |
|---|---|---|
| 酢 ポン酢 | 酸味でぬめりの旨味を引き立て、口当たりがさっぱりする | 三杯酢和え じゅんさい酢の物 |
| 梅肉 | クエン酸が疲労回復を助け、酸味が清涼感をプラス | 梅肉じゅんさい 冷奴のトッピング |
| みょうが 大葉 しょうが | 香味野菜の清涼感がぬめりのある食感と好相性 | 冷やし汁 薬味じゅんさい |
| 豆腐 | タンパク質とミネラルを補い、淡泊な味が引き立つ | 冷やっこ すまし汁 |
| かに えび | 甘味とうま味がじゅんさいの繊細な味を引き立てる | かにとじゅんさいの吸い物 |
| だし | うま味の相乗効果で、ぬめりの中に深みが生まれる | 吸い物 冷製だし仕立て |
| 鯛 はも | 上品なうま味と冷やし仕立ての相性が良い | 鯛の冷やし椀 はもの吸い物 |
じゅんさいの下ごしらえ・アク抜き
基本の下ごしらえ(湯通し)
- 軽く洗う
じゅんさいはとても繊細なので、流水でやさしくすすぐだけにします。
ゴミや泥を取り除きますが、ぬめり(ゼリー質)を落とさないよう注意します。 - さっと茹でる(湯通し)
沸騰したお湯に塩をひとつまみ加え、10〜20秒ほど湯に通します。
緑色が鮮やかに変わったらすぐに引き上げます。(茹ですぎるとぬめりが溶け出してしまうためNG) - 冷水にとる
ザルにあげてすぐに氷水で冷やし、粗熱を取ります。
水にさらしすぎるとぬめりが減るので、短時間でOKです。
注意点・豆知識
- 生のまま食べることはほとんどなく、必ず湯通ししてから使用します。
- 茹でる際に金属製の鍋(特に鉄・銅)を避けると変色防止になります。
- 茹でたじゅんさいは冷水で締めることで、ぬめりと食感をキープできます。
- 長時間保存したい場合は、茹でたあと水を張った容器で冷蔵保存します(2〜3日)

現役和食調理師のヒント
じゅんさいは「茹でる」というより“湯通しする”感覚が大切。お湯に入れたら色が変わる瞬間にすぐ引き上げるのがコツです。火の入りすぎを防ぐため、少量ずつサッと湯に通すと失敗しません。
じゅんさいの栄養素 (食品成分表)
じゅんさいは、100gあたり約5kcalと非常に低カロリーな食材です。
その約95%が水分で構成されており、夏場の水分補給や食欲が落ちる時期の副菜にも向いています。カリウムやマグネシウムなどのミネラル類も含まれており、体内のナトリウム排出を助け、むくみの予防や血圧の安定化に役立ちます。さらに、ビタミンKや葉酸なども微量ながら含まれ、血液循環のサポートや代謝に関わっています。
じゅんさい(生)若葉 水煮瓶詰め
可食部100g当たり
| 栄養素 | 値 | 単位 |
|---|---|---|
| 廃棄率 | 0 | % |
| エネルギー | 4 | ㎉ |
| 水分 | 98.6 | g |
| タンパク質 | 0.4 | g |
| 脂質 | – | g |
| 食物繊維(総量) | 1.0 | g |
| 炭水化物 | 1.0 | g |
| ナトリウム | 22 | ㎎ |
| カリウム | 4 | ㎎ |
| カルシウム | 2 | ㎎ |
| マグネシウム | 2 | ㎎ |
| リン | 5 | ㎎ |
| 鉄 | – | ㎎ |
| 亜鉛 | 0.2 | ㎎ |
| 銅 | 0.02 | ㎎ |
| マンガン | 0.02 | ㎎ |
| ヨウ素 | — | ㎍ |
| セレン | – | ㎍ |
| クロム | – | ㎍ |
| モリブデン | – | ㎍ |
| ビタミンA(レチノール) | – | ㎍ |
| ビタミンA(β-カロテン) | 29 | ㎍ |
| ビタミンD | – | ㎍ |
| ビタミンE(トコフェロールα) | 0.1 | ㎎ |
| ビタミンK | 16 | ㎍ |
| ビタミンB1 | – | ㎎ |
| ビタミンB2 | 0.02 | ㎎ |
| ナイアシン | – | ㎎ |
| ビタミンB6 | – | ㎎ |
| ビタミンB12 | – | ㎍ |
| 葉酸 | 3 | ㎍ |
| パントテン酸 | – | ㎎ |
| ビオチン | – | ㎍ |
| ビタミンC | – | ㎎ |
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じゅんさいの漢字・英語表記

じゅんさいは漢字で「蓴菜」と書きます。あまり見慣れない漢字ですが、古くから日本料理に使われてきた伝統食材のひとつです。
英語では「Water Shield(ウォーター・シールド)」と呼ばれ、植物名としては「Brasenia schreberi(ブラセニア・シュレベリ)」が正式な学名です。英語圏ではあまり一般的な食材ではありませんが、アジア料理に関心のある層には知られています。
英語表記についてもっと詳しく知りたい方は、こちらのページで【食×英語】野菜と果物180種の英単語&漢字一覧表まとめています。
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